コウタの死闘と葛藤とオリバー達の死闘
ちょっとだけコウタが活躍する話、最後かもしれないね。
(ちくしょう、なんでこんな事になっちまったんだ、俺だって前は少しはアニメを嗜んでいた、異世界転生ってもっといい物なんじゃねーのかよ!)
王の側近から今回指令された魔獣討伐はいつもと違い、死を強く意識させる戦いとなっていた。
(しかも今回のなんか話してくるじゃん、見た目は大きな二足歩行の爬虫類のくせに頭もいいしフェイントも効かねぇ)
「ほう、人間にしてはかなりの強者だな、見た目は弱そうだったから少し油断したぞ」
(油断したまま死んでくれよ)
何だかんだ言ってコウタはギフトを与えられた権能者な上に王達の命令で様々な討伐任務をこなしている、弱くはない。体力の無さも指摘され走り込みもさせられている。
「かなりの強者だ、人間とは思えん。しかし忌まわしい勇者と呼ばれた人間と比べると弱すぎる」
(クソ女神が!ほかの人間にはもっと強いチート与えてるんじゃねーか、何で俺だけこんなに弱いんだよ!)
魂が腐っていたからである。
コウタは防戦一方で話す事もできないでいる、逃げればいいかもしれないが最悪でも一太刀浴びせないと帰還は許されていない。
しかしコウタ、というよりも王の側近の護衛部隊は何も考えていないわけではなかった。
(たしか布が巻いてある木の間を転ぶ振りをして転がって抜けろだったな)
コウタは指示通りの動きで指定された場所で転んで見せた、油断してとどめを刺しに襲い掛かって来る魔族は体に強い違和感を覚える、糸だ、黒く塗った固い糸が張り巡らされていて一瞬だけ動きが止まる、人間や普通の魔獣程度ならこれで絶命してもおかしくないはずだが魔族は笑いながら糸を引きちぎった。
「人間らしい小賢しいマネを、この程度でやれるとでも思っているのか?身を潜めている間にレベルが落ち」
コウタは転んだのでは無い、わざと転んだのだ。魔族が糸に引っかかってくれると信じて転んだおかげで起き上がと同時に斬りかかるのが魔族が反応するより一瞬早かった。
「くそ人間があああああああああああああああああああ!楽には殺さないぞおおおおおおおおおお!」
何とか腕でガードをしたものの、肘から下は切断されてしまった。魔族は当然次の攻撃が来るものだと意識をして構えていてが次の攻撃が来ない。
「何故だ?絶好のチャンスだったろうに?こちらが激昂して油断を誘ってカウンターで動けなくしようと思ったが、頭が切れる?まぁいい、実力は把握できた、片手でも十分なぶり殺しにできる、今度は追いかけっこを楽しもうとするか」
魔族は勝手にコウタを頭が切れる人間と勘違いしたが、ただ最低限の仕事をしたので指定されたルートで逃げているだけである。
「おい、いるんだろ?言われた通り手傷を負わせた早く逃げ切れるようにしろよ、追い付かれるだろ」
「いらない事をしゃべるな、お前は指定したルートで指定された位置に行けばいい、ルートを外れるなよ、痛い目に合うからな」
コウタの逃げた方向には何重ものワイヤートラップが張り巡らされている、魔族にダメージを与える事は出来ずとも足はだんだん遅くなる。
(小癪な人間め、勇者がいなくなったせいなのか戦い方がずるがしこくなっている?まぁいい追い付ける範囲だ)
コウタは必死に覚えたルートで走り続ける、その時目の端に二人の人影が見えた、魔族と言う脅威と戦っているのだ、しかも逃げ切れる可能性が低い、普通なら逃げるように言えばいい物を......
「ラッキー、あいつら囮にしたら逃げきれるじゃん、ちょうど指定されたルート上じゃん」
二人組の真横を必死な表情から邪悪な笑み変わりながら通り過ぎる。
「ねえオリバーあの男なんか笑ってたよ、ここは危ない逃げろーとか言ってくれてもいいのにねー」
「まぁそういう奴なんだろうな、さてどのくらい手傷を負わせてくれているかな?昔親父が遭遇した時は運よく勝てたと言っていたから無傷だとしんどいぞ。リリィは後ろに隠れていてくれ、打ち合わせ通りに一発大きい魔法を入れたら後の攻撃のタイミングはこっちから声をかける」
体中にワイヤーによる細かい裂傷と右ひじより下が無く、人間とさほど大きさが変わらない爬虫類型の魔族が現れる。
「何だ?さっきの人間とは違う人間か、足止め?先ほどの人間は結構強かったからな温存でもしたいのかな?無駄な事を、死ね!」
死ね!という掛け声と同時に魔族の耳元で圧縮した空気が一気に爆ぜて大爆音が鳴り響く。
この魔法は殺傷能力は無く詠唱時間も短いが命中しなくても相手の聴覚器官の近くで発動させるだけで聴覚が無い生き物以外には効果が抜群である。
「ぐぅ、またも小癪な真似を......」
魔族は突然の爆音に耳鳴りに気を取られ、周囲の音も気配も一瞬忘れてしまう。その隙を突きオリバーは貰ったばかりの小太刀で魔族の喉元に鋭い突きをお見舞いするが避けられてしまう。
「ふん、悪くない攻撃だったが残念だったな、もう耳は回復したお前と近くにいる魔法使い?人間の雌か?お前の前で殺してやろうか?」
「別にこれで殺せればラッキーと言った感じで狙い通りだ、お前はあのワイヤーに足止めされる程度の力しかないようだ、それなら俺でも対処できるさ」
「何を言っている?勇者特有の感じもしないただの人間が.....ううおおおおおおお」
オリバーの驚くべき力でオリバーの盾ごと岩に押さえつけられる、魔族は油断していたのだろう、そのまま押さえつけられたまま首に小太刀を深々と刺される、しかし魔族も負けていな、鋭い爪をオリバーが小太刀を持つ手首に突き立てようとする。
「っち、せっかくの小太刀を手放してしまったが、まぁいい、結構な深手だろ?親父の話だと首を切り落としてもしばらく生きていたらしいがどうだ?」
「————、————!!!!」
魔族は小太刀がのどに刺さったままで声を上げられないがまだ戦えそうだ、力づくで小太刀を喉から引き抜き地面に捨てる、その行為が後に致命傷になるわけだが。
「よ、よくもやってくれたな、なぶり殺しだ、生きている事を後悔させてやる」
その後のオリバーはククリナイフを構えるが積極的に攻撃をしない、防戦一方だ、時間だけが過ぎて行く。
魔族は体が重いのか、だんだんと動きが鈍くなっていく。
「どうやら、思った通りだ、お前らは再生能力があるんだろ?過信しすぎだ、片腕を失っているのに首の小太刀は抜くんじゃなかったな、出血多量って奴だよ、戦いの中で生きてきたくせに生まれて初めての経験だろ?自己再生のせいで怪我に無頓着すぎだったようだな!」
よろめく魔族にオリバーは強力なシールドバッシュを決めて大岩に魔族を叩きつける。
「リリィ!今だ!全力で照射しろ!」
オリバーの掛け声と同時に暗闇を一筋の眩い光線が一直線に大岩に叩きつけられた魔族に襲い掛かる。
「ガッ......ガッガアアアアアアア!!!」
もはや魔族はまともな声を発する事も出来ないようだ、オリバーはその間に落とした小太刀を拾い魔族に迫る、リリィの杖の使用制限時間が切れると同時に魔族のひざ下を思い切り叩き切る、これでもうまともに動くことができなくなる。
「リリィ!もう一度だ!」
後は、同じ作業の繰り返しである、リリィが光線を照射して切れてチャージ時間の間にオリバーが斬撃をくりだす、数度の作業の後に魔族は最後の言葉も発せぬままどす黒い拳2個分ほどの玉を残して体は消滅する。
「リリィ、早くこの玉を持って飛行魔法でこの場を離れろ、ルイが作ったパラシュートを信じてなるべく早く遠くに逃げろ」
「わかった、低地での訓練はやったから、じゃあまた後でね」
リリィは魔核を持ち闇夜に消えていく。しばらくして何者かの気配を感じオリバーが警戒すると声をかけられる、相手は王直属の護衛部隊を名乗る。
(おい、まじかよ。3メートル近くまで接近されたのに気が付かなかったぞ、多分アヤノにもこんなのいないぞ)
「かなり、思ったより早く倒されたようですね、驚きました。流石アヤノ家が雇った冒険者なだけある、ん?シルバーランク?」
オリバーの胸元のタグを見て王の護衛は不思議そうな声をあげる・
「一応、アヤノの指令で冒険者をやっているんでね、目立つなって命令だよ。その気になれば上は目指せるが使われる側に人間は立場が弱くてね、その分もらうもんはもらってるさ」
オリバーはハッタリで言っているがその気になれば上は目指せるだろう。
「もう一人の魔法使いの女は?」
「魔族の使う魔法で消滅したよ、おかげで隙をついてとどめを刺せたけどな」
思いっきり嘘をつくオリバーである、打ち合わせ通りなのだが。
「お前ら仲間じゃないのか?」
「おいおい、お前らも人様に言えない商売しているんだろ?こっちだって似たようなもんだよ、最近会ったばかりの奴に情なんて沸くかよ、まぁいい女だったからちょっと残念だったな、今日までに何回か会話したけどいい感じだったんだぜ?」
「お前らみたいなゲスと一緒に....まぁいいそれで魔核はどこだ?」
「これの事か?すまんなこっちも必死だったんだ、使い物になるかわからんが持ち帰ってくれ」
地面に転がせておいた先に渡されていた砕かれた粗雑な魔核に指を差す。
「貴様、話が違うじゃないか!こんな物使い物にならん!」
王の護衛は砕かれた魔核を蹴飛ばして怒鳴り散らすがオリバーは淡々と答える。
「知らんがな、俺達は魔族を殺せと命令されただけだ、命がけだったんだぞ。現に一人は文字通り消滅している。空の棺で墓を建ててやらんといかん、そんな戦いだ。自分が命欲しさに遠くに逃げておいて偉そうな事を言うな、それとアヤノの当主様からの伝言だ。「文句はワシに言え、部下を無下に扱う事は許さん」だそうだ、いい上司を持って俺は幸せ者だよ。まぁお前らの上司より人使い荒いけどな、冒険者の格言らしいぜ”本当に欲しい物は自ら勝ち取れ”だとさ、仕事は終わった、じゃあな」
王の護衛は無言でその場から立ち去り、オリバーもそのまま指定された小さな砦に向かった。
設置されたガラスの板に父親が映っている。
「ただいまっと、つけられてないと思うけど作戦は成功した、魔核の事は気が付かれていない感じだ」
「だろうな、王の直属の護衛はあくまで王の護衛だ、危険を冒して至近距離から戦いを観戦なんぞしないだろう、こっちも無事リリィ嬢のパラシュートがうまい事いったと連絡があった、次の実践でも使えそうだ」
「そうか、よかった、次は蛮族の砦で働けばいいのか?カタパルトの連続発射の訓練はうけたが」
「バカ言え、いくら追い詰められた蛮族でも砦前200メートルにカタパルトを設置させてくれるほどボンクラじゃない、こっちも少しずつ作戦を進めている、今は夜中の内に設置できるようなカタパルトの開発と訓練をしながら蛮族に嫌がらせをしている所だ、ワシはもう戦場に行かんとならん、攻城兵器に関してはルイの方が詳しい、直接聞け。そろそろこっちに来るはずだ。それとな、これは内密だがショーベリ領の砦はアヤノ兵が守っている、今はショーベリ当主が周囲に悟られないように帰還する予定だ、リリィ嬢を連れて挨拶して来い、手紙は用意する。顔を合わすのは蛮族の城塞都市攻略戦の時になる。体に気をつけろよ」
その後リリィもこちらに合流してルイとヘレナから早く会いたいだの、新型カタパルトの説明だの色々満足いくまで聞く羽目になった。
次回オリバー君リリィのお父さんに結婚の挨拶?に行く。
とうとう、出しちゃったよ。ファンタジーの王道の敵の魔族さん。これからもでるかもしれない。
実は作者はアルファポリスとカクヨムにも同じ話を投稿し始めました、どちらもそこそこ好調です。特にアルファポリスが好調で、HOTランキングと言う新人専用ランキングにここ数日6位~4位を行ったり来たりしてTOPページに乗り続けております。本編は先行してこちらで投稿しますがテンポが悪くなる作者の思い付きで書く閑話はあちらに投稿しようと思います。よければあちらでもお楽しみくだされば幸いですし評価をしていただけたらより一層やる気に満ち溢れます。すでに1話ほどあちらのみで投稿した話もあります。
投稿する際にすこし修正・加筆も行っております。先行連載をするメインはこちらです。これからもよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/296775484/259062949
もしくは下部の直リンクから飛べるページに下記のタイトルが限定公開中です。
「受付嬢は見ている 冒険者の追放劇」がアルファポリス様での限定投稿作品になります。
次回は形は婿入りになるがオリバーによる娘さんを僕に下さい!と宣言する回です。今後の展開が気になる方は下部にある評価の【★★★★★】と、ブックマーク登録で応援をお願いいたします!皆様の応援ポイントが、次話を執筆する最大のエネルギーになります!




