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王・イワオ・マルコ 開戦までの秒読み

 今回は、これまで積み上げてきた蛮族との戦い、北の国との交渉、そしてリリィの貴族復帰、それぞれの成果が正式に報告される、いわば"作戦司令部"の回です。


 派手な戦闘はありませんが、いよいよ最終決戦への号令がかかります。そして会議の裏側では、王の思惑がまた一段と見え隠れしてきます。

 春の半ば過ぎに王城に主要メンバーが集まりこれまでの報告とこれからの予定を話し合う場が持たれた。最初はマルコが北の国との交渉結果と北の国への要求の細かい点を説明をする。かなりの成果を収めたので特に意見などは出なかった。その中にはリリィ、本名リンネア・ショーベリの事も含まれる。


 「今回のブゥタ三男の逮捕に大きく貢献したリンネア・ショーベリを正式に貴族に復帰させるように北の国に求めます、彼女は今回の事件の首魁であるブゥタの子息に目をつけられて様々な嫌がらせを受けておりました、その中には現在ショーベリ領を侵攻している蛮族を長年山間部の砦で食い止めているショーベリ領兵への援助の中抜きもございました、彼女は自分の領を守るために苦渋の決断をし、死を偽装して冒険者になり泥をすする生活をしていたと聞きます、情状酌量の余地はあるかと」


 「まさか自国の領の支援物資の中抜きをしていたとは、信じられないほどの大馬鹿者としかいいようがないな、確かショーベリにはロッシの娘が嫁ぐのであったな、今回の交渉の大功労者のロッシの頼みだ、私の名で北の国への要求に入れる事にしよう」


 「ありがとうございます、完全な調印には微調整があります、蛮族攻略後に本格的に取り掛かることになりましょう」


 「では、アヤノ3位よ、蛮族の城塞都市攻略戦の概要を説明してほしい」


 「はっ、当初予定しておりました強行作戦は取りやめにて、まずはアヤノで開発したグライダーという空を舞う道具を使い空からビラを撒きます、内容は”降伏をするなら蛮族本国から派遣された者以外には恩赦を与える、この地で我々が指定した作物を育てるのであれば奴隷扱いはしない”というものです、以前隠し坑道を発見した際にも同じ文面を持たせて蛮族を返したところ投降者が続出しており、聞き取りによると投降派と徹底抗戦派に分かれて砦内は一触即発の雰囲気だそうです、後は完成したこちらの新兵器のカタパルトとグライダーを使った空からの攻撃をすれば総崩れとなるでしょう」


 「そのグライダーとやらは誰でも使って空を飛べるのか?降りる時はどうするのだ?」


 「後で資料をお渡ししますが風向きさえ条件が合えば訓練した者であれば誰でも使え、今回の作戦で降りる際はパラシュートなる物を使い特殊部隊を城塞都市後方に下ろします、他にも冒険者が集う町の近くの山で燃える水なる物を発見しまして、これを蛮族の徹底抗戦派にむけて空から火をつけてばら撒く作戦も考えております」


 「そうか、そこまでの考えであるなら今年中には決着がつきそうだな」


 「そこまで時間はかかりません、夏が終わる前には終わらせます、その後はショーベリ領の蛮族を片付けて我が国の長年にわたる蛮族との戦争は終結するでしょう」


 「蛮族の本国からの増援は無いのだな?噂では大層な大国だと聞く」


 「こちらの調査ではもう崩壊寸前です、現在の蛮族の王は死にほとんどの占領地で反乱が起きています、更にジパンにも2度の大遠征を行ったそうですが失敗におわり兵数十万を失いました、もはや侵略する力もなく王候補も多すぎてすでに内乱も起きています、もうあの国は終わりです」


 「そうか、まだ同盟諸国には蛮族が残っているが兵糧攻めにすれば自然と消えよう、長かった、歴史書によると我が国の首都近くまで攻め入られそうになった時期もあった、それももうやっと終わる、この戦争に勝利して北の国との交渉がまとまり次第、アヤノ、ロッシ両家に第2位を与えよう、もうひと踏ん張りだ励んでくれ」


 (蛮族との戦争が終われば兵は必要なくなる、アヤノに軍縮をさせて行けば王権を脅かす事は無くなるだろう、ロッシの方にはインフラ整備をさせてなるべく資金を使わせるようにして力を削ぐか、これで次代の王家の力も安泰だ)


 こうして会議は幕を閉じた。



 「と、まぁ王はそんな感じに考えて私達両家の力を削ごうとしてくるでしょうね」


 いつものロッシ家が王都に作った居酒屋の離れでマルコとイワオと第2王子が話し合いをしている。


 「ふーむ、あの王もちょっと前まで賢王だったのになぁ、権力と言う物はこうも人を狂わせるものか」


 「わが父ながらお恥ずかしい、まだ刺の冠の問題もあるというのに.....」


 「政治的な話はマルコ達に任せよう、兵の事に関しては戦後にこちらから相談もあるが今は蛮族戦に集中させてもらう」


 「そういえば、アヤノ殿、本当にグライダーと言う物を使えば誰でも空を飛べるのか?聞いた話だと卓越した魔法使いが運用すれば馬車で1か月かかる距離をその日のうちに往復できるとか」


 「流石に誰でもというわけにはいかんが15歳を超えて健康な者ならちょっと訓練すれば乗れるようになる、実際にワシも娘のルイももう一人で飛べるようになったし二人乗りも出来るから訓練も容易だ、安全装置のパラシュートもあるし手順さえ間違えなければ安全に飛べるでしょう」


 「そうか、国が安定したら私も空を飛んでみたいものだ」


 「いつでも歓迎しますよ、晴れた日に飛ぶと気持ちがいいですぞ」


 蛮族が王国に持つ最後の城塞都市攻略戦が始まろうとしている。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。


 ブゥタの排除、隠し坑道の発見、北の国との交渉、積み上げてきたすべての成果が、ここでついに一つの作戦へと結実しました。

 「夏が終わる前には終わらせます」


 蛮族との長き戦いに、ついに終わりの期限が示されました。しかし、戦いが終わった先には、また新たな影が忍び寄っているようです。王の胸算用は、果たしてアヤノ・ロッシ両家の思うようにいくのでしょうか。


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