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忽雨  作者: ゆきのひ
一章 日々
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8話 平穏

 ───「先生と付き合ってるの?」


 晴に純粋な瞳で見つめられて、一瞬自分を恥じた。

「付き合ってないよ」

 変わらない明るい声でそう言った。


 晶の言葉を聞いて安心した自分が、気持ち悪かった。

「...そうなんだ」

 何が、『僕も貴方を守りたい』だ。何から守るのか。晶が何を考えて、何を必要としているかも分からないのに。死にたいということ以外、まだ何も知らないのに。


 冷たい風が吹き抜ける。


「家、帰んなくて大丈夫?」と晶が聞く。

「うん、帰る。気をつけてね」

「ありがとう」

 そう言って、お互い手を振った。

 何事も無かったかのように。


 ──────


 次の日も、その次の日も、変わらない日常が続いた。

 怖いくらいに。二人の関係は変わらなかった。

 変わったことと言えば、晴へのいじめが少しだけ減ったこと。それと、晶が放課後居残ることが減って、晴と一緒に帰るようになったこと。それだけだった。

 傍から見ると普通の友達。間違ってはいない、ただ死を誓い合った仲というだけで。

 平和な日常が、自殺願望を消してくれるわけではない。

 二人を繋ぐ一番深いところにはいつも死があった。

 平穏な、死にたい日々が続いた。



 ────平穏な日常は嵐の前触れだ。



 ──────

 二色家前

 今日も一緒に帰った。会話は多くないが、それで良かった。

「じゃあね」

「うん、また」

 玄関の扉を開く前に、扉が開いた。


「だあれ?あの金髪。不良と付き合っちゃダメよ、バカが移るわ。親に連絡してやるから名前を教えなさい。」


「不良じゃないです」回答を間違えて、殴られた。


「そんなことは聞いていないわ。な、ま、え。」


「はい、柊木晶さんです。」綺麗な名前を、この人に教えたくなかった。


「それでいいのよ。もう関わっちゃダメよ〜。さ、勉強しなさい」


 そう言って何やらしていたが、知る術もなく、自分の部屋へ入った。


『うちの親から、お家に連絡が来るかもしれません。すみません』

 はじめてのメッセージでのやり取りだった。文章だと敬語が抜けない。


『敬語だ笑』『大丈夫です、教えてくれてありがとうございます』

 合わせて敬語で返してくれた。バカにしている訳では無いことが何となく分かって、笑みがこぼれる。


 前に晶が親がいないと言ったことには、触れなかった。触れられなかった。

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