初夏の始まり3 リリィの荒療治、オリバーの復活
第2部ですよ。頑張れオリバー君
その後はリリィも知っての通りさ、冒険者ギルドに行って適当にクエストして・・・
「リリィに出会えた。正直最初はぶん殴ろうと思ったよ」
「あ、いいよ別に、私も口だけ野郎ならゴブリンの巣に放置して空から逃げようとしたし」
「最初はそんな感じだったな」
やっとオリバーが笑い始めた、目は真っ赤だが。
「リリィの事を気にしだしたのは冬だな、ノックしてどうぞって言うからあけたら風呂上りで凄い薄着でさ、正直焦った、次は魔力循環。あの時は格好つけた事言ってたけど、凄い緊張してた」
いきなりぶっこむオリバー君にリリィは戸惑う・・・がなんとか持ち直す。
「あの時すっごい耳真っ赤だったもんねー、魔力循環の時は耳に息吹きかけようかと迷った」
「多分、凄い声あげたぞ」
「やればよかった」
「私はいつからかは忘れたけど、決定的なのはフキノトウの時だよ、もう私の人生この人しかいないって今も思っている、学園にいた時も卒業した時も、もっと本気で嫌がれとか、頑張って謝れば許してもらえるとか、他人って言いたい放題だもん、毎日泣いてた」
「リリィには悪いと思っている。怒ってると思う、こんなにストレートに思いを伝えてくれているのに答えられない」
長い間が開く、いつかのリリィのようにオリバーはスキットルから蒸留酒の原酒を何度か煽る。酔わないと言えない事でもあるのだろうか?
「一線を越えようとしたら、オリビ・・・あの赤髪の子が頭によぎるんだ、いや、もう未練があるわけじゃない、きっとあいつと結婚でもしてるだろうよ、リリィを捕まえるとあいつのように霧みたいに手の平からすっと逃げて消えるんじゃないかって思うと、その・・・・あれが・・・だめになるんだ・・・」
もう空のスキットルから最後の一滴を出そうと上を向いている。あの時のように私は、効果は薄いけど雑貨屋で買った気分の落ち着くと言われるハーブティーを渡す。
「ははっ、あの時と立場逆転だな。まぁ役立たずってわけだよ。俺は・・・」
ハーブティーを飲み終え、コップを机に置いた瞬間、私はオリバーに抱き着き、口づけをする、ファーストキスはいつもの安酒の味だ。オリバーはビックリして離れようとするけど逃がさない、腕を首に巻いて足を腰に巻いて絶対離れない。
「私は、どこにもいかない、あなたのいる所にずっといる。赤髪の女?あなたの前にいるのは銀髪のリリィ・・・リンネア・ショーベリ、本名です、1年ぶりに名乗ったの。ばれたらあのデブに追いかけられるから一生守って」
唇を離して数秒・・・
「ショーベリ、北の国の?」
よく知ってる、座学トップクラスは伊達じゃないね。
「今はどうでもいいじゃない」またキスをする、自然と舌を絡める。昔読んだ恋愛小説ではそうしていた。
「ごめんね、弱っていたのは私だけじゃなかったね、いつも甘えてごめんね。今度から私も支えるから、一緒に支えあおうよ、一緒に幸せになろうよ。あなたと一緒に笑って、苦しんで、楽しんで、一緒に過ごしたい」
え?ちょっとこのタイミングで?ちょっとまずっ、離れないと。
「リリィさん!今はリリィさんでいいよね!ごめん、悪いけど。いったん離れよう、落ち着こう、いや、俺が落ち着くと言うか、いいからお願い、離れよう」
無理やり離れる。
「・・・・・オリバー、私一般教養で保険の授業あった」
「やめてくれ、それ以上はいけないですのだ」
「おちついて、語尾が変よ?どうしたの?凄く困った顔、顔に触っていい?」
リリィの綺麗な指が頬を撫でる。
「いや、ちょっと困る、ここ外だし、キャンプダシ、ワンチャン国境近いし、困るの、お願い」
もうしどろもどろだ。いや、国境警備兵が高見台からが双眼鏡使うと見られちゃうよ。
「えー?何が困るのー?私は困らなーい」
「ぶっちゃけると、向こうの国境警備隊が高見台から双眼鏡使うと丸見え、焚火してるし、あいつらの双眼鏡採光用魔石標準装備で光を数万倍拡大、いける。下手したらめっちゃみられる」
「どうせ国境外だしこれないでしょ、見せつける?」
「来るんだよ!特に俺の顔確認されたら確実に!」
(あ、婚約者がいる、学院からその気になったら生徒の排除が可能、染髪魔法、近接戦鬼強い、目の色は・・・・黒・・・・・何故か向こうに高見台がある事と装備知ってる・・・・)
「あっ!あああああ、え?そんな。」
「ダッシュだ。あいつらの練度は半端ないぞ、こっち側に警備兵いないんだ、こっち来放題だよ。火消して。シートだけ持って森まで各自ダッシュ、二人だと嫌な予感がする。と言うか俺はばれたら本気でやばいんだ!じゃあな!今度は物理的に首が飛ぶかもしれない!」
今まで見た事無い勢いでダッシュして行った。とりあえず私は火を消そう・・・・火を消して、シートを持って森に行こうとしたら。
「お嬢さん、悪い事言わないから動かないで。逃げてもこっちの方が足早いよ」
「は、はい。ただキャンプしている冒険者です、私、悪い冒険者じゃないよ」
プルプル震えている。
「ここでこちら側の人間に会った事はあの方とあの方の家族の関係者以外には内緒な」
もう両手を上げて敵意が無い事を伝えるしかない。
「あいつをよろしく頼む。ガキの頃から面倒をみていた、肩車もしたことがある、キャッチボールもした事もある。オセロは本気出したら泣いてしまったな、ここは暇だからな、定年延長した古参兵ばかりだ。かくれんぼをしたら迷子になってな、君には見えないだろうが20メートルほど後ろにいる連中で血眼で探した事もあったよ」
高年齢特有の嗄れ声なのか涙声なのか分からない。ただ優しい声だ。
「あぁ、ある程度成長して初めての訓練の時はうれしくってな、つい可愛がってしまったら泣きながら走ってたよ、根性のある奴だ、小さいころにじい、じい、って後をついて回ってきてたのが昨日のようだ、生きていてよかった。死ぬ前にいい物を見れた。あいつは優しいやつなんだよ。見た目は熊だけどな」
「知っています。優しい。クマさんです」
「優しすぎて、怒らないといけない時に怒れずに自分を責めるんだ、あの子は悪くない、これは内緒にしてほしいがもし当主様にあの子を裏切った家の領に突撃命令が出たら一番槍はわしらだ、誰にも譲らん、お嬢さん、あの子は傷ついている、優しく、優しく抱きしめてやって欲しい。わしらからすると泣き虫小僧なんだよ。頼んだよ」
「わかりました。まかせてください。私が幸せにします、あっちにいるようなので行ってよろしいですか?」
「これを持って行きなさい、市販品だ。見つかっても買ったと言えば追及されん、本当によろしく頼んだよ」
「(魔石入り光源、確か懐中電灯とかいったはず)ありがとうございます、では、お元気で。元気だったと伝えておきます。オセロで勝った人と」
「ははっ、オセロに勝てなかったジジイ達といっておいてくれ」
冒険者と言う命がけの仕事をし、時には貴族の領兵の使い走りみたいな仕事もした事があるからわかる。
あの人たちの纏う空気は、ただの定年を迎えた老兵のそれじゃなかった。もしアヤノ家当主の号令があれば、あの人たちは躊躇なく国境を越えて戦争を始める、それほどの狂信と実力を秘めた、アヤノ家の私兵団の老練兵だったと思う。
なんども振り返ったがずっと直立不動で敬礼をしていた、あの老兵は懐中電灯の光が少し顔をかすった時泣いていたように見えた。
長かった、一番の難産、疲れた。次は明日の12時かな。
オリバー君、もといハジメ少年は人気者だったようですね。
労使交渉もまとまりました、帰るまでがキャンプです。分別を持った行動をするでしょう。
作者は書き始めて6日目です。BANはゴメンだぜ。
定年延長の老兵。ハジメ君のことを聞いて復帰しました。号令があれば決死隊になりロッシ領に攻め込んだでしょう。全員とは言いませんが8割くらいは冒険者レベルで言うと短時間ならゴールドレベルの戦いをできる練度です。




