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城塞都市の将軍の生き様 前編

 これまで「敵」としてしか描かれてこなかった、蛮族の将軍。

彼は何を背負い、何と戦い、そして何を守ろうとしていたのか。捕らわれる前の彼の来歴を、今回はじっくりお届けします。


 戦争というものが、双方にとってどれほど過酷なものであったか。少し重い内容も含みますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。

 15の時に王の子として戦場に出てから運よく一度も負けること無く、気が付けば血筋もありそれなりの地位についていた。


 ある時本国から指令が届く、遠い地で我が軍が苦戦をしているからその地で将軍となり相手を滅ぼしてこいと、相手の名はアヤノと言うらしい。


 その時は本国から遠く離れ現地でも混血が進んでいるせいで兵の練度が低くなっているだけだろうと思っていた。私が新たに連れて行く10000の兵をもってすればすぐにでも亡ぼせるとまで思っていたのだが赴任前にその考えは浅はかだったと思い知らされることになる。


 王国と呼ばれる国の国境に入ったとたんにいたるところに罠が仕掛けられて山中では昼夜を問わずにゲリラ戦を仕掛けられた、奴らの嫌らしい所は平原といった我々の騎馬隊が力を振るえるところでは落とし穴程度の罠があるくらいで徹底的に仕掛けて来ない、しかし川を渡る時や山道では積極的に攻撃を仕掛けて来る。かといってただの平原だと思い進軍しているといきなり鉄砲水が襲い掛かって来る事もあった、上流でダムを造りタイミングを見計らって決壊させたのだろう、奴らは正面からは決して仕掛けて来ない、後方の食糧を運んでいる部隊を積極的に狙うのだ。こうして目標の城塞都市に到着したころには連れてきた兵は5000を切っていた。


 到着して驚いた、都市はきびしい兵糧攻めにあっていて食料が極端に少なかったのだ、我々は道中に執拗に食料を積んだ部隊を攻撃されたために補給物資があまりなくただ単に5000人分の胃袋が追加された事になったのだ。


 それならばと、得意な騎馬突撃を行おうと試みたものも徹底した馬防柵、初めて見る刺の付いた鉄線の網(有刺鉄線)がいたるところに張り巡らされており思うように突撃できない、その後ろには塹壕が敷かれており我々の足が止まると一斉に矢が射かけられる、高所には敵の陣地が点在しており本陣は木が生い茂る山の頂上にあるらしいと聞かされて突撃を中止せざるを得なかった。


 この時初めて今までの相手とは違うと思い知らされる。最初はまだマシだった。籠城戦しかできないでいたが時々ではあるが補給も届く事もあった、しかしある時を境に補給が届かなくなる。後で知ることになるが相手の有力な貴族が子供同士の婚約を期に不正を働いていた貴族を次々と摘発して我々を攻撃をすれば恩赦を与えると唆して時間稼ぎをしていたのだ、その間に強力な兵站網と包囲網を築いたようだ。


 我々は急に弱く散漫な攻撃しかしてこない敵に油断をしてその事に気が付くのが遅れてしまいあれよあれよと100年以上守り通していた砦と陣地を奪われて最後の城塞都市に流れ着く事になる。


 しかし到着時に気が付いたが敗走した兵を加えると都市内で生産する食料では全員の腹を満たすことができなかった。


 思いつく手はすぐに実行した、もう老いて戦力にならない者はアヤノに投降させた、どうなるかは相手の裁量次第だがここで飢えて死ぬくらいならと頼み込んだ、断腸の思いだったが籠城戦では馬は不要なので今まで友のように接してきた軍馬を食料にもした。皆信じて付いてきてくれる。女子供も一丸となり戦い抜いていた。


 ある日執務室に懐かしい花が飾られている事に気が付いた、部屋の掃除を任せているメイドに聞くと彼女の父が故郷から花の種を持ち込んで細々と育てているそうだ、どうやらそのメイドの父はこの城塞都市を築くために本国から派遣された人間らしく娘にまだ見ぬ故郷を教えるために毎年故郷の花を絶やさず植えているとの事だ。


 私も弱っていたのだろう、花を生けるという女性らしい行動と常に私に全幅の信頼を置いてくれる彼女に心を惹かれ熱心に口説いていた、最初は身分が違い過ぎると拒否されたが何とか口説き落とし細やかながらも結婚式もあげ気が付けば子もできていた。


 ある日私が赴任する前にこの城塞都市を守り続けている者から報告を受ける、スパイがいるのではないかと、度重なる補給の失敗、次々と発見される隠し坑道、内通者がいないと説明がつかないと。


 そこで長年この城塞都市を守ってくれている幹部と私と本国から連れてきた側近で話し合いをする事にする。その結果、怪しいと目をつけている人間を混ぜて意味のない和睦の使者を送る事にした、これで相手が油断をしてスパイを引き上げてくれれば少しは動きやすくなるだろう。


 結果は成功した、交渉は当然失敗に終わったが要職についている者がいつの間にか消えていた。しかしこの作戦を提案してくれた幹部も消えたのはショックが大きかった、まさか幹部、しかも調査したところ10年以上この地を管理していた上級幹部がスパイだったのだ。これでは補給なんか届くわけが無い。


 不安を隠し私を鼓舞してくれる妻と幼い我が子を見ると心が張り裂けそうだ、王国内の村に出口がある最後の隠し坑道から細々と補給物資を搬入している時に王国を含む周辺諸国の反社組織である刺の冠を名乗る人物から接触を受けた、別動隊が攻めている北の国のショーベリ領があと一押しで陥落する、その地は王国外なのでアヤノ家では手を出せないのでそこを落として新たな拠点としてはどうかという提案だった。北の国の港を使う手はずはつけてあるのでショーベリ領を陥落させ拠点を作るのに成功すれば更なる支援をするとの事だ、彼らの目的は周辺諸国に分散している同胞をショーベリ領に集める手配をする代わりに北の国を制圧後の幹部登用である。


 私は二つ返事で了承したが祖国を裏切るような連中を幹部にするわけがない、適当な所で切り捨てるか使えるようなら下働きくらいはさせてやることにする、しかしこのままこの城塞都市に籠っていてもじり貧だ、ショーベリ領襲撃作戦を決行するために段階的に隠し坑道から仲間を外に出している、報告では刺の冠が良い働きをしてくれているようで港からの北の国への入国はうまくいっている、砦から食料を消費する兵も減りうまくいけば一石二鳥だと感じていたが作戦は失敗する。何故か北の国の国境侵犯をしてまでもアヤノ兵が現れ、山中行軍中に狭い稜線上でたった一人の強者せいで500名近い損害をだした上にほとんどの兵が北の国の軍に拿捕されたようだ、港に潜ませていた残り1000名での春先に行った第2次ショーベリ領急襲作戦も最後の隠し坑道が見つかり破壊されたせいで成否もわからない状態だ。


 その最後の隠し坑道を破壊された時に見張りをさせていたこの地の人間との混血の兵がアヤノから手紙を受け取り私に報告してきた。内容を要約すると「降伏すればこの地で生まれた者には恩赦を与える、本国より派遣された者には容赦はしない」という内容だった、内部分裂を引き起こそうとの考えだろう、どうやらアヤノのトップは清濁飲み合わすことができる柔軟な考えの持ち主のようだ。


 私と本国から連れてきた重鎮だけで話し合いをしてある作戦を決行する事にした、アヤノは本国から派遣された人間は許さないだろう、この砦内にいる者は混血だろうと本国の人間だろうと皆同胞だ、一人でも多く生き残らせるための最後の作戦を発動させる。


 差し当たって投降派の人間に徹底抗戦派と投降派で意見が分かれていると吹き込んで何度もアヤノに投降させた。


 アヤノが本格的に攻め込んでくるであろう初夏が作戦決行の時だ、近しい者だけに作戦を伝えその時を待とう。 

 ここまで読んでいただきありがとうございます。


 15の歳から戦場に立ち、罠と兵站戦に苦しめられ、それでも同胞と家族を守ろうとした一人の将軍。彼の視点から見た、これまでの戦いの軌跡はいかがでしたでしょうか。


 彼が知らないところで、既に多くの布石が打たれていたようです。

すべてを賭けた最後の作戦は、果たしてどう終わるのか。次話、いよいよ捕縛の刻です。

「将軍にも将軍なりの正義があったんだな」「これは辛い展開になりそう」と思っていただけましたら、ぜひ【お気に入り登録】をお願いします。更新のたびに通知が届きますので、この先の展開もお見逃しなく。

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次話もお楽しみに。

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