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婚約者といちゃつく奴を注意したら決闘となり敗北~すべてを失った男の物語  作者: 松ボックリ


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春の訪れ3 リリィさんはお肉が大好き&リリィの過去

やっちまったぜ、8割書けていたのに消してしまった。復元方法とかないよね。しょんぼりだよ。

 野営中に食べ過ぎるのはよくないとは言ったものの目の前に新鮮な猪肉があるのだ、我慢しろというのは酷だ。と言うかリリィは黙ってレバーとハツを切り分けている。意外と肉食系女子なのだろうか。しかし内臓系は足が速いからすぐ食べるか処理するかの2択である。それなら食べた方がいいだろう。


 「食べれるだけ食べて残ったら、しっっっかたないけど、埋めるしか無いわね」


 仕方ないの言い方が心の奥底から残念そうに言っているのが分かる。お肉好きなんだね。勝手に美人は草しか食べないと思っていたよ。


 「こんな事があろうかと塩は用意してある、味気ないかもしれないけど無いよりマシだと思うよ」


 リリィは必死に背嚢を漁っている、塩はあると言ったのが聞こえなかったのだろうか?


 「じゃーん!こんな事もあろうかと常にコショウを持っていたのよ!高かったけど使うなら今でしょ!」


 うお、眩しい、美人の満面の笑顔ってこんなに眩しいんだ。思わずリリィの笑顔に見とれてしまう。


 「コショウに見とれてないで早く塩は振りかけてよ、あなた今日は頑張ったし少しはコショウをわけてもいいわよ」


 少しなんだ・・・それで俺の塩は全部使わせる気なんだね・・・仕方ないねコショウは高価だし。


 宴もたけなわとは言うが楽しい時間はすぐに過ぎる。残った内臓の処理や片付けが終わり焚火を見つめているとリリィはスキットルから蒸留酒を出しお湯割りでチビチビやっている。


 俺は基本的に野営時にはお酒は飲まない、元からそんなに強くないのもあるが何かあった時に対応が遅れると思うからだ、だからと言って他人に断酒を強要しない、ましてやこの程度の森での一泊二日のピクニックに毛が生えた程度の野営だ。俺が徹夜で見張りをしてもいい、帰った後のイノシシの頬肉の赤ワイン煮込みの肉の大きさが露骨に俺の方が大きくなるだけだ。


 「ねぇ、答えたくなければ答えなくていいけど、あなた何で冒険者になったの?見た目は厳ついけど常に髭を剃ってるし清潔にも異常に気を付けているし、教養だってあると思うわ、騎士の強さはよくわからないけど素人目で見てもかなり強いと思うの」


 冬が空けて久しぶりに美味しい物を食べてお酒が入り大自然の中で解放感があるのだろう、リリィが冬の間でも自然と避けていたお互いの過去の話を振って来た。多分そんなに深く俺の過去を知りたいわけではないのだろう、語りたいのかもしれない。妹が「女が自分から話を振ってきたときは語りたい時よ、自分3割、相手7割で話を聞いてあげて」と言っていた。ここは偉大な妹の言葉を信じてみるか。


 「そうだな、成績はそんなに悪くは無かった、卒業後の進路もほぼ決まっていた。でもやっかいな相手と揉めてね、それで色々あって国外追放さ」


 簡潔に述べたつもりだ、嘘も言ってない。王様の庇護下にあるギフト持ちと決闘をして負けたのだ。多分言い方は悪いが婚約者も寝取られたのだろう。


 「意外ね、あなた凄い慎重なのに高位貴族と揉めたんだ」


 相手7割、自分3割だったな。簡潔に答えてリリィが話しやすい空気にしよう。


 「その事件で慎重さを覚えたんだよ。無理に答えなくていいけど、リリィはどうして冒険者に?」


 「そうね、私の家は結構ギリギリな貴族なのよ、5位のね。それで私は学院で落伍者扱い。それだけでも家族のお荷物よ、でも私って美人じゃない?上位貴族のデブ親父に愛人になれって迫られたのよ。やんわり断ったけどダメだったの、断った事自体がプライドを傷つけたみたいでね、後で謝罪をして愛人になる事を了承しても許してくれなかったわ、私、23歳っていったじゃない、結構行き遅れだと思うの、そんな年齢になっても、就職先も同年代の男性とのお見合いも全部邪魔されたわ、決定的だったのは入学したばかりの弟が退学させられそうになった事・・・」


 リリィの酔いが回ってきて最後の方は涙声になっている。


 「12歳になったばかりの可愛い弟が10歳以上年の離れた私に”お姉ちゃん、一緒に冒険者にでもなろうよ”って言うのよ! あの子の目は泣きはらして真っ赤だったわ! ちょっと前まで転んだら泣いて、怖い夢を見たら泣きながら私のベッドに入って来たあの子が泣いたのを必死に隠して茨の道に進むっていうの、私のせいで!」


 もう絶叫に近い。お湯で割る事無くスキットルから直接蒸留酒を煽っている。


 「それでね、私、死んだ事にしたの。近い年の身寄りの無い娼婦の死体を探し出してね、私の服を着せて化粧をさせて遺書を書いて首を吊らせたの、最低の行為だって分かってやった、あの子の将来の為と思えば何でもやれた、それで両親があの子はあなたへ迷惑をかけた事を悔いて自決しましたって伝えてやっと溜飲が下がったの、そして私は万が一にでも見つかると大変だから家を出て冒険者として半年頑張ったけど路銀が尽きて限界だった時にあなたに出会った」


 最後は叫び疲れたのかだんだんと声のトーンが低くなる。


 「でもね、毎晩あの娼婦が夢に出て来るの! 死んでも私の尊厳を汚すのか! 貴族がそんなに偉いのか!って!私が化粧をした顔で言ってくるのよ! 何度も、何度も何度も何度も何度も謝っているけど許してくれない、最後は出来る限りの謝意を込めて埋葬したわ。それでも許してくれないの、そうよね、私だって同じことされたら許さないと思う、じゃあどうしろって言うの?3位の貴族様はそんなに偉いの?5位貴族の出来損ない魔法使いの私になら何してもいいって言うの!」


 もはや慟哭だ、俺は黙って心を落ち着かせて安眠作用があるとされるハーブ茶を用意する。我が家で魔獣退治の前日に緊張して眠れない新米兵士に飲ませる為に薬師ギルドに頼んで特別に作らせた物だと父から聞いている。野営時は一応持っておくようにと教えられた、狂乱状態になった仲間に飲ませる事もあるそうだ。


 リリィは叫び疲れて息切れをしている。黙ってハーブ茶を渡す。


 「ありがと、ごめんね、あなたに言っても仕方ない事って分かってたのに止められなかった。私の方が年上なのに情けないね」


 「気にするな、もう半年近く同じ釜の飯を食った仲間じゃないか、話を聞く程度しかできない自分が情けないよ、リリィはよくやった、つらかったな、今日はそれを飲んでゆっくり寝よう、気分が落ち着くハーブティさ」


 戦いで心がすり減った帰還兵には頑張ってというセリフは厳禁だと授業で習った、君はもう大丈夫だ、今は休む時みたいな事を言うのが正しいらしい。


 「そうね・・・・そうさせて、もらう・・・」


 我が家特性のハーブティの効き目凄いな、最後まで話終わる前に寝たぞ。薬師か、いつか時間がある時に薬師の事を学んでみるか。


 しかし”3位の貴族がそんなに偉いのか”・・・か。俺も元3位の貴族の嫡男だった、辺境を守るために戦力だけ見れば3位と言えど規模と影響力は1位貴族に近いと聞いている。我が国の高位貴族はそこまで腐ってないと言えるほど世間知らずではない、今、久しぶりに追放されて悔しいと思いだした、もし俺が当主となった暁には腐った連中を一掃、いや馬鹿な妄想はやめよう、実際になれたとしてもそんな事出来るわけが無い。


 パチパチと燃える薪を見ながら雑念を捨ててせめてリリィが安心して眠れるように徹夜で見張りを勤めれるように気合を入れなおした。

かなり重い話でしたね、主人公の境遇が常に一番重いと言うわけではないですね。無理な事は無理って事です。一個人では強大な権力には逆らえない。

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