再戦、コウタ そして知らざる報い
長きにわたる因縁に、ついに決着がつきます。
かつて敗北し、すべてを失うきっかけとなった相手、コウタとの再戦。オリバーはこの一戦に何を賭け、何を選ぶのか。
そして、その先で待っているものとは。
...おい.....おい、起きろ。
コウタは夜中にいきなり起こされる。夜中にいきなり討伐任務かと思い気が重くなる。
「何もしゃべるな、一応消音魔法をかけてあるがここの護衛は一流だ、王が外遊で人数が少なくなっている今しか逃げるチャンスが無い、詳しい話は移動しながら話す。とりあえず服を着てついてこい」
コウタは訳も分からず着替えて案内人の後を追いかける、この男の「逃げるチャンス」の一言の誘惑に負けたのだ。城の外にでてようやく謎の男が説明をしだす。
「今からお前にはある人物と木刀を使っての勝負をしてもらう、かなり強い人物だがその人を殺してはならない、寸止めしろ。勝っても負けてもジパンという遠い島国に行く船を手配してあるからそれに乗って向こうで好きにしろ」
「よくわからないがお前たちにメリットがあるのか?」
「一言で言うと王とは考えが違う人間もいるという事だけだ、言われたとおりにしたほうがいいぞ。損は無い話だろ?」
完全に嘘である。コウタに本気出してもらいつつ万が一にでもオリバーを殺してしまわないための保険である。
「まぁ、損は無いな。ようはお前らは王の近くに強い俺がいてもらうのが嫌なわけだ」
「ざっくりと言うとそういうわけだ」
「ありがてぇ、とりあえず今から戦う奴は人物と言うからには人間だよな?それなら楽勝だ」
そうしてコウタにも見覚えがある場所に連れてこられた。
「ここは学院の訓練場?ここで戦うのか?」
「そうだ、お前を王の元から逃す前にどうしても戦いたいという人がいる、当然向こうも木刀だ、もう一度言う、間違っても殺すなよ、例えお前が強くてもお前を殺す手段は無数にある、さっきお前が寝ている時に接近できたのがいい証拠だろ?」
「わーかったよ、約束は守る、さっさと相手を用意してくれ、俺は使いやすい木刀を取って来るからよ」
コウタは訓練場の木刀置き場から自分にあう木刀を手にとる。
そして相手が扉から出てきた。オリバー、本名ハジメである。今日は髪を茶髪から黒髪に変えてきている。ハジメとして決着をつけたいのだろう。
「あれー?お前って確かオリビアちゃんの婚約者君じゃ~ん、俺に負けたの悔しかったの?あの時にオリビアちゃんの言葉覚えているか?なーんだ、騎士過程なのに文系過程の人に負けちゃうのねって言ってたぞ」
オリビアは言ったつもりはないが口に出ていたのかもしれない。
「安心しろ、オリビアはもう他の人と婚約をしたらしいぞ、俺にとってはちょっと複雑な相手だけどな」
「ははっはははは、お前捨てられたのかよ、笑える、それで俺に仕返しってか?ちょっと修業して強くなって勘違いしちゃったのかな?お前とは一度やった、人間相手なら俺は負けない、人間としての格の違いを見せてやるよ」
「いいぞ、こっちも準備万全だ、あの時と違って油断もしないし本気でいかせてもらう、悪く思うなよ」
「ばーか、寝言は寝て言え、殺すなとは言われているけど気絶くらいはいいだろ?寝るのを助けてやるよ!」
コウタが剣技の権能を使ってオリバーに斬りかかるが軽く盾で受けられてしまう。
「お前、魔獣とばかり戦わされて対人は知らないだろ?本気になった俺の戦い方を見せてやるよ」
コウタが何度剣技の権能を発動させて斬りかかっても盾にはじかれてしまう。
「この、隠れてばっかりで何もできてねーじゃないか、こっちも本気出すぜ!」
コウタは剛力の権能も使い始める、これで終わったと思った、邪魔な盾ごと吹き飛ばして軽く腕に木刀を当てて骨折でもさせてやろうと思ったがコウタの剣を受けた盾は微動だにしない。
「何で?俺の力は人間に受けれるはずないのに....」
当然、コウタは知らない、オリバーが剛力の権能に近い能力をジパンで手に入れている事を。
「何の対策も無しにお前に挑むとでも?」
オリバーは急に盾を斜めにずらす、ずっと盾を全力で押さえつけていたコウタは前に体勢崩してたたらを踏む、オリバーはその隙を見逃さずコウタの腹に蹴りをお見舞いした。
(ここで剣を首にあてて勝利を宣言してもよかったけどやっぱり気が収まらない、思った通りコウタはそんなに強くない)
突然の蹴りがみぞおちに入り息ができずにコウタは距離をとり咳を繰りかえす。
「この俺に1回負けたクソザコが調子に乗るなよ!」
コウタはどこかで覚えた大火球を生み出しオリバーに投げつける、人間一人なら大やけどを負うレベルの火球だ。それがオリバーに直撃する。
「ふーっ、ふーっ、直撃だ、鍛えてそうだし死にはしないだろ?回復術でもかけてもらいな、おい約束は守れよ!」
「何勝手に勝った気分でいるんだ?勝負は終わってないぞ?」
無傷のオリバーが立っている、リリィからジパンでもらった守りの護符を借りているのだ。
「まったく、俺が手加減してやったのに容赦がない奴だな、次で終わりにするか」
オリバーは盾に身を隠し得意の超接近戦法に変える、コウタは盾に押されて何もできない、常に盾に押されている状態なので踏ん張る事もできないのである。
盾の合間に絶え間なく木製の短刀で切りつけられる、木刀と言えど当たれば痛い、コウタの持ってる権能には防御系が無いので耐えがたい痛みだ。
「わかった、俺の
コウタが負けを宣言する前にオリバーは足払いをしてコウタに尻餅をつかせる、そして首元に短刀を突き付けた。この構図はオリバーがコウタと初めて対戦した時と同じ構図である。
「あの時は油断していたがちょっと本気を出せばこんな物か、お前のせいでかなり人生を遠回りしたがいい事もあったさ、残りの人生は好きに生きるといい、ただ俺の前に現れたら次は殺す、じゃーな」
こうして決着がついた、オリバーに銀髪の美女が笑顔で駆け寄ってすでに談笑をしている。
「クソが!なんであの女神はクソみたいな能力しかくれないんだよ!この手の異世界転生は現地人に負けないような強いチート能力くれるのがお約束だろうが!」
そう愚痴を言いながら案内人に案内をされて寂れた場所に案内された。
「ここは?なんだ?ここで待ってればいいのか?」
「ハジメはああ言ったがな、王の元で無計画にギフト持ちの子を作られると管理するのも手間になる、お前はここで死んでもらうよ。ここは墓地だ、すでに墓穴は掘ってあるから安心しろ」
さっき戦っていた男より一回り大きな男が立っていた、コウタは相手が自分を殺しに来た事を直感で感じて今度は本気で攻撃をした、大火球放ち、避けたなら剛力と剣技の権能で切り殺す気だったが相手は大火球を一刀両断にして振り下ろした剣をそのままコウタの股に目掛けてかちあげた、両刃の剣はそのままコウタを真っ二つに切り裂きコウタの意識はそこで途切れた。
「ふん、強い権能を持っていても訓練をしていなければこんな物か。悪いがこいつを埋めておいてくれ、墓標は適当な岩でも置いておけばいい」
こうして前世でも今世でもいい事が無かったコウタの人生は幕を閉じたのであった。
次回はオリバーとの結婚前にリリィが弟のアンテロの婚約者の事を知り大暴れするお話です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第一話から続いてきた因縁に、ついに決着がつきました。「あの時とは違う」オリバーが自らの手で成し遂げた雪辱、そして最後に選んだ道。いかがでしたでしょうか。
長かった蛮族戦、そしてこの決着を経て、物語もいよいよ大きな節目を迎えます。
次話は少し趣向を変えて、リリィ視点のお話です。オリバーとの結婚を目前に控えたリリィが、ある事実を知ってしまい? こちらもぜひお楽しみに。
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次話もお楽しみに。




