城塞都市の将軍の生き様 後編
蛮族最後の城塞都市攻略戦、その内側にいた者の物語です。
長年この地を治めてきた将軍が何を考え、何を守ろうとしていたのか。そして彼の傍らに潜んでいた、もう一つの真実。
戦争と、その中にあった小さな家族の物語です。少し重い内容も含みますが、どうぞ最後までお付き合いください。
(どうやらここまでのようだ.....23歳の時にここに将軍として赴任して約10年、こっちでも妻と2歳になる子ができるくらい長い時間がたった、ある時期を境にどんどん戦局が悪化していく、スパイの情報によると今我々を攻めているアヤノ家と王国の内政を実質的に取り仕切るロッシ家の子供同士が婚約をしたことによりあっという間に兵站網を構築されてからは早かった、ただでさえあのアヤノ家相手には籠城戦で耐えるしか戦う方法がなかったのにロッシ家の差配する後方支援のせいで次々と城塞都市が落ちた、そしてまもなくここも落ちるだろう、手は打ってある、なるべく一人でも多く生き残らせるための手をな)
今まで聞いた事にない轟音が城塞都市トップの蛮族の王族である将軍の耳にも入った。部下の報告によると城塞都市を守る城壁の一部と城門が破られたらしい。
「よし、号令をかけろ。作戦を開始する。先に投降派を投降させよ。その間に戦える者は逃げるぞ」
(手を打った、意味のない和睦交渉の時に交渉団の一部にわざとアヤノ側のスパイを入れた、アヤノはそれを見てスパイを引き上げる符丁を使ったのだろ、怪しいと思ってた人間が一斉に消えた、信頼していた人間も消えたのはショックだったがな、しかしスパイがいない今こそこの作戦が成功する、わざと砦から逃走させた人間には都市内は徹底抗戦派と投降派で争っていると証言させるようにして城門付近を守ってる兵はほとんどが案山子にした、丁寧に火あぶりにしてくれたおかげでばれずに済んだだろう、城塞都市20000人の内投降派15000人を一気に投降させる、アヤノには徹底抗戦派がいると情報を流してあるのでまさか逃げるとは思うまい、その間に本国から派遣された5000人は何とか逃げてもらう、本国に帰れるか、帰っても居場所があるかは不明だがここで無駄死にするよりマシだ、まずは生きてもらわないと話にならない)
その時砦を守る将軍の元に副将軍が走って来た。
「将軍、今着ている鎧を私にいただけませんか?将軍は少数で他国の我々の砦に向かい指揮を執ると聞きました、その鎧では目立ちすぎます、私が将軍のふりをして本国に逃げるように動きます、その間にどうか生き延びてください」
「この鎧を着ていると真っ先に狙われるぞ、本国への道は王国兵により封鎖されていると聞く」
「なおさらです、私が目立てば将軍が生きる可能性が高くなる。あなたが生きていればまだこの地に残る同胞が集結する事ができましょう」
「そうか....すまんな。つらい役目をさせるな」
出発の準備が完了した時に煙の臭いを感じる、もうここまで攻められたのか?と思っていたら妻がやってくる。
「あなた、アヤノにここから持ち出せぬ宝物をただでくれてやるのも癪でしょう、逃げる前に火をつけました、さぁ逃げましょう」
「ふむ、そうだな。これで少しは気が晴れたわ、逃げるぞ!アヤノが投降した人間に手を取られている間が勝負だ」
こうして逃走劇が始まる、大多数の兵は故郷の景色を夢に王国が逃げ道に作った馬防柵や深い谷等の罠に向かって突撃していく、王国兵が守る砦も多数存在する。逃げ切れる者は少ないだろう。
将軍は少数精鋭で他国の砦に向かうために冒険者のような恰好で別行動をする。
一方その頃アヤノ側では.....
「合図の知らせが入った、敵は逃げたようだ。グライダー部隊よ敵将軍を必ず捕らえるのだ、こっちの情報では時間勝負だ、逃げられると見つけるのがやっかいだ、頼むぞ」
グライダー部隊が空を飛ぶ前に軽くミーティングをする。
「オリバーとリリィさんのグライダーはどこでも離着陸可能だ、将軍を攫ったらすぐに離脱してくれ、我々は護衛部隊を叩く、それとあれ、忘れるなよ」
「分かっている、頭に叩き込んだよ。先に行くぞ、リリィ頼む」
「うん、では皆さん。作戦の成功とご無事をお祈りいたします、お先に!」
こうしてグライダー部隊は飛び立っていった。
蛮族の将軍は側近と妻と子を連れて荒野を歩いている。
「もう本体は遠くにいった頃だな、そっちに引っかかっている間に山間部に入るぞ、そうすれば何とか他国まで行ける、他国の町で冒険者の振りをしていればそう簡単に見つからないはずだ、隙をついて同胞が守る砦まで行ければ....」
その時将軍一行に目掛けていっせいに矢が飛んでくる。将軍どころか誰もが何が起こったか把握していないようだ。
時は遡りグライダー部隊の場面
「情報によればこの道を蛮族の将軍は通るみたいだな、指定された丘は....あれだな、かなり先回りしたおかげでパラシュートを使わずにすみそうだ」
ゆっくりと安全に着陸をして指定された丘に登ると先にオリバー達が到着していた。
「いい所に来た、望遠鏡であっちの方向を見てみろ、目標の将軍がいるぞ。冒険者の格好をしているが装備が新品で綺麗すぎる。俺たちは冒険者をしていたからな、あんな綺麗な装備をした冒険者がこんなところにいるわけが無い」
「そうか、情報通りだ、女性と子供が近くにいる男が将軍で間違いない、かなり目立っている、では射程距離に入り次第まずは矢で攻撃、目標に当てるなよ。相手から矢は少ししか飛んでこない、相手の矢が尽きて混乱しているうちに突撃だ、オリバーいい所は譲ってやるから失敗するなよ」
そうして蛮族の将軍達が至近距離まで接近するまで待ち矢を次々と撃つ。
蛮族側も混乱をしながら負けじと矢が飛んでくる方向に矢を撃ち返す、しかし相手は高所を取っている、当たる気配が無い。矢が無くなったので矢筒を開けると蛮族側は悲鳴に近い声を上げる。
「矢筒に矢が入ってない!?」
「くそ、矢が無い!これでは接近戦だ、この飢えた体では......!」
そう将軍が言うと同時にアヤノ兵が剣を構えて突撃して来る。将軍は覚悟を決め剣に手をかけて激を飛ばす。
「なんとか切り抜けるぞ!気合を.....」
その時、最も近くにいる妻が無言で拳を握り、将軍の顎に叩き込んだ。最後まで号令をかける前に強い衝撃を感じてそのまま将軍が倒れる。
(何故そなたが......)
それがこの地での将軍の最後の記憶となる。
乱戦の中でオリバーが倒れている将軍に近寄るとすでに将軍は猿ぐつわをされて両腕と両足は縛られていた。
「時は来たので正しい行動をしました」
「(その符丁は頭に叩き込んだ...)そうか、あなたが最後の.....リリィ!運ぶ人数が増えたけど大丈夫か?」
「オリバーの剛力でがっちりつかんでくれれば大丈夫よ、早く括り付けて行くわよ!」
こうして蛮族の将軍の拉致と最後のスパイの救出に成功した。
将軍は水を被せられて目を覚ました、ぼーっとする頭が冴えてきて自分が絶望的な状況にいる事に気がつく、そして見慣れた人物が大男の横に立っていた。
「まさかそなたがアヤノのスパイとは思いもしなかった、私と結婚して子も作るとは徹底しているのだな。屋敷に火を放つと言っていたがあれは私たちが逃げるという合図の狼煙であったか、それと我々の矢筒に矢が入ってなかったのもそなたの仕業だな」
「はい、矢筒の矢を抜いておいたのも私です。私はあなた達に殺された貴族の娘なんですよ、10歳の時にアヤノに拾われてスパイとしての訓練も受けました、18の時に運よくあの城塞都市に潜入したのです、まさかあなたに気に入られるとは思いませんでしたよ、赴任して次々と砦を落とされて行っている時のあなたはとても不安そうでしたね、アヤノのスパイ訓練で習ったように不安な男性への接し方を実践したらコロっと私に夢中になってくれてビックリしましたよ。蛮族は大嫌いですがあなた個人はそんなに嫌いでは無かったです、あなたとの子も愛おしい。まだ2歳なのであなたの記憶はないでしょうからどこか田舎で大切に育てます、アヤノ様からも許可を頂いていますのでご安心を」
「そうか、それならば安心だな。戦争だったとは言えそなたの家族を殺めたのは、いや侵略者の言う言葉ではないな」
将軍はすまなかったという言葉を飲み込んだ。
「後はアヤノ様がお話しをしたいそうなので、さようなら。蛮族の将軍という事を抜きにすればあなたを愛していました」
「そうか、息災でな。さらばだ」
こうして将軍の前から妻と子は姿を消した。
次回はイワオと将軍の会話とその後の処遇、そしてショーベリ領奪還戦となります。
ここまで読んでいただいてありがとうございます、何か感じる物がございましたらどうかお気に入りと★評価などをお願いします。このままだと誰の目にも止まらないまま埋もれるばかりです。どうか評価をつけていただけないでしょうか?作者からのお願いでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これまでの敵とは違う、一人の指揮官としての矜持と、部下への情。そして最後に明かされた、彼の隣にずっといたはずの人物の正体。いかがでしたでしょうか。
将軍は捕らえられ、いよいよイワオの前に引き出されます。そこで何が語られ、どのような結末を迎えるのか、次話をお楽しみに。
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次話もお楽しみに。




