7話 指導
性的描写あり。
帰り際。晶が理科室に入っていくのが昇降口から見えて、晴は不思議に思った。しかし、忘れ物でもしたのだろうと、そのまま帰路に着いた。
──────
理科室。カーテンは締め切ってある。
──ガチャリと、鍵を閉めた。
「おまたせ〜、羽石せんせ」
英語教師が理科室にいる。
「遅いぞ晶。早く舐めろ」
「わーお、気が早いね♡」
そう言って晶は、羽石のズボンを下ろした。
「んむ...」
「...っはぁ」
「生活指導」と言う言葉と、右手を払い除ける仕草が誘いの合図。「羽石せんせ」という言葉がOKの合図だった。
──────
午後五時半、二色家
「ただいま帰りました。」
返事は無い、文句を言われないだけマシだった。
帰ってすぐ、机につく。
しばらく勉強して、
参考書を忘れて来たことに気がついた。
「すみません。教科書を忘れたので、取りに行ってきます。」
「...何を考えているの。何も考えていないからそういう事になるのよ。勉強の事だけ考えていればそんな事にはならないわ。勉強に集中しなさい。あんたには、それしか価値がないんだから。しっかり勉強して、医者になって、あたしに楽させるのよ。...何の話だったかしら、教科書ね。帰ったらすぐに勉強するのよ。」
つらつらと言葉を並べられる。
この人はいつも、一人で話しているみたいだなと思う。
「はい、お母様。行ってまいります。」
返事は無い。
──────
午後七時、学校に着く
下駄箱を見ると、まだ晶の靴がある。
心が弾む、と同時に少し不安がよぎる。
こんな時間まで、何をしているんだろう。
僕を庇ったことで、虐められたりしていないだろうか。
教室には誰もいなかった、晶も。
参考書を見つけて帰ろうとする。
なんとなく気になって、理科室に行ってみようと思った。
人気のない廊下は、不気味で心細い。
昨日、晶を支えて歩いた時は感じなかったことだ。
理科室に近づくと、いつもと違う雰囲気が漂っていた。
なんというか、一瞬ここが学校では無い気がした。
なぜかは分からない。
理科室にはカーテンが閉まっていて鍵がかかっていた。
──「....ぁ」
聞き覚えのある声が、耳に入り込む。
ここにいてはいけない気がする。直感がそう告げているのに、足が動かなかった。
──「っ....せん、せ...」
さっきよりはっきりと聞こえた。
甘い声、知っているのに僕の知らない声だった。
怖い...知りたい。
──「...っ」
嫌だ...聞きたい。
──「んぅ...」
聞きたくない...もっと。
──「...あっ」
気がつくと拳が強く握りしめられていて、手のひらに血が滲んでいた。自分の体じゃないみたいだった。
しばらくそうして立ち尽くしていた。
こちらに近づいてくる足音で意識を取り戻す。
開かずの扉が開かれた瞬間、
───バサッ、参考書が落ちる。
一瞬、晶と目が合う
「...っ」
訳もわからず、走り出した。
18年間で一番全力を出した、勉強よりも何よりも。
自分がこんなに早く走れるとは...
全力で走って、頭が空っぽになった。
殆ど無意識に、上靴を履き替える。
酸素が足りなくて、頭が真っ白だっただけかもしれない。
呼吸が整うと、徐々に思考が回り始めた。
自分はどんな顔をしていただろう。
晶はどんな顔をしていた。
先生には、多分見られていないはずだ。
なんで僕が焦るんだ、何をしていた。
どうでもいい、もう何も考えたくない。
また、走り出す。
手に参考書を持っていないことに気づいて、
家の前で立ち止まった。
───「はぁっ、は、速いな...追いつけないかと思った」
あの人の声がして、体が固まった。
どうすればいいのか分からない。
「ここ...家?ごめんね着いてきちゃって、はいこれ。」
そう言われて振り向くと、晶がいつも通りの顔で参考書を渡してくれた。声もいつも通りだった。
「....ありがとう」
俯いて、なるべくいつも通りの声で言おうとした。
が、震えていた。
「聞いちゃった?」
平然と聞かれて、思わず顔を上げてしまった。
「....何、してたの」
聞きたくないのに、口が動いた。
「んー、性活指導♩」
また、人差し指を唇に当てて悪戯っぽく笑った。
なんだか、気にしている自分がバカバカしくなってきて、
「そっか、先生と...付き合ってるの?」
今度は震えずに、顔を見てそう尋ねた。
7話を読んで頂きありがとうございました。




