リリィとオリビアのファーストコンタクト
蛮族との戦いに一区切りがついたある日、オリバーとリリィはショーベリ家へ里帰りをすることになります。
久しぶりの家族との再会、そして結婚式に向けた準備——穏やかな時間になるはずでした。しかし、リリィにはまだ知らされていない、ある大きな秘密がありました。
王国では蛮族関連があらかた片付き後は残務処理だけとなった、蛮族の将軍を拿捕に大きく貢献したアヤノ領の騎士オリバーとショーベリ領を凄まじい魔法の力で解放の一助になり正式にショーベリの名前を取り戻し貴族に復帰をしたリリィ、本名リンネア・ショーベリの結婚は解放されたばかりでその処理が忙しいのとこの戦争で亡くなったショーベリ領民の喪が明けるのを待ち収穫祭に合わせて来年の秋に開催する事が決定した。
リリィはもう戦勝パレードも貴族復帰の手続きや地元の新聞への対応も終わりアヤノ領でグライダーを使い各地方への連絡係として忙しく働いている、因みにオリバーは剛力を使いインフラ整備に大活躍だ。ある日二人はイワオに呼び出される。
「今年の冬が来る前に休暇をやるから二人でリリィ嬢の実家に挨拶と来年の結婚式についての話し合いをしてくるといい、費用はワシのポケットマネーから出すから好きにしていいぞ」
「いいのですか?お義父さま?そこまでしていただくのは心苦しいのですが....」
「よいよい、何せ蛮族の将軍を捕えたアヤノの騎士である英雄オリバーとショーベリ領解放の女神と歌われているリンネア嬢の結婚式だ、盛大にせねばな。それにハジメはこっちでは死亡扱いだ、簡単な式典はするが大々的には祝えない、その分そっちで祝ってやって欲しい」
「ありがとうございます、両親も喜びます。ちょうど今は弟も秋休みで家にいるはずです、準備が整い次第出発させていただきます」
「うむ、本当は1週間ほど里帰りさせてやりたいがこっちも冬前に終わらせたいことが多い、申し訳ないがとりあえずは2泊程度で帰ってきて欲しい」
「はい、わかりました。では行ってまいります」
リリィ専用のジェット噴射機能付きグライダーでショーベリ家に向かっている、徒歩や馬車を使えばかなりの時間がかかるがこれだと数時間だ。
(そろそろ、リリィにもアンテロ君の婚約者の話をしなければならないな、秋休みでアンテロ君もいる事だしちょうどいいタイミングかもな、俺も初めて聞いた時は驚きと複雑な気持ちで何とも言えない感じだったが今となっては割り切った、一応到着後に話をしよう。空で暴走されたら困るし)
「リリィ、実家についたらちょっと大事な話があるんだ」
「なーに?ここでは言えないの?」
「リリィの両親もいるところで話をしたいんだ」
「ふーん、わかったよ~」
(なんだろ?サプライズかな?少し楽しみね)
サプライズには違いないがアンテロを溺愛するリリィにとっては爆弾級にサプライズがまっているのである。
こうして、無事にショーベリ家に到着して両親に挨拶をすませ、オリバーが大切な話があると切り出した。
「あら?ごめんなさいね、今は秋休みを利用してオリビアさんは来ていてアンテロといつもの丘でデートをしているのよ」
リリィはアンテロがオリビアと言う名の女性と婚約している事は知っている、オリビアは別に珍しい名前ではない、まさかあの女だとは夢にも思っていないのだが。ショーベリ領解放時はお祝いムード一色だったのと報道陣がいたのでリリィが暴走しないように正体は伏せていたがとうとう話す日がきた。
「リリィ、俺も最近知ってかなり驚いているのだがアンテロ君の婚約した相手は....」
オリバーとリリィの両親の説明が終わる間もなく事情を知ったリリィは言葉にならない怒声を上げて家を飛びだってしまった。
「やばい、今のリリィは風の杖さえあれば俺より早く飛んで移動できる、アンテロ君の行先を教えてください、説得に行きます!」
その頃アンテロはそこそこの長い交流の末に普通にオリビアと会話できるように成長していた。オリビアもアンテロが自分に純粋な好意を向けている事に気が付いて仲睦まじいカップルとして会話を楽しんでいた。それでもアンテロはかなりの美少年だ、心配になるのだろう会うたびに何度も似たような質問をしてしまう。
「ねぇアンテロ君、本当に私でいいの?アンテロ君がかっこいいし学院でモテモテでしょ?私はあなたの好意は嬉しく思ってるけど....」
「もちろんだよオリビアさん、最高の婚約者だとおもって....」
遠くかっら見覚えのある人が空を飛んでくる、あまりのスピードに驚いてしまうが間違いなく姉だとアンテロが気が付く。そして怒りの表情を隠しもしないリリィが着陸する。
「ね、姉さん、どうしたの?そんなに急いで?あ、そうだ紹介するねこの人はオリビアさん、僕の.....
「今さっき聞いたわよ、オリバーの元婚約者のオリビアよね?」
リリィはすでに臨戦態勢でオリビアの事は呼び捨てである。アンテロがあっけに取られている間にオリビアの胸倉をつかんでまくし立てる。
「ねぇあなた、どの面下げてオリバーの近くに寄ってきているの?この話が上がった時点で断るのが普通でしょ?何で私の大事なアンテロを誑かしているの?ふざけるなよ、もしかして自分が何をしたのかわかってない?ショーベリごときの小貴族ならどうでもできると思いあがってる?アンテロとの年の差とか分かってるよね?蛮族が片付いたから今のアンテロならお前みたいな傷ありなんかと結婚しなくてもより取り見取りなのよ?」
リリィは立ったままオリビアの服を使い首に絞め技をかけているのでオリビアは返事もできない、このままでは気絶するだろう。
「何か答えろよ!あばずれが!」
その時リリィの体は宙を舞い地面に叩きつけられた。
「何をやっている!例え姉でも許されるラインを超えているぞ!僕は徒手格闘の授業を受けている、これ以上オリビアさんを傷つけるなら姉でも絶対に許さない!」
リリィは初めての弟の反抗に驚いてパニックになっている。
「何で?アンテロ?私はあなたの為を思って、あ、そっかこの女が何をやったのか知らないのね、この女は私のオリバーを裏切って他の男になびく尻軽女なのよ、あのオリバーがこの女の話をするときには泣いていたんだよ?悪い事言わないから別れ...」
「うるさい!聞いているし知っているよ!それでも僕はオリビアさんが好きなんだ、ここまで侮辱したんだ、もうお姉ちゃんでも絶対に許さない!次期ショーベリ領主として命ずる!この地に足を踏み入れる事は許さない、今すぐ出ていけ!」
リリィはアンテロの言っている意味が理解できない、言葉は分かるけど意味が理解できない。リリィの目には涙がたまっていく。
「何で?どうしてそんな事。私はあなたの事を思って、今までだってずっとあなたのために家を捨てて冒険者になって、なんでそんな事」
その時オリバーが追いついた。
「リリィ、やめるんだ!俺はもう納得している!落ち着いてくれ、頼む話を聞いてくれ!」
アンテロに言われた事がショックだったのだろう、リリィは放心状態のままオリバーに抱き着いてしまう。
「リリィ、すまない。もう少し早く順を追って説明するべきだった、アンテロ君すまないがオリビアを見てやってくれ、すぐに君の両親も駆けつける何かあったら病院に連れて行こう」
「リリィ落ち着いて聞いてくれ、オリビアはギフト持ちの権能の心を乱されただけなんだ、やっていた事も学院のカフェテリアでちょっと長い間雑談をしていた程度だ、決して悪い奴じゃない。それは10年以上付き合いがあった俺が保証する、だから認めてやってくれ、リリィも異世界転生系の研究をやっていたならわかるだろ?あいつらの権能は強い、何の訓練も受けていないオリビアじゃどうしようもなかっただけなんだよ」
リリィは少し落ち着きを取り戻してきた。
「オリバーは嫌じゃないの?元婚約者が親戚になるんだよ?死んだ事にされて実家から籍を抹消されたんだよ?」
「おかげでリリィに会えた、俺は今最高に幸せだよ、だからもう気にしていない、だから落ち着いて、そしてアンテロ君達を認めてやってくれ」
「そう、オリバーがそういうなら」
この時ショーベリ夫妻も到着したのでリリィを任せる事にした、そして久しぶりにオリビアと会話をする。
「アンテロ君、オリビア、いやオリビアさんは大丈夫か?」
「はい、大丈夫そうです、落ち着いたら一応病院に行こうかと」
「アンテロ君、そしてハジメ....さん大丈夫よ、それにお姉さんの事も怒ってないから、本来ならこれくらい言われても仕方のない事をしたのもわかっているの」
「オリバーさん、ここは僕たちしかいません昔のように話しても気にしないので一度話をしてはどうでしょう?」
(しばらく会わないうちにアンテロ君は大人になったな、そうだな。コウタとは違う意味で決着をつけないとな)
「その、オリビア、大丈夫か?リリィの奴はああ見えて学院時代は徒手格闘の講義は全部うけたらしいから跡が残る怪我がないといいのだが」
「.....ハジメは優しいのね、あんな事言った私にまだ優しい」
「色々あったけど、今はリリィと一緒に慣れて幸せだしな」
「そう、ずっとあなたに謝りたかった、私の浅はかな考えで人生を台無しにさせてごめんなさい、傷つけるような事を言ってごめんなさい、いっぱい謝りたいのに何から謝ればいいかわからなくて....」
「いや、リリィと深い仲になって愛して初めて分かったんだ、俺は本当にオリビアの事を見ていなかった、ただオリビアとロッシ夫妻にいい婚約者ねって褒められたいだけでいい婚約者の振りをしていたんだ、君の本質を見ていなかった、きっとあのまま結婚していても本当に幸せになれなかったと思う」
「そんなこと,,,,,」
「そんな事あるさ、現に俺は今はリリィと一緒になれて幸せだ、リリィの両親に聞いた話と今のアンテロ君の行動も見て分かったよ、オリビアとアンテロ君はお似合いだよ、きっと幸せになれる、終わりよければすべてよしって事だよ、本音を言うと最初は親戚になるって聞いてびっくりしたけどいい親戚付き合いをして俺達でショーベリ領をよくしていこうぜ、王国のインフラがある程度落ち着いたら俺もこっちに来て手伝うからさ」
その晩ショーベリ家で話し合いの場が持たれた、リリィはかなり両親に叱責されたのだろう、少し元気が無さそうだ。
リリィがオリビアに謝罪してオリビアがそれを受け入れ話し合いは終了した。その後オリビアがリリィを呼び出し人気のない所で二人で会話をしている。
「リンネアさん、リリィさんどちらでお呼びすればいいでしょうか?」
「リリィでいいです、あだ名みたいなものにしようと思いますので」
「リリィさん、私は誠実にアンテロ君とお付き合いしたいと思っています、過去のような過ちは絶対に繰り返しません、すぐに割り切るのは難しいかもしれませんがどうかお付き合いをお許しください」
「うん、もういいの。私も熱くなり過ぎた、ギフト持ちの事を研究していたのに冷静さを欠いてしまったの、それにアンテロとの年齢差だってよく考えたら私とオリバーだって似たような年齢差よ自分の事を棚に上げて今思うと本当に恥ずかしい、暴力まで振るって酷い事をしたのは私よ、ごめんなさいね」
「ねえ、リリィさん。よかったら冒険者時代のオリバーの事聞かせてもらえる?代わりに私はハジメの事を教えるから」
「本当?ハジメ時代の事は気になる、どんな子供だったの?時々思うんだけどオリバーって意外とスケコマシな部分あると思うのよ、どんなエスコートだったの?」
二人はその晩は深夜までお互いの知っているオリバーとハジメの話で盛り上がった、最初はぎこちなかったが時間がたつにつれて自然に会話をできる仲になっていった。
「あ、そうだ、アンテロ君にお願いしてリリィさんのショーベリ領出禁は撤回してもらうから」
「お願い、出禁だとこっちで結婚式あげれないから」
こうして夜が明けるまで話し込む二人であった。
次回は1年ほど時間を飛ばしてオリバーとリリィの結婚式のお話になります。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
弟を溺愛するリリィに突きつけられた、まさかの事実。積年の想いが爆発する暴走、そしてそれを止めた弟アンテロの成長した姿、いかがでしたでしょうか。
オリバーとオリビア、二人の間にもようやく本当の意味での区切りがついたようです。そしてリリィとオリビアも、長い夜を経て少しずつ心を通わせ始めています。
すべてが丸く収まったところで、次回はいよいよ一年の時を飛ばし、オリバーとリリィの結婚式です。ぜひお楽しみに。
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次話もお楽しみに。




