初夏の始まり2 オリバー過去の告白
オリバー君の過去話。
ついさっき、あんな会話をしてまともに会話なんてできるわけが無い。淡々と準備をする。昼ご飯は釣れたニジマスを食す。
「実はロックからアウトドアニジマス料理のレシピを聞いてな。まず、ロックからもらったこれを使うんだ、悪いリリィ。あそこに生えている笹の葉を10枚ばかり取ってきてくれ」
「おけー、分かったわ」
背嚢から20センチほどに切られた竹を取り出す。ククリナイフで先っぽの節の真下を思いっきり叩き切る。そしてリリィの採取してきた笹の葉を竹の内側に沿わすように入れてその中に下処理をしたニジマスを入れる。後は醤油、バター、婆さんの庭で採れた夏みかんを半分にわり果汁を絞り入れ絞り切った夏みかんの皮を竹の蓋にする。それを火の近くに置く。
「20分くらいで出来るはずだ、この前ロックと一緒に作ったんだ、材料は多少違うが味は保証する」
「あら、私をのけ者して楽しい事してるんだねー、そうだねー男の人ってそうだよねー、私寂しいから大きなクマさん人形買おうかしら、名前はオリバーちゃん」
「ごめんて、怖いからやめて」
「冗談よ、半分ね」
そう、半分なんだね。
ニジマスの竹蒸し焼きが出来た。
「うっわ、これうっま、醤油バターの香ばしさと柑橘系の酸味の中に笹の葉と竹の香りがほんのり香って身もふわっふわ、よくこんな調理法知ってるわね」
「ロックにいってやってくれ、喜ぶから、ロックがいたら美味しいキノコとかも入ってメチャクチャ美味しいぞ、あいつ植物採取4持ちだし絶対美味しい物を採ってくるんだ。」
「ロックって見た目に反して、手先は器用なんだね」
「今後植物採取クエの時は同行を頼もうと思う。クエスト受注の幅が広がる」
結局、オリバーは5匹、リリィは8匹のニジマスを食した。
夜飯は来る前にギルドの厨房に頼んで切ってもらった根菜と香味野菜とトマトと水と一度焼いた鹿肉を焚火の上の鍋に入れて鉄の蓋をして、その上にも真っ赤に熾った炭を乗せる。ダッチオーブンと呼ばれるらしいこの鍋でじっくり密閉して煮込むことで、硬い鹿肉がホロホロに柔らかくなり、トマトとコンソメの濃厚な旨味が芯まで染み込むのだ。異世界小説で見かけた鍋をオリバーが町の職人に閑散期に頼んで作ってもらった。
「こうやって長時間似ると肉が柔らかくなるって小説に書いてあった」
もう長い事定着しているので誰も知らないがトマトもコンソメも地球産である。
後はバーベキューだ。今回はコショウも塩も醤油もあるぞ。
「焼いたお肉は当然うまいけど、ダッチオーブンだっけ?あれで作った煮込み料理もおいしいわね。ちょっとお肉の匂いがするけど許容範囲、ホロホロになってて美味しい」
「あ、アク取り忘れてた。道理でちょっとお肉の匂いがするわけだ。」
因みにロックは焼いてから煮てアクを取れといっていた。完全に忘れている。
珍しく、オリバーが蒸留酒のお湯割りを飲んでいる、お湯が結構多いが。
「さて、どこから話そうかね、申し訳ないが、恥ずかしながらそれなりに名のある出身でさ、名前は伏せるよ、最悪俺はいいけどリリィも死ぬ」
真剣なオリバーの表情に正直言って若干の恐怖を感じた。
「あなたのためなら私も死ぬけど?」
「じゃあ死ねないな、と言うか俺の前で死ぬって二度と言わないでほしい、リリィが死ぬって思うと軽く三日はへこむ」
「うん、ごめんね。もう言わない(でもあなたが消えたら黙って死ぬかも、浮気したら浮気相手殺して私も死ぬ)」
「まぁ知っての通り、俺は元貴族さ、しかも嫡男、家族仲も良好でな。いい家だったよ、俺の体つきを見ればわかると思うけど武家貴族さ」
「でしょうね、その見た目で文官ですって言われたらビックリね」
「婚約者がいたんだよ・・・・6歳からな」
「そう・・・じゃあ、きっと私より上の貴族だったみたいね」
「あぁ、そうだね。赤毛の可愛らしい子でね、読書が好きで勉強がよくできる才女だった、俺はさ武家の嫡男だしさ、結構しんどい訓練してたんだよ、でもあいつに、いい所見せたくて、あいつと対等に話したくて、凄いって言ってもらいたくて、それこそ寝る間も惜しんで勉強したよ」
「そう(ものすごく羨ましい、というか恨めしい)」
「頑張り始めたのは8歳からかな、10年ずっと頑張った、1回も勝てなかったけどね。でも15歳まではよかったよ、学院に入学しても15までは基礎勉強だしね。家での訓練もあったけどまだついて行けた、学年順位も10位前後だったよ、あいつは常に3位以内にいたけどな」
「へ?(意外、教養はある方だと思ってたけどそこまでなんて)凄いね、私は20位前後よ」
「そこは男の意地と丈夫に生んでくれた親に感謝だな、(途中からは勉強を教えてくれた妹にもね」
「18の卒業までもう少しって時に噂が流れてきてさ。赤毛のあの子が下級生の男子と毎日休み時間も放課後も学校が閉まるギリギリまで二人っきりでお話してるって」
「は?ぶっ殺」
「悪い噂だと思ったよ、まぁ、そこそこ俺は目立つしね(身分的に)仕方ないかなって、でも気になって他コースのカフェテリアに言ったら、噂通りさ、最初はちょっと雑談してるだけっていいきかせたけどさ、ぶk、いや友達、もう部下でいいか、監視していた部下がもう半月以上こんな感じだって報告してくれたよ、もうその瞬間は今でもあまり思い出せない。多分怒り?嫉妬心?劣等感かな?今でもあの感情を思い出せない。だって12年婚約者していて俺が見た事無い笑顔で笑っていたんだよ!」
自然と涙があふれて来る。
「その時はあいつの友人が気が付いたのかな、それとなく注意してくれて勝手に解散したよ、俺はそこで何かの間違えだ、ちょうど来た時に、遠くだったから光の加減とかで笑っていたようにみえたって言い聞かせた、友人になんとかしないとって言われたけど、格好つけてさ、あいつに嫌われたくないってのもあったけどあの男の排除はしなかった」
(学院の生徒を排除できる立場だったてこと?まさかね・・・)
「でも、噂は広がるばかり、しまいには我が家も地に落ちたな、女を寝取られて黙ってる腰抜けが次期当主って噂も流れたよ、言った奴消したけど、仕方ないから諫めに言ったのさ。流石に怒鳴るのはプライドが許さなかった」
(え?消すってもしかして私が思ってる以上の位?)
「そしたらあいつ、あなたとは週に1回お茶会の時間をとってあるでしょ?って言うんだよ。しかもさ、いつも3時間はおしゃべりしてたのに直近数回は1時間以内で切り上げるんだ、あの男とは休み時間も!放課後も!ずっとしゃべってるんだぞ、俺との1時間以外、学院にいる間の空いた時間ずっとだ! それでもグッと堪えて妥協案を出したさ、俺の家で3人で話してくれって、それならいらない噂も立たないし我が家のメンツも保てる、最後まで言わせてくれなかったけど俺はディスカッションする気はなかった、士官候補コースの俺に上級文官コースの話なんて分からないからな」
(え?士官候補コースに上級文官コースってよほどじゃない限り3位以上が条件よ?)
「あいつは、どうせあなたと結婚するんだし婚約者と言えど今は自由にさせてよってさ」
「え?さいてー・・・」
「その後の事は覚えていない、そんな問題じゃない的な事を言ったような気もするが、下級生の男がな、決闘で決着をつけようってな、公衆の面前で言い出したんだ」
「文官コースの人よね?あなたに?私冒険者して荒事にも多少慣れたからわかるけど訓練受けてない人があなたと、仮に木剣で戦ったとしても、よくて・・・・当時のあなたの怒りを想像したら死ぬ意外選択肢ないじゃない」
「負けたんだよ、数合打ち合って木剣飛ばされて足払いされて・・・おしまいさ」
「なんd・・」
「俺の方が弱かったから、そうしか言えない」
「幼いころから、厳しい訓練をしてきた、訓練をする道具も場所も、馬も、全部領民が汗水流して、時には命がけで支払った税金だ、俺にいくらかかってたんだろうな?そんな俺が下級生の文官コースの男に負けた、家の恥だよ、必死に税を納めてくれた領民に顔向けできない。自裁も覚悟した、父上に進言直前までいったよ」
(もう、そこまでの責任って3位以上確定じゃない)
「父上が、俺に年の近い殺人犯の首を用意して俺の死を偽造して俺は国外追放だよ、俺は自分の手を汚さなかったから・・・リリィが苦しんでいるのを見るまでその事を忘れていた腐れ外道だよ!」
「俺は清廉潔白じゃない・・・」
思った以上に長くなる。次に続く。18時かなぁ
当時のオリバー君はかなり限界ギリギリでオリビアとコウタと対峙していたのです。
どのくらい我慢してたかと言うと彼の父親がオリバー君の立場なら噂が入った瞬間に調査して判明した日にコウタは行方不明になってたレベル。




