オリバー、オリビアの事を考察する。
オリバーは落ち着いて過去の事件を振り返る。
これは北の国の防衛戦が終わり少し経ったときの話。
(オリビアはコウタの”相手の心の隙を突く権能”で狂ったの、だからあなたは悪くない.....か)
オリバーは一人で母のセリフを思い出しながら考え事をしている。
別にオリビアに未練がるわけじゃない。最初は怒り狂っていたし嫉妬心で頭がどうかなりそうだった気もする。
出会いは6歳の頃だった、オリビアが手放して木に引っかかった風船を木登りをして取ってあげた事だったと思う。少し前に家の兵隊のおじさん達に教えられて木登りが出来るようになったのを同じ年の子に見せつけてやりたかっただけだった。それがオリビアとの出会いだった。
最初は普通に遊んでいた、鬼ごっこをしたりかくれんぼをしたりおままごとをしたり、女の子は成長が早い、6歳ではハジメとはほぼ互角の運動能力だったからこそ楽しく遊べた。
8歳になる頃だ、オリビアはビーズを使った簡単なネックレスを作ったり、ごっこ遊びやオセロ等の卓上競技に夢中になって行った、9歳になる頃には文字も覚え本ばかりを読むようになった。
ハジメは母親からとにかく女の子に合わせるの、男の子の遊びは家でできるでしょ?と言われて必死にビーズ細工やごっこ遊びのルール(かならず自分がやられ役)やオセロを覚えた、家にいるおじさんの兵隊さんにいっぱい負けて悔しくて泣いたこともたくさんあった、オリビアと話を合わすために必死に文字を覚えて趣味じゃない恋愛小説も読んだ、こっそり異世界転生系小説も読んでいたが。
10歳になる頃にはオリビアは美少女と言っても過言ではない容姿になる、一度だけハジメが一緒に釣りに行こうと誘ったけど「私、そんなの趣味じゃないし、一人で行けば?」と言われて家から閉め出された事があった、必死に謝りやっと家に入れてもらえたが、この頃になるとオリビアには家庭教師がついて勉強も始めていた。
次々覚えていく事が面白いのかハジメに知識を自慢するようになる。当然答えられない、週1にお茶会と言う名のお遊びに行ってもオリビアは話の合う親戚筋の文官志望の子供と遊ぶことが多かったと思う、流石に両親に叱られて仕方なくハジメと話をしてくれたが。
ハジメはこの「仕方なく」がとても悔しかった、父親に頼んで苦しい訓練の後に家庭教師をつけてもらい必死に勉強をした。なんとかオリビアと話が合うようになっても「私もっと先を習っているよ」と言われて気まずい雰囲気になる事も多い。それでもハジメは頑張るのをやめなかった。
あの可憐な赤髪の美少女が時折見せてくれる笑顔は多分初恋だったのだろう。
12歳になり学院に通い始めるとお互いに忖度ができるようになっていた。お互いの得意分野はあまり話さずに共通の話題を話すようになり、それでもハジメはオリビアの笑顔が見たくて母親や、妹のルイに頭を下げて女心講座に耳を傾けた。
プレゼントも普段の会話から自然と聞き出し常にオリビアが欲しがるものをできる範囲で用意していた。父が遠征先で綺麗な石を拾ったと聞けばねだって、プロの職人に頼み綺麗な石を加工したアクセサリーを作ってもらう、特に記念日でもないのに手に入ったという理由だけでオリビアにプレゼントを渡すこともあった、自分が父親におこづかいの前借をしてまで作ってもらったネックレスをつけてコロコロと笑う彼女を見るのがいつしかハジメは嬉しく思うようになっていた。
誕生日にはプレゼント交換をする、ハジメが用意するのは母親と妹が厳選した女の子が好みそうな小物だ、オリビアは手作りの栞を毎年プレゼントしてくれた、あの日が来るまで大切に使う事になる。妹のルイは内心激怒していた、それが10代前半の女の子が作れるような代物ではなかったからだ、嘘なんかつかずにハジメの為を思って職人に作ってもらったって言えばいいのにといつも思っていた。
それでも二人はうまくやっていた、尊敬しあう関係ではあった。あの日が来るまでは。
その後はコウタに負けて今に至る。最初は絶望感に打ちひしがれて毎日後悔をした、何故かっこつけずに家の権力を使ってコウタを排除しなかったのか?何故嫉妬心に駆られて何も考えずに誰にも相談せずに突っ込んでしまったのか?
安い飯屋で、決して美味しくはないが、リーズナブルで腹持ちだけはいい多めのクズ野菜と、少しのベーコンが入ったスープ。そして、硬い黒パンを齧りながら、毎日考えていた。答えは出ているが解決しようが無い事を。
冒険者になり毎日空元気で冒険者ギルド職員に話しかけ、必死に誰もがやりたがらない仕事を繰り返した、体を動かしている時だけあの赤髪の少女の事を忘れられたからだ。
そんなある日、パーティーを組まないか?との打診があった、相手は自分より上のランクの魔法使い。そろそろ冬なので越冬のためにお金も欲しいと思っていた、格上と組むとクエストの幅が広がる。
紹介された女性は長い銀髪が綺麗な美人でスレンダーな女性だった、最初は険悪な雰囲気だったが徐々に打ち解け、笑いあえる関係になっていった。銀髪の魔法使いリリィは年上であるからか妙におねえさんぶる、それでも簡単な事で表情を変え、すぐに喜怒哀楽を示してくれて話していて心地よい。
相手の考える事を先回りで察知して100点満点の答えを出さなくてもリリィは笑ってくれる。この頃はもう名前はオリバーになっていて、いつしか本人はこの時はまだ気が付いていなかったがリリィの表情の変化を見るのがとても愛おしいと感じるようになっていた。怒っている顔ですら美人だと思うくらいである。
冬のクエストが激減する間は借りたログハウスで過ごした、最初は別々の部屋で過ごしていたがいつのまにか薪の無駄遣いはやめようという口実の元で同じ部屋で過ごす事が多くなった、お互い寂しかったのだろう、この冬の間にオリバーは意を決してリリィとより深い関係になろうと画策をした、しかし以前の失恋のショックからか最後の一歩を踏み出せずに冬が終わる。
様々なクエストの中でリリィの弱さや自分の弱さをさらけ出すことで急激に関係が進展していく、ワンルームでの同棲までし始めた。それでもオリバーは一線を越えられなかった。
しかし、必死なリリィの活躍もあり、ある日から同居人から恋人へそして婚約者と言う関係になった。
オリバーは考える。以前リリィが言っていた事だ。
「夫婦って言うものはお互い対等で尊敬しあえる仲であるべき、片方が依存するようではいずれ破綻してしまう」
(オリビアはコウタの”相手の心の隙を突く権能”で狂ったの、だからあなたは悪くない.....か)
オリバーは一人で母のセリフを思い出しながら考え事をしている。
俺はあの時オリビアと対等だっただろうか?オリビアの自主性を無視して守ることが男の役割だと勝手に思っていた。別にオリビアが自分に依存していたわけではないと思う。オリビアの世話を100%完璧にこなしてオリビアやオリビアの家族にさすがハジメ君と言われる事に酔いしれていただけだったと今になって思う。
そしてリリィと深い関係になって思う事がある。
(俺はオリビアが婚約者だったからカッコいい婚約者を演じていただけであって心から愛してなかったな、リリィと過ごしてよくわかるようになった、与えるだけが愛じゃないんだ)
(結局俺の独りよがりだったのだろうな、だから心が隙だらけになるし俺との意味のない会話はつまらないしメリットなんて無い、当たり前だ、俺は婚約者のふりをしてオリビアの事を何も見て無かったし、考えても無かった、独りよがりに最高の婚約者を演じていただけだったな)
(そう思えば少しはオリビアに悪い事をしたなとは感じる、どうか俺の知らないところで勝手に幸せになってくれればいい、俺も勝手に幸せになるからさ)
実は作者はアルファポリスとカクヨムにも同じ話を投稿し始めました、どちらもそこそこ好調です。特にアルファポリスが好調で、HOTランキングと言う新人専用ランキングにここ数日6位~4位を行ったり来たりしてTOPページに乗り続けております。本編は先行してこちらで投稿しますがテンポが悪くなる作者の思い付きで書く閑話はあちらに投稿しようと思います。よければあちらでもお楽しみくだされば幸いですし評価をしていただけたらより一層やる気に満ち溢れます。すでに1話ほどあちらのみで投稿した話もあります。
投稿する際にすこし修正・加筆も行っております。先行連載をするメインはこちらです。これからもよろしくお願いします。
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