オリバーとリリィの遠出クエスト6 異国での意外な出会い
源平合戦をモチーフに江戸後期までをごちゃまぜにした世界観です、異世界ですよので歴史警察の出動はどうかご容赦ください。
「俺たちに会いたい人がいる?何故ですか?」
「先日君たちが鬼を退けた事をここの国の貴族との交渉の場で口を滑らせた者がいてな、それが高貴な方の耳に入ったというわけだ」
北の国の外交官の口から説明がされる。
「会ってどうしたいのでしょうか?報告通りに鬼の攻撃をただ耐え抜いてタイムアップが来たというだけなのですが」
「詳しい事は本人に聞いてほしい、何やらこの国の武を統括する、武士の棟梁と呼ばれている一族の分家の者らしい、お忍びでこちらにもう出島に来ているそうだからすぐにでも会ってほしい」
後ろから北の国の貴族から面倒なことになった、そんな大物に冒険者なぞ会わせたら等と文句が聞こえる。
「そもそも、君たち武官が鬼を退けたら面倒にならなかったのではないのかね?金貨10枚、安く無い出費だ、私は今後この国への派遣時にはアヤノ家に依頼をしてちゃんとした武官を派遣する事を検討してほしいと報告書に書こうと思案中だよ」
場が凍り付く、どこの国も武官と文官はあまり仲がよろしくないようだ、アヤノとロッシがうまくいきすぎていただけだ。
(今はどうなんだろうね?俺のせいで仲が悪くなってなければいいが)
後日、妹のルイがロッシ家の末息子のマッテオと婚約をしたことを知って驚く事になる。
「わかりました、行きましょう。そんな偉い人を待たせるのも無礼でしょうから、ただ我々はアヤノ家に雇われた身、機関長さんも来てもらいます」
「それはかまわん、機関長殿も一緒に行動していたわけだしね」
場所は出島で一番広い荷下ろし場との事だ、行って見ると赤い紙でできた大きな傘の下に女性が座っている。後ろには植物を編んだ傘を被った男が二人、女性の年齢はオリバーには分からないが妹と同じくらいだと推測される。この国の人間は皆、黒髪・黒目で童顔な人間が多い。男性は傘で顔が隠れていて何もわからない。
(女性?メイドみたいな人なのか?しかし来ている服は見た目は質素だけど多分絹か?こっちで高級品だが、高位貴族のメイドだ、それなりの身分だろう、挨拶は機関長さんに任せよう、しかし女性の後ろの二人、格好は庶民風だが明らかにここの衛兵とは雰囲気が違う、多分騎士なのか?)
「初めまして、我々と言いますが、ほとんど鬼の相手をしたのはこちらの男性のオリバーです、一応私が雇い主の代表となっております、お話を聞きたいとの事ですがまだご到着されてないのでしょうか?」
「私が聞きたくて呼んだのです、オリバーと言いましたね。流石鬼を退けたとの事、大きな体ですね」
「これは失礼しました、まさか女性の方が荒事に興味を持たれるとは、国が違えば考え方も違う、先入観のせいで失礼いたしました」
「よい、どちらかというと我が国でも女が戦いに興味を持つ方が珍しいのだ、それでオリバーよ、鬼はどうだった?そちらの国にも妖怪がいるのであろう?どちらが強い?」
(名乗りもしないのか、高貴な方のお忍びだから仕方ないか。少し気に入らないが)
「はい、こちらでは魔獣と呼んでおりますが一言でいうと今まで私が戦った魔獣の中では最高峰でした。何より知性を持っているのがとてもやっかいです。私は守りに徹して後ろにいる相方の魔法使いのリリィが致命的な攻撃をする戦術をすぐに見抜かれとても苦戦しました、あの鬼の投げる石礫は当たれば致命傷を負うほど威力でしたので」
「そちらの魔獣とよばれる妖怪は知性を持たないと?討伐は楽でいいな」
「いえ、私は恥ずかしながら本国では平民の身で、金銭を受け取り様々な仕事をする少しだけ腕っぷしに自信がある程度の者です。魔獣を指揮する者は知性もあり残虐で討伐に苦労するようなので、そのレベルの討伐になると貴族、そちらでは大名といいましたね。貴族が指揮する専門の部隊が討伐に向かいます。機関長は貴族ですので私より詳しいかと」
「まぁその話はよい、私はお前に興味があるのだ。鬼はこの国でも上位に君臨する妖怪だ、それを退けて日銭を稼ぐ平民とはおどろ......お主、腰の短剣を見せるのだ、オリバーから短剣を受け取ってまいれ」
女性は後ろの男性に指示を出す。男性が一歩前に出た所でオリバーが制止する。
「お待ちください、この短剣は私共を雇ってくださっているアヤノ家の短剣です、私の一存では渡せません、機関長に」
「アヤノ家じゃと!いや、その家紋間違いなくアヤノの家紋、どういうことなのだ?そのような事....」
女性だけではない、後ろに控える男性も明らかに困惑している。機関長が間に入ってくれる
「アヤノ家がどうされたのですか?因みにアヤノ家は今回の連合国派遣団の中の一つである王国の有力貴族で武門の名家であります、言いにくいですが今回の北の国の派遣団では比較にならないほど格上の貴族となっております」
「そうか、多分であるが伝説に間違いは無かったのかもしれないな、私の名前は綾野 葵と言う、この国の武家の棟梁綾野家に連なる者じゃ、そして我が一族の伝説で数百年前に当時戦に敗れた綾野家の一部が海の向こうに渡ったという記録がある。機関長と言ったな、帰還したら報告するのだな何かわかるかもしれぬぞ」
「戦に敗れて海外に敗走者までだすまでに徹底的にやられてよく盛り返しましたね」
オリバーは思わず自分の先祖かもしれず、彼女が遠い親戚かもと思い口に出てしまった。
「失礼しました、教養が無い私が言うのは烏滸がましい事でした、お許しいただきたい」
「よい。正直奇跡が繋がっての今の結果じゃ、相手も綾野一族を皆殺しにしたのじゃが幼子に手をかけるのは躊躇ったようでな、寺に預けたようじゃ、そうやって細々と生き残った残党が時の政権をよしとしない者どもを率いて打倒したと言い伝えられとる」
「そうでしたか、私のような身分の者に教えていただき大変ありがたく、恐縮です」
「この事は上に報告しておく、今後の外交課題になるだろう、数百年の時を超えて出会えるとなると思うところがあるな、それより本題じゃ、オリバーとやらそなたの強さを見たい、機関長とやらが先ほど言ったが強者を試したくなるのは我が国の文化じゃ、後ろの者と戦ってもらう」
「分かりました、しかし真剣はご遠慮願いたい。私達は冒険者です。賭ける誇りも無い日銭を稼ぐ平民であるのに一方的な勝負を受ける事になる、木刀でなら勝負させていただきます」
「そうか、出島に木刀くらい転がっているじゃろう、用意してくれ」
しれっとリリィが翻訳の符板を手放して詠唱をしている、速度強化の魔法だ。
「向こうは二人だし、私達冒険者よ?できる手は全部打っておくのが流儀よ」
「そなたの大盾はそのままでいい、それが鬼の攻撃を防いだのじゃ。それを使ってもらわないと意味がないわ、準備できたようじゃ、私が石を投げる、地面についたら開始じゃ」
石が地面に落ちると同時に二人の男が奇声をあげて斬りかかって来る。瞬きをしている間にもう剣の間合いに近い。
「ちぇすとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
謎の奇声だが明らかに胴が隙だらけだ、しかし。
(一人は剛力で受け流せるが二人は無理だ!)
咄嗟に回避に入る、人間離れをした動きにジパン側の騎士は驚きを隠せない、リリィの速度強化が生きている。
剣を振り下ろした二人は隙だらけだ、一人をシールドバッシュで吹き飛ばす、場所は船着き場だ、海に向かって突き飛ばした、出島の与力と呼ばれている者が必死に救助をしている、意識を失っているようだ。
(あの振り下ろしはまずい、受けたらダメだ、剛力があっても万が一がある、超接近戦で体力を削る!)
オリバーは残り一人にピタッとくっ付いて盾に体を隠しながら短い木刀で 相手を何度も斬り付ける。
(こう接近されるとこの男の大盾は突破できん、それにもう数度斬られている、戦なら死んでいる)
相手の男は戦う意思がないと片手を上げた、降参の意思表示だろう。
「まいった、我々の負けだ、綾野様この責任は後で取ります」
「責任などとらなくてよい、これは非公式じゃ、記録に残らん。それに鬼を退けた豪傑相手じゃ誰も責めはせぬし責めさせん、綾野の名に掛けてな」
「はっ、ありがたき......」
「ふむ、この二人は私の周りの武士の中でも最高の強さを誇っている、それをああも簡単に」
(簡単じゃねーよ、リリィの速度強化が無かったら大怪我だったぞ)
「恐ろしい、斬撃でした。受けていたらもしかしたら立っていられなかったでしょう」
「そういう剣技じゃ、初太刀に全身全霊をかけ、一撃のもとに敵を斬り伏せる「一撃必殺」の猛烈な剛剣、他流派からも初太刀は外せと言われているからの」
「気に入った、そなたのような強き男を綾野は欲しておる、私の婿になるのだ、初夜は今夜でいいぞ?」
あまりの衝撃的な発言に一同は声に詰まるのであった。
チェストって叫ぶ剣技、言うまでもありませんね。
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