閑話 side リリィ 2 (オリバーへの執着)
リリィさんは肉食系!
私が決定的にオリバーを意識する事件があった、春一番のクエストだ。フキノトウ採取のクエスト。植物採取は苦手意識があったけどオリバーと担当職員がタンポポとフキノトウは子供でも判別ができると豪語していたので受けた。
いつものように探索魔法を最大効率で発動して、いらない戦闘を回避しつつ進む。途中で動物か魔獣か判別ができない反応が出た。オリバーに報告をしたら今回はただの植物採取が目的だったからだろう、討伐も視野に入れての確認をする事になった。
結果、崖から転落して気絶している猪だった。オリバーはこの時期の猪は美味しいと嬉しそうに言いながらすぐにとどめを刺した。あーあ、絶対まだ寒いのに野営決定だなとがっかりしていたらとても魅力的な提案をされた。
「報奨金でお肉をギルドの厨房に持ち込んで猪肉の赤ワイン煮込みを作ってもらおう」
実家のメイドや家族が交代で料理を作っていたので不本意ながらでも外の世界に出てプロの料理人がいかに凄いかを知った。実家でも年に数回は何かしらのお肉の赤ワイン煮込みが食卓に上がる事はあった、とても楽しみだったし、美味しかった。それをプロの料理人が作るとなったら楽しみだ。
その後魔法で簡易的な川を作り血抜きと解体を済ませ、足の速い内臓をたらふく食べた、こんなに美味しいお肉を思う存分食べたのは生まれて初めてだ。虎の子のコショウを出した甲斐もあった。準備のいいオリバーなら塩くらい持っているだろうと思っていたら案の定持っていた。
食べきれない内臓を埋める時だけはあの荒唐無稽な異世界転生小説によく出て来る収納魔法が欲しいと心から願った、大抵の収納魔法は収納した食べ物は腐敗の進行が止まる設定だった。
まだ夜が浅く寝る時間でも無いので、スキットルに入れた安酒をお湯で割って飲んでいた、酔いも回り鬱屈とした冬も終わり久しぶりの大自然の中、お腹も満たされ話がしたくなったのだ。
思わずオリバーに過去の事を聞いてしまった。聞いた瞬間はこれだけは聞いてはいけないと後悔したのだがあっさりと話してくれた。私の聞きたいことを簡潔に話してくれ、あまりにも自然にこちらにバトンを渡してきたのでこっちも当たり障りの無い話でごまかそうと思ったけどいざ話すと決壊した堤防のように感情が爆発してしまった。
泣いて、泣いて、叫んで、泣いて、話は支離滅裂だったと思う、でも全部吐き出してしまった。嫌われると思った。死者を冒涜するような女だ。決まりごとに関しては潔癖な所があるオリバーにとっては私はきっと犯罪者にみえるだろうと感じた。でも違った。
気持ちが落ち着くと言うハーブティーを差し出しながら。
「気にするな、もう半年近く同じ釜の飯を食った仲間じゃないか、話を聞く程度しかできない自分が情けないよ、リリィはよくやった、つらかったな、今日はそれを飲んでゆっくり寝よう、気分が落ち着くハーブティさ」
なんて気が利く人なんだ、私が求めていた言葉を、まるで救済者のように優しく語りかけてくれた。その後の事は覚えていない、気が付いたら朝だった。ただ数か月ぶりに悪夢を見ずに熟睡が出来た。多分10時間以上寝たと思う。
急いで昨夜の事を詫びながらクエストの準備をした、しかしオリバーは制止した。もう帰ろうと。情けない事に私は泣きながら謝罪をする事しかできなかった。
オリバーはいつものように気にするな、猪だけでも黒字だ、フキノトウなんて数日後にまたくればいいと言ってくれて気が楽になった。
その日の晩、人生で最高に美味しい晩御飯を食べて借家でお風呂に入り、オリバーから教えてもらい雑貨屋で購入した効能は野営時に飲ませてもらった物よりかなり劣るけど気持ちが落ち着くハーブティーを飲んでいたらオリバーが床に就く気配を感じた。
冬の間、同衾はしなかったが一晩中語り明かして同じ部屋で寝る事が多かった。思わず簡易ベッドをオリバーの横に持って行き、剣タコで手の平の皮の固いオリバーの手を握り眠りについた。その日から悪夢を見る事は無かった。
数日後にフキノトウクエストも終えかなりの臨時収入があったので思い切って彼にワンルームで同棲しようと提案をした。
心臓が口から飛び出るのではないかと言うくらい緊張したが彼は了承した、怖くないのか?と聞かれたので思い切って抱きたければ抱けばいいよと答えた、オリバーの性格からして私を抱けば絶対に責任を取ってくれると打算ありきの発言だ。もう私は必死なのかもしれない。
「俺はムードを大切にしたいしな」
(ムードさえあれば最後までいけるのかな?)
「子供が無理しちゃって」
(あなたはどんなムードが好き?)
こうかはばつぐんだ!
あー疲れた。つり橋効果を狙ってみました。つり橋効果って不安や恐怖で心臓がドキドキしている状態を、一緒にいる人への「恋愛感情(恋のドキドキ)」だと脳が勘違いしてしまう心理現象らしいですね。
今回あえてリリィさんの心の声は「彼」でいい所をなるべくすべて「オリバー」にしました。それだけリリィがオリバーの事ばかり考えていると言う表現に挑戦してみたかったのです。しつこすぎかもしれませんね。
オリバー君あれがストライキを起こさないか労使交渉が早期妥結をしていたら冬の間にヤル事やってましたよ。




