マルコ、アヤノ家で圧迫面接を受ける
結婚式を目前に控えたある日、マルコがアヤノ家を訪れます。
用件は今後の支援体制の最終確認……のはずが、待っていたのは長年溜め込んだ想いをぶつけてくるヘレナでした。
前回までとは少し趣向を変えて、少し肩の力を抜いてお楽しみください。
オリバーとリリィの結婚式を目前に控えたある日、今後アヤノ家とロッシ家がどのような形でショーベリ家を支援するかの最終確認のため、マルコはアヤノ家を訪れた。互いに多忙の為に予定が詰まっており、ようやく都合が合ったのがこのタイミングだった。
「あら、ロッシさんごめんなさいね、主人は急いで向かっているのだけどもう少し程かかるそうなの」
「いえ、急に呼び出したのは私ですから、ご迷惑おかけします」
「いいえ、あなたが急にという事はよほどの事なんでしょ?仕方ないですわ」
(急に来た私が思うのも悪いがこういう時はお茶でも出すのが習慣のはず、ヘレナさんならその程度知っている、やはりまだオリビアの事を許してくれないか)
「ああ、そういえばロッシさん、オリビアさんはお元気かしら?婚約先を聞いた時私びっくりしたのですよ、まさかハジメと親戚になるなんてねぇ」
(やっぱりその話題で来るか!アヤノの女はなんでいつもファイテイングポーズを崩さないんだ、しかし我が娘オリビアの為だ、父として必ずこの難局を乗り越えてオリビアを守って見せる!)
「ええ、まぁ。向こうも喜んでくれていますしいい縁談かと、我が家も全面バックアップします。必ずあの領を豊かにしてみますよ」
「そう、オリビアさんは幸せ者ね、婚約者のアンテロ君のお姉さんのリリィさんから姿絵を見せてもらったの、とってもハンサム、きっとショーベリ家で行われる結婚式では美男美女がそろって華やかになるでしょうね」
(何が言いたいんだ?もうイワオから通じて納得しているんじゃないのか?もうファイティングポーズどころかジャブ打ってきてるぞ)
「うちは、アヤノ領でハジメとリリィさんの結婚式を見られなくて残念だわ、当然ショーベリ家の結婚式には参加するけど親族席に座れないの、母親としてとても惨めね」
「あ、はい。その件に関しましてはうちのオリビアの不徳の致すところで.....」
(もう、正面から殴り合う気マンマンじゃないか!これだからアヤノの女は!まだイワオの方が竹を割ったような性格で話しやすいのに、いや考えろ。どう答えれば傷は浅く済むんだ?)
「流石、ロッシ家よね、私がちょっと動いた所で手も足も出ない所でうまい事するんだから」
(そんな事無い、イワオに許可をとっていざ結婚相手を探そうと思ったら国内も海外もめぼしい所は全部ヘレナさんの息がかかってて相手にもされなかったよ、ようやく見つけた相手もカスだったくらいだ)
「そういえば、国内のいい鉱山を持っている家とお見合いしたそうね、あの時は大変だったそうね...」
「ヘレナさん、知っててあえてあの家とのお見合いの妨害はしなかったと、おかげでオリビアがあのボンクラ息子の言葉でどれだけ傷ついたと.....」
「どれだけ傷ついた?!何言っているの!私のハジメはあなたの娘の浅慮のせいですべてを捨てたのよ!冒険者になって毒蛇に噛まれて死にかけた事もあったのよ!リリィさんが機転を利かせて高位冒険者の元に飛んで行って命がけの着地をして財産のほとんどを取られてやっと治癒できたのよ!ちょっと嫌みを言われたくらいで傷ついたなんてよく言えたわね!あの子は何度も死にかけているの!それをあなたの娘はちょっと療養してあんないい子の所にお嫁に行ってロッシ家がバックアップしてさぞいい生活をするんでしょうね!私たちはハジメの結婚式を親族席から見る事も許されないし、アヤノ家で披露宴もできないのよ!」
ヘレナの目は真っ赤だ、マルコはどう答えればもうわからなくなっている。
「いじわるを言ってごめんなさいね、主人からは国の為と言われて頭を下げられたわ、普段はそんな事をしないのに真剣なまなざしで私に堪えてくれって頭を下げるの、絶対許せないけど何とか割り切るわ、でも条件がある。ロッシ家や王国内では披露宴などの式典を行わない事、あくまでショーベリ家でのみの式だけにして。私たちは大々的にこっちで息子の事を祝えないのよ、そのくらいはしてもらわないと我慢できない」
「わかりました、必ずその約束は守ります」
いきなり部屋の扉が開きルイが入室して来る。
「お母さま、声が大きいです。廊下まで響いていましたよ、でも私も同じ気持ち、兄の晴れ姿を親族席でみられないのも屈辱だし、私の結婚式も親族席からみてもらえないのはもっと屈辱」
「ルイ嬢、すまない。結婚の事だがマッテオの事は違う人間としてみてやって欲しい、あいつはお人よし過ぎるところもあるけど基本善人なんだ」
「マッテオ君に関しては好ましいと思っていますよ、勉強を教えれば教えるほど成績もあがりますし私に気に入られようと努力をしているのは好感を持っています」
「そうか、それならよかった、あいつなりに頑張っているんだオリビアの事は抜きに見てやって欲しい」
「私はルイがいいなら文句は言わないわ、マッテオ君は私の前では目も合わせないほど怖がっているけど時期になれるでしょ」
(それはヘレナさんが殺気を放っているからではないのか?)
「マッテオ君は頑張っているので運動の強度を上げようと思っているのですよ」
「いや、ルイ嬢。それはやめて欲しい、ただでさえマッテオはアヤノ式トレーニングの後は家では死にかけているんだこれ以上の運動は勉学に差支えがある」
「私もクリアしていますよ、それくらいクリアしてもらわないとアヤノではやっていけないです」
(お前らの血筋がおかしいんだよ、マッテオは人類なんだよ一緒にしないで欲しい)
「体を壊したら元も子も無いのは分かるよね?もし無理だと判断したらこちらからイワオに言わせてもらう、あの子は文官肌なんだあまり無茶はさせないでくれ」
「無理だと判断したらこっちで止めますので安心してください、さっきも言いましたけど私はマッテオ君の事好きですよ?怪我しない程度にはちゃんと見ています」
「そうか、頼むよ。マッテオも家ではルイ嬢の話が多くなってきている、幸せならいいんだ」
(へぇ、あのルイが好きだというくらいには頑張っているんだ、兄離れできないかと心配してたけど少し安心したわ、ロッシ家が約束を守ってくれるなら優しくしてあげてもいいわね)
しばらくしてイワオが到着した、その頃にはマルコはヘロヘロになっていたのであった。
その時の話し合いで決まった事は蛮族に荒らされた土地の開墾はアヤノ兵が担当して、そこにブドウ畑を作りそのブドウをワインに加工する工場建設やブドウ畑の管理指導やワイン造りの指導スタッフはロッシ家お抱えの商社に任せるという内容であった。
土地の開墾にアヤノ兵を使う事に関しては残存する蛮族が再び攻めてきたときの為の塹壕を掘る訓練と称する事で事前協議で決めていた通りに訓練費用はすべて北の国の資金で行われる事になる。
そしてショーベリ産ワインが完成すれば輸出はすべてロッシ家お抱えの商社を通す事になっている、アヤノ家ではいいようにサンドバックになったがタダでは転ばないマルコであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
積年の想いをぶつけるヘレナ、防戦一方のマルコ、そして地味に成長を見せるルイとマッテオの関係。いかがでしたでしょうか。
そして最後まで抜け目のないマルコの商魂も、健在のようです。
次回は蛮族の将軍を陰で支え続けたあの人物、妻の過去に迫ります。彼女がなぜ、どうやってあの場所に辿り着いたのか。ぜひお楽しみに。
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次話もお楽しみに。




