オリバーとリリィの遠出クエスト10 決死の防衛戦
ショーベリ領の決死隊、オリバー達の命がけの足止め様々な人の思いが交差する。
夕方、伝書鳩の活動限界ギリギリの時間に蛮族襲来という絶望的な知らせが届き、ショーベリ領の領都の門には領民を逃すべく時間稼ぎのためにショーベリ家嫡男の13歳になるアンテロ・ショーベリが率いる定年後の領兵、逃げた先で役に立てぬと悟り参加した老人による義勇兵と逃げずに残ったわずかな若い衛兵でバリケードをはり襲撃に備えていた。
年齢はまだ15くらいだろうか若い衛兵が震えている。
「おい、そこの若いの、こっちに来い」
年老いた元領兵が声をかける。
「若いの、もし蛮族の姿が見えたら若い衛兵を連れてアンテロ坊ちゃん、ショーベリ家の嫡男を連れて当主が守る砦まで逃げろ、馬は乗れるだろ?非常口に馬を隠している、それを使え、あの坊ちゃんが成長すれば必ずここを奪還してくれる」
「逃がすのなら元領兵のあなたでもできます、私は衛兵です。ここで1秒でも時間を稼ぐのが任務です!」
「いいから、いう事を聞け、お前達若い者が生き延びれば…ここの領民を守った栄誉は私達のものとして語り継がれるってものさ…行ってくれ」
「....分かりました、衛兵仲間に声をかけに行きます」
年老いた元領兵たちが軽口を叩く
「駄々っ子の若造を説き伏せましたが、いいですな!?」
「ああ!ここまで来て、我々の働き場所が無いでは、元領兵とは言え準貴族の立場が無いわ!」
「おい、じいさん、あんた90過ぎているだろ、そんなガタのきた体で何ができる?今なら間に合う逃げたほうがいい」
「わしだって元衛兵じゃ、昔取った杵柄をみせてやるわ、体で矢を受ける盾代わりにはなるさ」
(年を取り過ぎた、ここで恩を返したいものじゃのう)
ショーベリ家、最後の決死隊の覚悟が決まろうとしていた。
「まさか、北の国の貴族であるあなた達も手伝ってくれるとは思いませんでした」
オリバーに指示された持てるだけのジパン刀を運んでいる。
「我が国の貴族が全員腰抜けと言うわけでは無い、朝に一番近い駐屯地に伝書鳩を飛ばすよう手配もした、間に合わない可能性が高いが何もしないよりマシさ」
オリバー達は少ない休憩を入れつつ目的地に到着する。
「両側の崖に狭い道、ここなら一気に二人程度しか通れない、流石ルイだ、いい場所を選んでくれた」
「北の国の皆さん、俺はこの道を塞ぐ、後ろに持ってきたジパン刀を抜き身で地面に刺してくれ、高い物だが使い捨てにさせてもらう、そしてリリィは木の上に身を隠して霧の魔法をここら一帯にかけて敵が来たら適当に石礫の魔法を放ってくれ、威力より弾幕重視だ相手に弓を使わせない程度でいい、火は使うなよ、明かりでこちらの戦力がばれる」
「では、強制はしませんが北の国の方はオリバーさんの後ろで魔法使いのフリをしてください、矢はなるべく私が防ぎます」
「一応、私の風の魔法も出そうか?矢がそれるといいけど」
「ダメだ、風で霧が消えるとこちらの戦力がばれる、あくまで威力を減らして多くの石礫を放出して大人数で守っていると錯覚させるんだ」
しばらくして向こうの山道から松明の光がポツポツ見えて来る。
「ん?あいつらばらけているのか?それに必要以上に松明を使っている、光の魔道具を用意する余裕もないみたいだな」
「蛮族は普段は平原を騎馬隊で荒らしまわるのが得意戦術、夜間での山道の突貫行軍は苦手なのでしょう」
「好都合だ、2000と聞いたがバラバラで来てくれるなら多少は楽になる、リリィ、敵のおおよその位置はつかめた、なるべく濃霧を頼む」
「わかった、気を付けて、本当に私の護符いらないの?使ってほしいけど」
「いい、リリィに何かあったらと思うと集中できない」
「オリバーさんなら大丈夫ですよ、鍛え方が違う、例え膝に矢を受けても守り切ってくれますよ」
緊張を和らげるために機関長は軽口を叩く、北の国の貴族達もある程度準備をしていたようだ。
「石を集めておきました、投石くらいはできるでしょう、我々はこの国の貴族です、国を守らずして何が貴族か、やってやりましょう!」
激戦が始まった、濃霧でオリバーに気が付かなかった先頭集団は全員シールドバッシュで崖下に突き落とされた。
蛮族兵はオリバーのあまりの怪力と異様な迫力にかつてアヤノ領で見かけたあの悪魔のように強いとされた男の影をみて恐れ、足が止まっている。
(アヤノのあの悪魔のような男と戦いたくないからこっちに逃げてきたのに何故似たような化け物がいるんだ、もう故郷に帰りたい、なんでこんな事になったんだ)
名もなき蛮族兵はそんな事を考えながら後ろから次々と押し寄せては吹き飛ばされる味方に押されて崖に落ちていく。
「化け物め......」それが名もなき蛮族が残した最後の言葉となる
オリバーに気が付いた蛮族兵は斬りかかって来る、オリバーは盾でいなし、敵を崖下に落とし続ける、用意したジパン刀が折れるたびに後ろに刺してある刀と交換して戦い続ける。
「5分に1回コップ一杯分の水を出す魔法か、覚えておいてよかった、喉の渇きに悩むことは減るな」
ジパンでもらった翻訳の護符のおかげで蛮族の言葉がわかる、向こうは翻訳されているとは気が付かずに集まって突撃の号令をかけているようだ。
敵集団が走り出した瞬間にリリィがばら撒いていた石礫を収束させ勢いよく発射して突撃の勢いを削ぐ。それでも一気に数十人がオリバーに押し寄せる、剛力を授かったと言えど体力は普通の人間より優れている程度だ、徐々に後退を余儀なくされている。
「アヤノの部隊が到着するまであと2時間、きわどい所だ」
その時、霧が一気に晴れる、敵に魔法使いがいるようだ、こっちの戦力が一部にばれた、報告されれば敵の士気が上がり守り切れなくなる。
「リリィ!敵の風を相殺させつつもう一度濃霧を出してくれ、石礫はとにかく威力より量だ、相手に弓を使わせないようにしてくれ」
それでも弓矢は飛んでくる、北の国の貴族が魔法使いに扮しているので集中砲火だ、今のところ機関長改め間諜がある程度防いでいる。
「来るときに小さいながらもバックラーを持ってこれてよかった、何とか耐えれる」
そうはいっているが北の国の貴族の一部は方に矢が刺さっている者もいる。
「我々の事はいい、この国を守るのは我々の責任だ、申し訳ないがオリバー君、何とか耐えてくれ」
後退と前進を何度も繰り返しながら何とか耐えている、オリバーの全身は傷だらけで所々から流血も見られる。
「オリバー!今から初級だけど回復術をかけにいくから」
「リリィ、いいから霧を出しつつ敵の風の無効化と石礫を止めないでくれ!矢の一斉射撃が来たら耐えられない」
(オリバー、無茶な事を言うわね、やってやるわよ!ここを突破されたらオリバーも弟のアンテロも死ぬ)
普通の魔法使いはせいぜいできて2種類の魔法の同時行使が限界だ、数種類を難なくこなすリリィが異常なのだ、しかし魔法科は偏った判断基準で落第生としたのだ。
さらに時間たち最後のジパン刀が折れた、もうオリバーの個人所有しているククリナイフしかない。
(これがダメになったら素手でもやってやるさ!)
「ふんぐらばあああああああああああああああああ!!!!!!」
オリバーは雄たけびを上げ、盾で敵集団を押し数十人を崖下に落とす。最後の力だった、疲れ果て片膝をつく。
夜もあけてきた、敵にこちらの戦力を見破られゆっくり時間をかけて数百人で突撃をされたらもう持たない、敵は正体不明の敵に多数の犠牲を払うのを避けるために戦力を小出しにしてきたのだ。
敵にはもうばれたようだ、敵の歓声が響く、もう終わるのか?
「みんな、リリィが最大火力で炎の魔法を放つ、そうしたらショーベリ領都まで撤退して防衛戦に加わる、すまないこれ以上は耐えれそうにない」
「いえ、よくやっていただきました、あなた方は逃げてください、私たちは領都で出来る限りのことをします」
「嫌よ、私はいく、だってあそこは.....」
私の領地だから!と言葉を紡ごうとしたとき後ろから大勢の足音が聞こえる、間違いないアヤノ兵だ。
アヤノの兵の隊長らしき人が説明をする。
「足の速い精鋭を先行させてまいりました、とりあえず約50人、すぐに本隊も来ます、この地形なら十分守れます、撤退を」
「残念ながら王国と我々の国との間で問題になるでしょうね、でも我々は何が何でも弁護をします、本当は我々の仕事なのです、情けないですがこの地の防衛をお願いします、何かの助けになるかもしれません、4位貴族の私の正式依頼として記録してください、私のサインも渡します。後はお任せします」
肩に矢が刺さった北の国の貴族はここで気を失った。緊張の糸が切れたのもあるが出血も多い。
「おい!衛生兵、この者を助けるのだ!絶対に死なせるな!」
突如現れたアヤノ兵を見た蛮族は驚愕して急いで引き返そうとしている、あまりに慌てているのか踏みつぶされ、押し出され崖に落ちる者多数。
間諜がリリィに話しかける。
「もう大丈夫です、弟さんに会いたいでしょうが我慢してください、物事には順序があります、近いうちに必ず会えます、その時までどうかご辛抱を」
「分かっている、とりあえずは安心できるところで休憩したいわ、徹夜で行軍して戦いっぱなしだもの、アヤノ兵は中位回復術を使える人がいるのね、オリバーはもう大丈夫ね、私もう歩けない、後はよろしく」
オリバーはリリィをおんぶして下山した。
(オリバー、ありがとう。あなたがいなければ全部終わってた、本当に頼もしい私の騎士様ね)
リリィは薄れゆく意識の中でオリバーに礼を言うのであった。
後にこの作戦を指揮をし、逃げ切った蛮族の隊長の日記が見つかりあの地には「濃霧の荒熊」がいると蛮族中で恐れられている事が判明する。
蛮族軍は約2000だったがオリバーに500人以上の犠牲を払い、ばらばらに敗走する事になる、しかし朝一に飛ばされた伝書鳩の手紙で出動した北の国の兵士によりほとんどが捕虜になるのであった。バラバラに逃げずにまとまって行動していれば逃げ切れたかもしれないが濃霧の荒熊のせいで正気を失っていたようだ。
この濃霧の荒熊はアヤノ領最後の蛮族の砦攻略戦で獅子奮迅の活躍をすることになる。
明日は21時に久しぶりのオリビア視点の話をアップします。
この話でジパン編は終わりです。父の手紙にオリバーは何を思うか、気になる方は下部にある評価の【★★★★★】と、ブックマーク登録で応援をお願いいたします!皆様の応援ポイントが、次話を執筆する最大のエネルギーになります!




