オリバーとリリィの遠出クエスト3 中継地でのバカンス
オリバー君は貴族を外から見て思うところがあるようです。
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もう少しで中継地の島に一時上陸をして数日間過ごすらしい。今回の船旅は俺たちが乗っている最新鋭の船だけじゃなくて数隻の旧式の船が随伴する船団だからだ、聞いた話だと俺たちが乗ってる船だと理論上は中継地に寄らずとも目的地に行けるそうだが、何せ初めての遠距離航海だ、一応点検も行いたいらしい。
「すみません、オリバーさん、リリィさん、私が調べた所、他の船の乗組員はあなた方をただの護衛の冒険者だと思っているそうなのです。急いでアヤノ家が手配した人間と周知してもらおうとしたのですが、久しぶりの陸地なもので、皆すでに散り散りになってしまいまして......何かあった時はアヤノ家の名前を出してもらって結構ですので、本当に申し訳ございません、ご迷惑をおかけするかもしれません」
機関長と名乗る男が下船してすぐに声をかけてきた。多分、俺は大丈夫だろう、問題はリリィだ、しっかり守らないといけない。
「なぁ、正当防衛は許されるのだろうな?」
最近、冒険者に染まってきたかもしれない、特にリリィの事になると口が悪くなる、自覚しているが、どうしても頭に血が上ることが多い。特にロックとの交流で貴族が平民にしている事を知れば知るほど貴族とは何なのかと考えさせられる、大多数の平民が必死な思いで稼いだ税金で飯を食っているのに平民を虐げる神経が理解できない、冒険者と言う命がけの仕事を生業としてやっと稼いだ報奨金の一部を税として取られて思うようになった。
農家が共同出資をして熊の駆除の依頼をしてくることがある、俺が貴族だったころは銀貨以下のお金を触ったことが無い、だが農家の人々は必死にかき集めた銅貨やそれ以下の貨幣で依頼してくることも珍しくない。彼らも命がけなのだ、熊数頭が畑を蹂躙するとその年の稼ぎどころか冬すら越せなくなる。
当然アヤノ家は父が統制しているのだ、その点は清廉潔白だ、けど分家は?地方に派遣している管理官は?多分、全員が善人では無いだろう、そう思うと苛立ちが湧き上がってくる、しかし俺一人の力では、例えアヤノ家当主になっても変えられないだろう、あの父ですら変えられないのだから。権力を持った人間の欲への執着がここまで酷いとは思わなかった。
「ねぇ、オリバー?怖い顔してるわよ、どうしたの?」
「いや、世の中ダメな奴っているもんだなって思ってたの」
「そうね」
リリィには汚い言葉を使っている所を見られたくない、なるべくオブラートに包んで言ったがどうやらそれとなく考えている事を見抜かれたようだ。
「まぁ、暗い事考えても何も解決しないさ、用心して人気のない所は避けて行動しよう」
「本当は私たちも入れるけどプライベートビーチに行くのはやめておいた方がいいわね」
「君子危うきに近寄らずっていうしね」
「異世界語?偉い人は危険な所に近寄らないみたいな意味ね、いい格言ね」
「俺たち偉くないけどねー」
偉くはない俺たちには勝手に危険が近寄ってくる。レストランで食事をするのもいらないトラブルになると思いテイクアウトで済まそうとしたときに事件は起きた、人通りが多いから油断をした、俺が食べ物リリィが飲み物を買いに行った時に無理やりリリィを拉致しようとした連中がいた、当然俺が対処したわけだが、最後に「冒険者と聞いたぞ、俺たちを誰だと~」の後は覚えていない、ローキック一発でリーダー格の男が倒れこんだ、何やら言っていたがアヤノ家の依頼で来ているとだけ言い残しホテルに帰った。
「あいつら、この島を任されている貴族の子弟ね、名前に聞き覚えがある」
リリィはこの島を所有する北の国の元貴族だ聞き覚えがあったのだろう。
「大きい所なのか?」
「こんな辺境の島を任される程度よ、確か4位でも下の方」
「面倒だな、機関長だっけか?あの人に言って部屋を変えよう」
下っ端貴族あるあるだ、余裕がないので長男にはそこそこの教育を受けさせるが次男以下は読み書き計算と最悪騎士隊に入れるように軽く剣を教える程度の家が多い。これがたちが悪い、中途半端に戦闘訓練を受けさせているから平民じゃ敵わない事が多く、長男ばかりいい思いをしてと性格が曲がる奴が多い。
いきなり、窓ガラスが割れる、投石紐でも使った石が飛んできてリリィに当たってしまった。
「大丈夫か!意識は?どこに当たった!?」
「っ、腕よ、運がいいわ、頭や顔じゃなくて、美人が台無しにならなくてよかったね。でも多分骨にひびが入ったかも、腕が痛くて肩より上に上げられない、初級回復魔法が使えるから、1週間もすれば治るわ」
「機関長の部屋に行こう、その後は任せて、ごめんなリリィ守ってあげられなくて、そして多分止めるだろうけどダメだ、押さえられない」
「そう、でも人殺しはダメよ手加減してね」
もう気配で分かっていた、ドアを蹴破って先ほどの地元貴族の取り巻きが入ってきた瞬間に顔にパンチを入れて昏倒させる、リリィが窓に目掛けて石礫魔法を連打したようだ、窓から侵入しようとした奴らが一網打尽となっていた。
「リリィ、俺は暴れたい気分なんだけど」
「だめよ、あなたが殴った人、もう誰か分からないじゃない、後は機関長さんに頼んで任せましょう」
「本当に、何と詫びればいいか、船には中級の治癒術が使える者がいます、2~3日でリリィさんの傷は治るでしょう......まぁ当然行きますよね、これ持っていってください」
「短剣?アヤノ家の紋章入り?」
「それを持っていればアヤノ家のお墨付きです、ある程度暴れてもなんとでもなります、この島を治める貴族の当主も次男の事は諦めたのでしょう、海岸近くに小屋を建てて自由にさせているみたいです、腹立たしいでしょうが当主と嫡男は北の国の法で裁かねばなりません、手出ししないでください」
「そこまで手加減しないといけないのか?一発なら誤射だろ」
(ハジメ様変わりすぎでしょ?あのルイ様に甘々だったハジメ様はどこにいったのでしょうか?)
機関長を名乗っているがルイの世話をしていた間諜だ、ハジメの事もよく知っている。
オリバーは機関長に教えられた小屋の近くに来ている。
「まったくロックには感謝しっぱなしだな、”貴族だらけの所にいくんだろ?これ持っていけ”、か」
ロックからもらった乾燥させた刺激性の高い植物の粉末がたっぷり入った革袋を襲撃犯のアジトの窓を叩き割り思いっきり投げ込んでやった。
後は流れ作業だ、入り口から涙目で飛び出してくる男どもを順番に殴りつける簡単な作業だ。
オリバーは格闘術は基本動作しか習っていない、理由は簡単だ。オリバーほど鍛えた大男が基本に忠実に相手を素手で殴ると腕でガードしてようが関係なしにワンパンでノックアウトだからだ。
最後に倒れこんだ男が何かを言っている。
「平民無勢が、俺たちを誰だと、ここを治め......
思いっきり、とは言わずにギリギリ理性を保っていたのか歯が数本無くなる程度に無言で顔を蹴り上げて気絶させた。
「しらねーよ、後は裁判で好きな事言え」
この島を治めている貴族が謝罪を申し出てきたが断った、ただ一言、アヤノ家を通してなら話を聞くとだけ返答した。島外に出るまで何も動きは無かった。
その後はちゃんと知れ渡ったのかオリバーが見せつけるように腰につけているアヤノ家の家紋入りの短剣のおかげか絡んでくる人間はいなかった。
(まさか、この家紋を下げて歩く日がまた来るなんて思わなかったな)
オリバーは終始不機嫌だった、本当はこの島でリリィとデートをして存分にイチャついてヤル事をヤル予定だったのがリリィの腕の治療ですべてキャンセルになったからだ。
(向こうの、確か”ジパン”と言う国の貴族、大名は分別があるといいな。アヤノの家紋の効果は無さそうだ、機関長さんと行動しよう)
アヤノ家
「お父様、人間はカタパルトで何メートル飛ぶか実験しましょう、計算では出せますがやはり実地での運用も大事です」
「やめなさい、もう実行犯は文字通りハジメに顔の形が変わるくらいに制裁を受けた、一生変形した顔で過ごすことになる、高位治療魔法を早くかければ治るだろうがあの家にもうそんな資金も無ければ人材もいない、それで我慢しなさい」
「親と長男が無傷ですよ?飛ばしましょう、お父様ならちょっと北の国行って「滅っ!」とやれば連れて来れるでしょう、私は庭に最近考案した射程距離を伸ばした新型カタパルトの設置をしておきます。名前はウォーウルフちゃんです!、計算上130キロ前後の岩を200メートル以上飛ばせますよ」
「だから、やめなさい、国際問題になる、あの貴族は終わりだよ、運がよくて5位降格、まぁ多分島に同盟国の調査団が入って結果次第では投獄だよ、あの島は今後貿易の中継地として各国が使う要所だからな、カタパルトは最後の攻城戦に使うから閉まっておきなさい、試験は先週にしただろう」
(間違いなく育て方を間違えたな、もっと構って話を聞いてあげるべきだった、それにしてもマッテオ君よ浮気はするなよ、それとなく今度、ロッシの当主に会ったら言っていこう)
「最近、あの人とルイが仲良さそうで羨ましいわ」
二人をチラ見しながらひとり言を言うヘレナであった。
次回はイワオ視点のお話です。
言葉で罵ったり、よく分からない魔法で相手を屠ったりは作者の足りない語彙力でもなんとなくフワっと表現できるのですが物理攻撃は難しいですね。だって痛そうだし、それに普通に生きていれば殴り合いの喧嘩もすることも無ければ生で見る事もないですからね。難しいものです。作者は異世界物は大好きですがいわゆるグロイ描写は苦手なので残念ながら人気作でもそういうものが多く出てくる作品はあまり見ていません。こればっかりは作者の性格なのでどうしようもないです。
機関長は大忙し、この話だけで1話作れそうです、部下を総動員してオリバー達に手を出さないように触れ回っていました、後数分でリリィの護衛に戻れるところでの襲撃でした。報告時にルイからまるで見損なったぞと言わんばかりの口調で「あっそ」と言われた時はちょっと泣きそうだったとか。
名前はウォーウルフちゃんです!本当に存在した投石機です気になる方はググってください。
ジパン.....大名、聞き覚えがありますね。この先の展開が気になる方は下部にある評価の【★★★★★】と、ブックマーク登録で応援をお願いいたします!皆様の応援ポイントが、次話を執筆する最大のエネルギーになります!




