閑話 真冬の出来事 リリィとの接触
主人公は前々から冬の間に普段覚えられないスキルを覚えようと画策していました。リリィの詠唱短縮は永遠にできません。作者である私が今決めた。乗りと勢いで書き上げています。
リリィの居住区域のドアと叩く、返事が無い屍のようだ。今度は大声出してちょっと力を入れて叩く。
「おーい、リリィさーん、朝ですよー、お話しましょ」ドン、ドン!ドンっ!!
がさごそ音が聞こえ、気だるそうな返事が返ってくる。
「うるさい、この真冬の間やる事なんてないでしょ?昨日も遅くまで詠唱短縮できないか練習してたのだけど」
悪い事したな、昼に声をかけるべきだったか。いいか、せっかく起きたのだ要件を伝えよう。
「すまんな、よければ魔法を教えてもらいたい、一応才能はあるみたいだし、使えるようなら使ってみたい」
控えめに言っているが嘘である、本当はものすごく使いたい、趣味で読んでいる異世界転生小説では主人公が様々な魔法を使って活躍をしている、幼いころから魔法に憧れている。無駄に近接戦闘の才能があったせいで魔法は使えないと勝手に思い込んでいた。
ドアが開き、開口一番彼女は承諾してくれた。
「濃い目のコーヒーと朝食を用意してくれるなら教えるわ」
俺はそそくさとコーヒーと食事の準備をする、コーヒーと言うのは南の方の国で採れる植物を加工して煮出した汁なのだがとても高価だ、特に真冬のこの時期だと元貴族の俺でもビックリするほど値段だ。当然代用品を使う、食べれる野草の根っこを乾燥させ焙煎した物を煮込んだ汁を布で濾して用意する。後ろから「根っこコーヒーね」と残念そうな声が聞こえる。
よく異世界転生小説だと何故か貴族は常に豪華な食事で庶民は栄養価ギリギリの貧相な食事をとっている描写がされているがそんな事は無い、少なくとも冬は庶民も貴族も似たような物を食べている。食料の保存技術が無いのだ。
小説の主人公が元いた世界では常に食物だけを冷やしたり時には凍らせたりできる魔法の箱が出て来る事が多い、だが現実はそう甘くはない、庶民も貴族も常温でも保存性の高い豆類や野菜や塩漬けの肉や石みたいに固いパンを食す。調理も簡単だ、豆と野菜と少量の塩漬け肉を刻んで煮込むだけ、味付けは塩漬け肉の塩だけだ。スープで石パンをふやかしながら食べるのだ。
食後にリリィ先生の魔法講座が始まった。俺は疑問に思う事を聞いてみた。
「意外とすんなり教えてくれるんだな、俺が知っている連中は初級以上は秘匿していたぞ」
父上が「奴らは必要以上に魔法が普及すると自分たちの地位が脅かされるからだ」と言っていた記憶がある。実際に我が家に専属の高位魔法使いは存在せず、魔獣討伐時も魔法使いの団体に報酬を渡して派遣してもらっていた。
「もう、私は野良魔法使いだし、それに他人に教える事で何か新しい発見もあるかもしれないじゃない」とリリィが話しながら後ろから抱き着いて俺のお腹に両手を当ててきた。
「この体勢が魔力循環の効率がいいのよ、集中しt・・・」
話が途中で途切れる。
「どうかしたか?変な事あったか?」
「ねぇ、自分で言うのも少し恥ずかしいのだけど、私ってそこそこ美人よね?」
「そうだね。目つきと性格は鋭いがかなりの美人だと思う」
正直少し緊張している、リリィの使っている香水や背中に当たる柔らかい触感、肌に触れる彼女の綺麗な銀髪、魔法を教わらずともそれだけで大金を払う価値があるのかもしれない。
「そう、ありがと。一言多く無ければうれしかったわ、前に男子とこの訓練したらみんな前かがみになって訓練にならなかったのよ?」
そういう事か、恥ずかしくて誰にも言ってないが、以前に婚約者に”あなたとの会話の時間は別に週1でとってあるでしょ?”とまるで義務で会ってあげていると言われてかなりショックだったのか俺の息子君がストライキを開始したのだ。
「あ、いや、当然緊張しているがそこはもう子供じゃないんだ、魔法を覚える事に集中するよ」
そう、と彼女は言いながら訓練を開始した。
数時間後に訓練が終わり色々な事が分かった。俺には水と火の才能があり、かなりの威力の魔法を使えるだろうとの事。だろうと言うのは魔法を扱う技量があったのだが魔力の総量が絶望的に低くて生活魔法一発撃つと5分の休憩が必要だという事だ。
「ま、まぁいいじゃない?コップ一杯の水を出したら5分休憩してまたコップ一杯の水だせるんだし、砂漠で渇きで死ぬ確率は減るんじゃない?薪に火をつけるくらいはできるわね、失敗したら5分後にやり直しだけど・・フフッ」
最後笑ってただろ?
人間なんでもできる奴なんていないんですよ、あえて失敗したエピソードは今のところ書く気はないですが、主人公ペアは対人訓練は行っていますが狩猟や対モンスターの戦闘は未熟です。
普通に逃げられてクエスト失敗も結構多いです。ニラと水仙を間違えて腹を下す的な失敗も経験して野草採取のクエストも避けており、野営時も怪しい植物やキノコには手を出しません。作中の根っこコーヒーは乾燥したタンポポっぽい植物の根を購入して貯蔵しています。




