北の国の蛮族討伐、その後の顛末
ルイが勝手に北の国に派兵をした後始末の回です。王様とロッシ家とアヤノ家の思惑が交差する中、次期王の第2王子が何かを考えている。
この話はオリバーが北の国に攻め入った蛮族を押し返してしばらくたった後の話である。
王の執務室には王とその次男、そしてロッシ家当主であるマルコ・ロッシがいる。謁見の間ではない非公式な会談である。
「ロッシよ、北の国から正式に抗議か来ている、我が国の兵、というかアヤノ領兵が無断で国境侵犯を起こした事への抗議だ」
「それは来るでしょうね、それなりの高位の外交官を派遣して謝罪と賠償をするしかないかと思います」
王はため息をつく。
「ロッシよ、皮肉を言うのはやめてくれ、実務的な話をしよう、正直に言う、我が国の最高の外交官は1位貴族だが150年前か?180年前か?忘れたが話し合いだけで血を流さずに領土の割譲に成功してから代々外交のトップを務めているただの無能だ、多分の北の国の名産を聞いてもベリーワインくらいしか答えられない、そんな無能だ。下手したら王国が機転を利かせて兵を送り、助かったのだから正式な礼と謝罪の金品の要求をしかねん」
マルコは声を失う、無能だと思っていたがそこまで無能だったとは。
北の国の名産はベリーワインなのは間違いない、しかしそれは嗜好品だ、本当の名産品が泥炭だ、非常に大量に取れて乾燥させるといい火つけ材になる、厳しい冬を越す庶民にとっては安価な泥炭は生命線だ、我が国は大量に輸入をして庶民の冬を支えている。万が一相手を怒らせて泥炭の供給を止められると冬の間に大半の庶民が苦しむだけではなく、我が国最後の蛮族の城塞都市を包囲するアヤノ家にとっても大ダメージだ。
マルコが口を開き条件を言う。
「私が北の国に行くのにいくつか条件があります。一つは王側で高位貴族が意味のないパーティーで国費を使わないようにしっかり監視をしていただく、一つは私を全権委任の責任者にしていただく、一つはイワオ・アヤノ3位も同行してもらう、やらかした本人が謝罪する事が一番効果的だからです。最後に私は必ず最高の妥協案を持ち帰ります、王権を発動してでも承認していただきたい」
「分かったと言いたいがアヤノ家の調整はそちらでやってもらいたい、学院の同級生で同じ盤上競技部だったと聞く、私が調整をするより早いだろう、アヤノの調整が済み次第連絡をくれ、向こうに伝えよう、あの英雄イワオ・アヤノが行くと言うのだ、少しは融通をきかせてくれるだろう」
「分かりました、なるべく早く対応いたします」
この会談を聞いていた第2王子は無表情で発言はしなかったが思案する。
(もうダメだな、なんとか私の派閥の者とロッシ、アヤノと内密に会談をしたい、今は父が目を光らせている、いつの日か必ず.....)
マルコはアヤノ家はから投げつけられるジパン関係の仕事にブチ切れつつ何とかイワオのスケジュール調整を終えて北の国へ向かう馬車鉄道で顔を合わすことになった。
「おい、マルコよ。ワシもそんなに暇じゃないんだが、新しい蛮族の坑道を見つけて他にも無いか探すための人員配置を現場で確認せねばならんのだ」
「イワオ、お前が見つけられなかった坑道から逃げ出した蛮族が北の国を強襲したのだぞ、しかもルイ嬢がお前の名義でアヤノ領兵を勝手に派遣した、お前が行って頭を下げるのが筋だ、それと私の許可なく話をするなよ、お前はいつものように怖い顔をして相手を威圧していればいい」
「ワシは会談の時は別に普通の顔でいるのだがなぁ」
この二人は性格は正反対だが実は結構気が合うのである、二人きりだと軽口を叩くし二人で飲むと学院時代の思い出で笑いあうくらいには仲がいいでのである。
「しかし、マルコよ。ワシが見逃した坑道から蛮族が逃げ出したのは確かにワシのミスだ、しかしそこから北の国に入国して山岳地帯を通過するには北の国のどこかの港を経由しないといけないはずだ、あの国の港湾管理官は無能なのか?」
「現在、調べているが買収された可能性が高い、該当する港がそこそこの数があるのと別の国なだけあって調査が進まない」
「そうか、マルコ、ワシの領の軍需物資が横流しを仕掛けられた事件を知っていよう?裏で手を引いていたのはブゥタの三男だった、港から他国にデータを横流ししようと画策しているのでは?というのが娘の見解だ、あの3男が管理する港は無いか?もしあれば絞って捜査してみるのも手だ」
「お前から報告があってからもうしている、だが流石に横流しがばれたせいで馬鹿なりに慎重になっている、最近になって税金逃れの小遣い稼ぎ程度の金の密輸入程度は再開したけどな、今に調子に乗ってボロをだすと思っている、それでも完全に裏をとるのに1~2年は要すると思うけどな」
「そうか、今回の交渉だがどういう流れを考えている?一応教えてくれ」
「効果は薄いが向こうの4位貴族が仮にとはいえアヤノ領兵の隊長にサイン入りで蛮族撃退の依頼をだしている、それをなんとかうまく使えればと思う」
「あぁ、わしもそれは聞いた、けど弱いなと思ってワシはいい事を思いついたのだ、ちょっと乗らないか?」
「お前の思いついた”いい事”に乗って学院時代からいい思い出は少ないが聞いておこう」
「こういうのはどうだ?・・・・・・・・・・ワシ渾身の策だ」
「あー頭が悪い策すぎてこっちの頭もおかしくなるけど、残念ながらその策がよく聞こえて来る」
「学院時代はワシの尻ぬぐいで、お前にランチを2回おごったぞ、成功したら酒をおごれよ」
「私はお前の蛮行をとめるために13回おごらされたわ!」
「しっかり数えているんじゃねーよ、みみっちい奴め」
数日後交渉の席で北の国の高位貴族から信じられないような条件を突き付けられる中でイワオは言い放った。
「いや、今回の事件はまとこに遺憾である、まさか我が領で山岳訓練を終わらせた新兵を北の国の国境地帯で最終訓練を行った際に深い霧に迷い込んで一部そちらの国に間違えて入り込んだところなんと蛮族がいたと言うではないか、それで偶然貴国の貴族から非公式とは言え討伐依頼をもらってしまった、訓練の一環と勘違いをして蛮族どもを追いかけまわしてしまったようだ。ワシらは残族を見ると討伐をしたくなるように訓練をしているから思わず張り切ってしまったようだ、間違いとは言え申し訳ない事をした、今後このような事が無いように徹底した対策を取らせてもらう」
イワオはあくまで訓練でのミスで押し通そうとしたのであった。
「そ、そのような詭弁が通用するわけ無いだろうがいい加減にしろ!4位貴族の依頼書は非公式だ!いかに蛮族から100年ぶりに複数の砦を奪還した英雄と言えどこのような話を通すわけが無い!」
「そうか、残念だ。そういえば年に数回大型魔獣が出てそちらからアヤノに援軍要請が来るのだが、依頼書が本物かどうかをそちらの王族に確認を取ってもらわないといけなくなるな、派遣してからあれは非公式だったと言われたらたまったものじゃない」
「それとこれとは話は別.....」
「別かどうかを決めるのはワシの方だしのう、別に我が領で大型魔獣が暴れていないのであれば我々は困らないから今後は確実に確認を取ってから討伐に向かうとするよ、その間に何個の集落が焼かれるかは我々には関係ない話だ、いくら我が兵といえど大型魔獣の討伐となれば犠牲者もけが人も出る、その後に非公式なんて言われたらワシは犠牲者の家族に今回遠征では何も得られませんでしたと報告せねばならん、それくらいなら国境でこちらに来ないか見張る程度しかできんな」
「貴様、我らは同盟を組んでいるのだぞ、その言い草は国際問題だ!」
すかさずマルコが仲裁に入る。
「落ち着いてください、今回の蛮族の急襲も苦し紛れの慣れない夜間山岳行軍だったと聞きます、もう少しで蛮族の脅威から数百年ぶりに解放されるチャンスなのです」
うまい具合に論点のすり替えをするマルコ・ロッシである。
「しかしながら我が国の人間が間違えと言えど侵入したのは確かです。そちらの現場にいた貴族の話とこちらの記録を照らし合わせれば50人という事です。ここは一つ、アヤノ当主であるイワオ・アヤノ3位の正式な謝罪と間違えと言えど不法入国です、50人分の10倍の入国税で手を打っていただきませんか?」
「むぅ、いくらなんでもそれではこちらのメンツが立たない、北の王族が許しはしないだろう」
「それではどうでしょう?今回の蛮族がショーベリ家をターゲットにしたと聞いています、十年以上前にショーベリ領は蛮族に大半を奪われたと聞きます、こっちの蛮族が片付いたらショーベリ家の領も全額こちら負担で殲滅をすると言うのはどうでしょうか?もちろん正式な派兵ではありまえん、アヤノ家の精鋭を冒険者にでも変装させて侵入させます、奪還したのは北の国の貴族であるショーベリ家という事にします。成功すればアヤノ家に続き同盟国内で北の国こそ勇猛な国家だと今後の歴史書に残るでしょう」
「ふむ、それなら王族も納得するかもしれないな、調整して報告して返事がくるまで数日かかる、お待ちくださるか?」
「もちろんですとも、この件がまとまれば大型魔獣が出現した際は救援の優先度は必ず上がるでしょう」
必ずすぐに救援に行くとは言っていないマルコである。
数日後に正式に北の国からこの条件で今回の事は水に流すとの書状が届きイワオとマルコは北の国の王族に正式に謝罪をして帰国する事になったのである。
「それで交渉の結果国費からの出費は金貨5000枚で済みました。アホ貴族が企画するパーティー5回分くらいの損失です、安く済みました。ショーベリ領の蛮族撃退は全額アヤノ家が負担する事になりますのでこれ以上の国庫支出がありません」
金貨5000枚、異世界換算で5億円である。
「ふむ、最初は冬に向けて恒久的に泥炭の価格を上げて来るくらいは覚悟していたがそれくらいで済んでよかったと思います、流石ロッシ家です」
王の発言の前に第2王子が口をはさむ、何か考えがあるのだろうと思うがマルコは黙っている。
「王子よ、今の発言は忘れてやる、今すぐこの部屋から出ろ」
(どうした、王になる事が確定したから調子に乗ったか?まぁいい後で釘を刺そう)
「まぁ王子の言った事に概ね間違いはない、だが悪いがこの案を出したのは我々からだという事にする、ロッシ家は伝達したに過ぎず、アヤノ家はワシの命令で頭を下げた、そういう事になる」
「はっ、承知しました。では失礼します」
(王権を維持したいのは分かるが、いつまで続くかね?砂上の楼閣にならなければいいが、素直にロッシとアヤノに頼ればいいものを、どちらも権力なんか必要以上に欲しくない)
ロッシ家当主、マルコ・ロッシは少し残念な気持ちで王の間から立ち去る事になる。
次回、イワオとオリバー、リリィが直接対話をする。
投稿小説は一話2000~3000文字が最適とされています。最近それを維持するのが難しくなっております。なるべく精進します。ご容赦を。
実は作者はアルファポリスとカクヨムにも同じ話を投稿し始めました、どちらもそこそこ好調です。特にアルファポリスが好調で、HOTランキングと言う新人専用ランキングにここ数日6位~4位を行ったり来たりしてTOPページに乗り続けております。本編は先行してこちらで投稿しますがテンポが悪くなる作者の思い付きで書く閑話はあちらに投稿しようと思います。よければあちらでもお楽しみくだされば幸いですし評価をしていただけたらより一層やる気に満ち溢れます。すでに1話ほどあちらのみで投稿した話もあります。
投稿する際にすこし修正・加筆も行っております。先行連載をするメインはこちらです。これからもよろしくお願いします。
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