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忽雨─雨の日、僕達は。  作者: ゆきのひ
一章 日々
7/25

7話 指導

性的描写あり。

帰り際。晶が理科室に入っていくのが昇降口から見えて、晴は不思議に思った。しかし、忘れ物でもしたのだろうと、そのまま帰路に着いた。


──────


理科室。カーテンは締め切ってある。

──ガチャリと、鍵を閉めた。


「おまたせ〜、羽石せんせ」


英語教師が理科室にいる。


「遅いぞ晶。早く舐めろ」

「わーお、気が早いね♡」


そう言って晶は、羽石のズボンを下ろした。


「んむ...」

「...っはぁ」


「生活指導」と言う言葉と、右手を払い除ける仕草が誘いの合図。「羽石せんせ」という言葉がOKの合図だった。


──────


午後五時半、二色家

「ただいま帰りました。」

返事は無い、文句を言われないだけマシだった。

帰ってすぐ、机につく。


しばらく勉強して、

参考書を忘れて来たことに気がついた。


「すみません。教科書を忘れたので、取りに行ってきます。」


「...何を考えているの。何も考えていないからそういう事になるのよ。勉強の事だけ考えていればそんな事にはならないわ。勉強に集中しなさい。あんたには、それしか価値がないんだから。しっかり勉強して、医者になって、あたしに楽させるのよ。...何の話だったかしら、教科書ね。帰ったらすぐに勉強するのよ。」


つらつらと言葉を並べられる。

この人はいつも、一人で話しているみたいだなと思う。


「はい、お母様。行ってまいります。」


返事は無い。


──────


午後七時、学校に着く

下駄箱を見ると、まだ晶の靴がある。

心が弾む、と同時に少し不安がよぎる。

こんな時間まで、何をしているんだろう。

僕を庇ったことで、虐められたりしていないだろうか。


教室には誰もいなかった、晶も。

参考書を見つけて帰ろうとする。

なんとなく気になって、理科室に行ってみようと思った。


人気のない廊下は、不気味で心細い。

昨日、晶を支えて歩いた時は感じなかったことだ。


理科室に近づくと、いつもと違う雰囲気が漂っていた。

なんというか、一瞬ここが学校では無い気がした。

なぜかは分からない。

理科室にはカーテンが閉まっていて鍵がかかっていた。


──「....ぁ」


聞き覚えのある声が、耳に入り込む。

ここにいてはいけない気がする。直感がそう告げているのに、足が動かなかった。


──「っ....せん、せ...」


さっきよりはっきりと聞こえた。

甘い声、知っているのに僕の知らない声だった。

怖い...知りたい。

──「...っ」

嫌だ...聞きたい。

──「んぅ...」

聞きたくない...もっと。

──「...あっ」

気がつくと拳が強く握りしめられていて、手のひらに血が滲んでいた。自分の体じゃないみたいだった。


しばらくそうして立ち尽くしていた。


こちらに近づいてくる足音で意識を取り戻す。

開かずの扉が開かれた瞬間、


───バサッ、参考書が落ちる。


一瞬、晶と目が合う


「...っ」

訳もわからず、走り出した。


18年間で一番全力を出した、勉強よりも何よりも。

自分がこんなに早く走れるとは...


全力で走って、頭が空っぽになった。

殆ど無意識に、上靴を履き替える。

酸素が足りなくて、頭が真っ白だっただけかもしれない。

呼吸が整うと、徐々に思考が回り始めた。


自分はどんな顔をしていただろう。

晶はどんな顔をしていた。

先生には、多分見られていないはずだ。

なんで僕が焦るんだ、何をしていた。

どうでもいい、もう何も考えたくない。


また、走り出す。

手に参考書を持っていないことに気づいて、

家の前で立ち止まった。


───「はぁっ、は、速いな...追いつけないかと思った」


あの人の声がして、体が固まった。

どうすればいいのか分からない。


「ここ...家?ごめんね着いてきちゃって、はいこれ。」

そう言われて振り向くと、晶がいつも通りの顔で参考書を渡してくれた。声もいつも通りだった。


「....ありがとう」

俯いて、なるべくいつも通りの声で言おうとした。

が、震えていた。


「聞いちゃった?」

平然と聞かれて、思わず顔を上げてしまった。


「....何、してたの」


聞きたくないのに、口が動いた。


「んー、性活指導♩」

また、人差し指を唇に当てて悪戯っぽく笑った。


なんだか、気にしている自分がバカバカしくなってきて、

「そっか、先生と...付き合ってるの?」

今度は震えずに、顔を見てそう尋ねた。

7話を読んで頂きありがとうございました。


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