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忽雨  作者: ゆきのひ
二章 二人
15/26

15話 対決

少しだけ性的描写あり。

とりあえず、ちょうど近くに布団屋があったので行くことになった。途中コンビニでおにぎりを買って食べて、布団を一組買って二人で運んできた。これで寝床には困らない、狭いけど。


新居にて


「ふう...今頃、何時間目かな~」

くすっと笑い「知らない。もう関係ない」と晴が言う。

「おっ悪い子、板に付いてきた。俺の悪い子移っちゃったな~」


人差し指で晶の胸をつんと突いた

「元から悪い子だよ、僕」

「そうなの?ふふっ俺には敵わないと思うけど」

そう言って晶は笑った、少し自嘲気味に。


じっと晶を見る

「じゃあ、どっちが悪いか.....試してみる?」

「…望むところ。負ける気しない。」

そう言って晶は、腕まくりをした。

晴も同じように袖をまくった。腕の傷跡が露わになる。


悪い子対決。方法は不明。


「どうやって試そっか?」晶が尋ねると

少し考えて、晴が口を開く

「先に甘えた方が負け」

「のった」


正座して晶と向き合う

何も無い六畳間で真剣勝負が始まった


.....(なんだこれは)

.....(なんだろうこれ)


二人とも無表情を装っているが耳の先がもう赤い

(誘えばいいのか?でも、晴が俺の体になびくか?)


膠着状態が続いた。二人とも攻め手がない。

沈黙に耐えきれず、晴は目を泳がせていた。


───晶が、自分の服をはだけさせる


一瞬、晴の目線が吸い寄せられた。慌てて顔を背ける。

二色晴、早くも劣勢である。


...ごくり、晴が唾を飲んだ。

(...見てる。....俺のとっておきを見せる時か)


晶は、とっても可愛い顔をした。

───晴は、なびかない。


晶は諦めない。今度はとてもえっちな顔をした。

───晴は、...


横目で見てしまって、目が合った瞬間、顔から首まで一気に紅潮した。

「えっちなの効くんだ....素直になっていいんだよ~」

足をいやらしく伸ばす。

視界の隅で追ってしまう

「ぁ...そんな、こと」

「ないって?」肩を出す。

限界だった。両手で顔を覆う「...。ずるい」

「好きにして..いいよ♥」晶は甘い声でそう囁いた。

晴は、指の隙間から覗いている。


「甘える」の定義が崩壊しつつある...

甘えることに慣れていない2人には、仕方の無いことだった。


そろそろと顔から手が下りる。淡い瞳が潤んで揺れていた

「さっ...さ、触って....いい?」

「.....うん。どうぞ」


震える指先が鎖骨に触れた。そこから肩の線をなぞるように滑る

初めて誰かに自分から手を伸ばした。命じられたわけでも、演じているわけでもない

「あったかい...」

「ふふっ恥ずかしい」と晶が笑う。


手は止めなかった。肩から腕へ、指を絡める

「僕の負けでいい」

「んっ。やった~、来て♥」と晴を胸に引き込む。

引かれるままに晶に倒れ込んだ。


「俺の体、綺麗じゃないけど...使う?」

顔を上げた「綺麗じゃないって.....?......使うってなに?」

「全部....汚れてるんだ」そう言って嘲笑する晶の顔は綺麗だった。

黙って晶を見つめた。嘲笑の裏にあるものを探るように。


晴の手が晶のはだけた服の下へ潜った

「んっ...」

───指先に凹凸を感じる。傷。古い傷。


晴は自分の腕にあるそれと同じものを、晶の肌に見つけた。

今まで、誰にも気付かれずに隠してきた晶の自傷跡。

晴は何も聞かず、その傷にそっと唇を落とした


「これで.....おそろい」

「ぁ....」...晶の目から涙が溢れ出す


「.......うれし......あれ、何これ.......

涙...........おれ、泣けた...」


晴は驚いた顔をして、それから壊れものに触れるみたいに晶を抱きしめた。

「泣いていいよ」


「ぅううううううっおれっ、ずっと泣けなくて。っ....泣くのって、こんなに、きもちい…」

大粒の涙が数えられないほど落ちている。


晴は、その背中をさすった。不器用だけど、繰り返し、繰り返し。

六畳間。窓から差し込む光の中で、二つの体が重なっている。


晶は生まれて初めて、声を上げて泣いた。

「う”ううううぅう、はるぅ」

名前を呼ばれて息が詰まった

「ここにいる」

「うわーーーーん''」と晴の膝に飛び乗った。

初めて話しかけられた日の、教室での出来事と、立場が逆転していた。


隣人に壁をどんどん叩かれる。引越し早々、ご近所に怒られてしまった。

「すみません、すみません」と晴が壁の向こうに謝った。

泣きじゃくる晶を膝に乗せたまま。

晴はママになった気分だった。


涙と鼻水でぐちゃぐちゃの晶の顔を覗き込んで

「酷い顔」と笑う。

「可愛い顔」と晶が返した。

「自分で言う?」

「晴のこと。」

「.....ばか」そう言った晴の耳は赤い。


「んぅ....ねむ」晶は泣き疲れていた。

「寝ていいよ」と自分の膝をぽんぽんと叩く。

「あ....やっぱ、甘えちゃダメ対決...俺の負けだ〜」(ごろん)

「じゃあ両方負け」

「ふっそうだね」そう言って晴の顔を引き寄せキスをした。

晴は、目を閉じて受け入れた。


そのまま晶が眠りに落ちるまで数秒もかからなかった

「...んう...はる...すき...」

寝息に変わったのを確認して

「僕も」

ふふっと晶が一瞬笑ったような気がした。

栗色の髪が晶に垂れかかる。晴もそのまま目を閉じる。


二人はそのまま眠った。何にもない、がらんどうの部屋。

午後の日差しが窓から斜めに差して、眠る二人を照らしていた。

読んで頂きありがとうございます。

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