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忽雨  作者: ゆきのひ
二章 二人
14/26

14話 部屋

店を出ると朝日が街を乾かし始めていた。雨上がり特有の、洗いたての空気

隣を歩きながら「次は......どこ行く?」と晴が聞く。


「うーん...この辺で部屋、借りれないかな」


足が一瞬止まる。

───部屋

意味を理解して耳まで赤くなった

「...二人の?」

「そう♩...夫婦みたい?男同士だけど」と晶が微笑む。

俯いて小声で「夫婦...」...言ってから、恥ずかしくなった。

沈黙が落ちた。二歩分ほど歩いて


晴の方からぎこちなく手をつないで、口を開く

「探そう。家」

晶は一瞬固まって、目を輝かせて頷いた。


不動産屋が開くにはまだ早い時間だった。

「お部屋探し」の看板を掲げた店の前で時間を潰す。晴がスマホで物件情報を見ている。画面を覗き込む晶との距離が近い。

指が画面の上をさまよって「敷金、礼金.....保証人...」

「大丈夫。足りる。また、稼げば、やり過ごせるよ」と晶が言う。

稼ぐ、という言葉に少し引っかかったが聞けなかった。


10時になって店が開いた。若い二人を見て店員が一瞬怪訝な顔をしたが、すぐに営業スマイルに切り替えた。まだ、条件を絞れずにいる。


「晶さん、どんな部屋がいい」

「狭い部屋。晴くんは?」

「狭い方が.....落ち着く」

「...ふふっ一緒」


店員に予算と希望を伝えると、駅から少し離れたワンルームを紹介された。築30年、木造、日当たり良好。壁が薄いのが難点だが、家賃は十分払える額だった。


内見に行って、ドアを開けた瞬間

「ここにしよう」と晴が言った。

「うん」そう言ってぎゅっと手を握る。

六畳一間。キッチンは狭く、コンロは一ロ。ユニットバス。何もない部屋だった。


靴も脱がずに立ち尽くしている。

目に水膜が張った

自分の部屋を初めて持つ。その事実が遅れてやってきた


「これから、よろしくね。流されるまで」そう晶が言うと

「こちらこそ」と振り返って、泣きそうな笑顔を浮かべた。

(その顔...好き)──晴の目に溜った涙を舐める、衝動的な行動だった。

舐められて、びくっとして目を閉じた。


「あ...ごめ」

晴は目を開けない「やめないで」


今度は、口に落とす。

んっ、と小さく声が漏れた。


安い蛍光灯がじじ、と音を立てている。


ゆっくり目を開けると、至近距離の晶が映る。

二人の影が壁に重なっていた。


読んで頂きありがとうございます。

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