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婚約者といちゃつく奴を注意したら決闘となり敗北~すべてを失った男の物語  作者: 松ボックリ


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閑話 side リリィ (オリバーへの初恋)

 オリバーが労使交渉を行ってる時、リリィは何を思っていたか。

 私は今、多分、認めたくないけど初恋をしている、と思う。この年になってだ。


 思う、と言うのはこの感情が初めてで扱いきれていないからだ。


 第一印象はむさ苦しい大男だと言う感想だった。ソロでの活動の限界が来て路銀が尽きて精根が尽き果てていた。それでも相手は初心者で街中の掃除や工事の依頼しか受けていない、私と同じ訳ありでしかもアイアンになりたての初心者だ、最初に一発かましてやろうと強い口調で話を進めようとした。結果は完敗だ。


 「俺って受付のお姉さん公認でシルバーくらい行けますよっていわれてるので」


 彼の後ろで見つめている受付係を見ると頷いている、冒険者になってまだ日が浅いけど受付係のいう事に逆らっていい事なんて一つもなかった。


 話し合いを続けていざ大型クエストに出発した、彼が口だけ男なら囮にして私は空にでも逃げればいいと思っていたが彼は思っていた以上に強かった。盾をこん棒で叩きながらゴブリンの集落を襲撃している姿はまるで物語に出て来る重戦車のようだ、触れるゴブリンがはじけ飛んでいた。殺したゴブリンの武器を拾い次々と殲滅していく。私いらなくない?と思いながら魔法詠唱を終えてクエストも無事に終了する。


 彼ことオリバーはきっと本名では無いのだろう、髪は茶髪だが微かに染髪の魔法特有の感じがする。


 オリバーは筋骨隆々でいかにも脳筋と言うタイプに見えるがかなり慎重派だ、特に強敵の討伐依頼の時はそれが顕著になる。


 魔獣の討伐依頼を受けた時は私の探索魔法を最大限利用して無駄な戦闘を一切しない、探索魔法で猪やウサギ、はぐれゴブリン等、私たち二人なら容易にお小遣い稼ぎができる相手を発見しても無視をする。理由を聞いたら。


 「どんな動物でも切れば骨に当たり刃が欠けたり曲がったり血糊で切れ味が悪くなるかもしれない、ここでは十分なメンテが出来ない、そんな状態で強敵との戦闘は何が起こるか分からない、余計なリスクを背負いたくない、俺たちは物語の主人公じゃない、ただの凡人だ。不慮の事故であっさり死ぬ、目の前の仕事をきっちりこなそう」


 と、クエスト中ではいい事を言うのだが趣味の話になると急に少年に戻る、特に異世界転生というジャンルの小説が大好きなようだ、私も学生時代に研究の為に多少は読んだ。中には目を引く作品があったけど大概はお決まりのルートで話が進む。超常のカガクの力を持つ世界で不慮の事故で死んで女神にちーと能力を授かってたくさんの女の子を侍らせ、よくわからない知識をひけらかせて強敵を布を裁ちばさみで切り裂くように簡単に倒していくお話だ。それなりにジャンルとして成り立って売れているという事は男の子ってこういうのが好きなのね。


 出会ってから冬になるまで様々なクエストをこなした、失敗もそれなりにした。オリバーが後退しようと言うのを説き伏せて進んで失敗したクエストもあった、逆にオリバーが慎重すぎて失敗したクエストもある。別にそれで喧嘩はしない、私が失敗してもいつもオリバーはそんな事もあるさと軽く流す、オリバーが失敗した時は申し訳なさそうな顔をしてビールかワインをおごってくれた。


 そうして私たちは秋になる頃には笑いあえる仲間になっていった。


 そして冬が来た、オリバーの提案でお金を貯めていたが彼は予想以上にお金を持っていて冬季限定でログハウスを借りる事が出来た。ギルドの宿屋でもよかったが冬季は仕事が無いために常に素行に問題がある者が常駐していて気が休まらない、高いお金を払って借りたかいはあった。


 一か月もするとお互い暇なのか同じ部屋で過ごすことが多くなった。


 私は多分見た目だけはいいのだろう、学生時代に友人に「謙遜も過ぎれば嫌みよ」と言われた事もある。寄ってくる男性はほとんどが下心有りきだったと思う。頼んでも無いのにいきなり食事の会計を済まされてた事もあった、知らない人にいきなりご飯の支払いをされるってただの恐怖でしかないのに。


 魔力循環の授業の時にそれなりの地位の男子が私とペアを組もうと画策するのだがいざ始めると練習にならない。後ろから抱き着くようにして両手でお腹に触れないといけない実習なのだ、するにしてもされるにして男子の息遣いが荒いし集中力が無い。幸い先生が女性だったので異性とのペア禁止令を出してくれて事なきを得た。卒業後の出来事は思い出したくもない。


 オリバーはお風呂上がりの薄着の私を見ても、魔力循環の練習の時も大人ぶって気にしていないふりをする。


 「どうかしたか?変な事あったか?」「もう子供じゃないんだ、魔法を覚える事に集中するよ」


 そんな事を言いながら耳まで真っ赤だ。それでいていざ真剣になると魔力循環はすぐにうまく行った、本当に集中して真摯に取り組んだ証拠だ、結果はお察しだったけど。


 話をしていると事あるごとに美人だ、綺麗だと言うし私が笑っていると嬉しそうにこっちを見ている。それに妙に話がうまい、話していると気が付いたら私ばっかり話している事が多い、聞き上手だ。


 普通にドアを開けてくれて、外食をすると椅子を引いてくれる、買い物をしてもどんなに待たしても文句も言わないし荷物を持ってくれる、いつの間にか歩道も外側を歩いてくれている。女性の扱いに慣れている気がする。


 まるで初心なスケコマシマッチョマンのよう。

 陰 キ ャ に 女 性 の 心 情 を 書 か せ る な !


 凄い難産なんだよ。


 オリバー君には幼いころから婚約者がいたので女性の扱いはそこそこ上手です。感情の起伏が大きいリリィはオリバーにとっては元婚約者よりも話しやすいのかもしれません。

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