将軍、その後の顛末 そして最後の因縁へ
蛮族との長きにわたる戦い、そしてついに訪れたその終わりの形。将軍の処遇、ショーベリ領の完全解放、同盟諸国の妥協、これまで積み上げてきたすべての決着がこの一話に集約されます。
そして、戦争が終われば残るのはただ一つ。オリバー自身の、最後の因縁です。
蛮族の将軍は牢屋で3日ほど待たされた、投降してきた捕虜の扱いでイワオが忙しすぎて尋問ができる状態ではないと聞いた。
(しかし、ここの兵は規律がしっかりしている、私は長年この国を苦しめてきた勢力の首魁、やつらは蛮族と呼んでいるくらいなのに誰一人私に罵声を浴びせて来る人間もいなければ誰もが私を将軍として敬意を持って接してくれる、食事も栄養満点で体力も回復できた、よほどアヤノ家の当主が立派な人間なのであろう、猛将だと聞く。こちらから放ったスパイとこの国に最近できた反政府勢力の刺の冠からの情報だと戦うしか能がなく品の無い人間との事だが、刺の冠の情報を鵜呑みにしてショーベリ領を急襲した結果大量の兵を失った。その程度の情報収集能力しかない組織に頼るしかなかった時点で我々の負けか.....)
ある日、将軍は妻の隣に立っていた大男の前に連れていかれた。
「ワシがアヤノ家当主イワオ・アヤノだ、あなたは将軍だと聞く。正直先に捕まえた者やそちの妻への聞き込みのおかげで将軍に聞きたいことはほとんどない、何か言いたいことや聞きたいことはあるか?」
「妻と子は安全に暮らせるのか?捕虜にしたこの地で育った者達は本当に奴隷扱いしないのか?」
「将軍の妻と子に関しては安全を約束しよう、元より王国のために文字通り体を張ってくれた、流石に王国内に置くわけにはいかないが人の出入りが多い土地がある、その地で暮らしてもらう事になる、誰も彼女の素性はしらない、捕虜についてはそちらにばら撒いたビラの通りだ、ある程度行動の自由は制限してもらうがこちらが指定した救荒作物の栽培と開拓に従事してもらう、しかし反乱を企てれば容赦はしない」
「そうか、ならば言う事はない、お前らが言う蛮族の王として処刑されるまで恥じる事の無い余生を送らせてもらう」
「それなんだがな、将軍よ、同胞を一人でも助けたくないか?王国以外ではお前ら蛮族に対して包囲しているのがやっとの状態だ、これではすべての解放まで10年、下手したら何十年かかるか見当もつかん、この後の同盟諸国の会議の結果次第であるが我々が出した手紙と同じ要求を将軍の口から呼びかけてもらえぬか?国民感情は抜きにして現実問題戦わずして開放できるのならそれに越した事は無い、流石に本国から派遣された人間は自力で逃げてもらって野垂れ死ぬか各国の軍隊の捕虜になるかは運しだいだがな、将軍の処遇に関してはその後になろう」
「もしその話が通ったのなら是非やらせていただきたい、同胞が一人でも生き残れるのならどのような汚名を着てもやり遂げたい」
「その優しさを我々同盟諸国の人間にも向けてくれれば200年以上戦わずに済んだものを、まぁ時代が違うから言っても仕方ない事、それに将軍が望んだ戦争でも無いしな」
その後同盟諸国最大の城塞都市の陥落と総司令官である将軍の拿捕が大々的に報道されて同盟諸国内では大アヤノフィーバーが巻き起こる、その中で開催された同盟諸国会議及び王国と北の国と1対1での最後の詰めの会議を経て以下の事が決定する。
同盟諸国内では随時将軍が自ら投降を勧告を行いこの地で育った者はアヤノが取り戻した荒野で救荒作物の栽培と開拓に従事してもらう、蛮族兵は幹部以外が武装解除後に逃走するならあえて追う事はしないと言う物だ。同盟諸国の国民感情では皆殺しにしたいだろうがもうそこまでできる国力は無い、蛮族に破壊されたインフラ整備に人員を回したいので妥協する事にした。
北の国との交渉は最初にマルコが提案した条件とリンネア・ショーベリの貴族復帰が正式に認められた。現在北の国を攻めている蛮族は他国と違いここ10年の間にショーベリ領の領民の3割を虐殺した。もはや投降も許されないと判断された、夏の終わりにアヤノ家のグライダー部隊が燃える水と火を使っての空爆とリリィの新型光線杖による砲撃により蛮族の砦は崩壊する、その後ショーベリ領当主であるエリック率いるショーベリ兵とアヤノ兵の混合軍による突撃でショーベリ領に残る蛮族は全滅をした。
そしてショーベリ領はかつてないほどの盛り上がりを見せている、長年蛮族の侵攻を抑え込みとうとう領内の蛮族を一掃した当主エリックの凱旋パレードだ、他の地域はまだ蛮族とにらみ合いが続いている中でアヤノに続き2例目の完全開放である、盛り上がらないわけが無い、王国側による情報操作により身分を隠して魔法の研鑽を積み、凄まじい魔法の力を手に入れて蛮族の砦を破壊した事になっている見た目麗しいリンネア嬢もエリックと並んでパレードに参加をする。
少し遠い未来になるが蛮族の将軍の呼びかけは一定の効果を見せたが、すべての蛮族が投降したわけではなかった、情報が行き届かず本国からの救援がもう来ない事を知らないのである、これはロッシの目論見通りである。ショーベリ領を実質的に支配するのはこの地から蛮族が消えるまでとされている、その間にショーベリ家を、まるで姫をあやすかのように丁重に扱い長い年月をかけ、王国民に恭順させて最終的に北の国への返還時にこの地の住民が王国と北の国のどっちを選ぶかは当事者に決めてもらう形を取る事になる、かといって強大な勢力を保持したまま蛮族がいつまでも同盟諸国にいてもらっても困る、ロッシが望んでいたのは"完全な投降"でも"完全な抵抗継続"でもなく、時間をかけた緩やかな瓦解だった、全員が降伏するとせっかく手に入れたショーベリ領をすぐに手放さなければならない上に大量の捕虜の扱いにも困る。適度に解放、適度に抵抗がロッシ家と王国が望む共通認識である。
夏の終わりごろにオリバーはイワオに呼び出される。
「蛮族関係はあらかた片付いた、あと残っているのは同盟諸国内で蛮族に通じていた者の処刑と蛮族の幹部の処刑くらいだ、それが終わればお前は正式にショーベリ家に婿入りする事になる。その前に決着をつけたいなら今しかない、王が会議のために外遊をしている今が最後のチャンスになるだろう、もう一度聞く、コウタとの決着を望むか?」
「望む!あいつの権能は剛力と剣を一流レベルで使える権能と見た魔法を使える権能、最後の権能は相手の心の隙を突く権能だったか?聞いた話だと王はコウタに必要以上に強くなってほしくないから魔法はほとんど教えていないと聞いている、それならばもう負ける事は無い!」
「そこまで言うなら、相応の場所を用意しよう。お前が負けた学院の闘技場だ。休日に借りる手続きはした、コウタにはお前を倒せば自由だと吹き込んで拉致をする、王が外遊にでて精鋭の護衛がいない今しかできない、しくじるなよ」
「分かっています、過去の因縁を断ち切って何の憂いも無くリリィと結婚します!」
次回はコウタとの死闘です。
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ここまで読んでいただきありがとうございます。
長きにわたった蛮族との戦いに、ついに終わりが見えてきました。将軍の選んだ道、ショーベリ領に沸き起こる歓喜のパレード。その裏では、まだ静かに動き続ける思惑もあるようですが……。
そして、戦争の陰でずっと燻り続けていたもう一つの因縁。王が国を離れる今この時、オリバーはついにコウタとの決着に挑みます。
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次話、コウタとの死闘。お楽しみに。




