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忽雨  作者: ゆきのひ
二章 二人
12/26

12話 溶逢

自販機がひとつ、駐車場の端にあった

ポケットを探って小銭を見つける


「あった。ホットの....何がいい」

「あ、当ててくれる約束…!」


───────────────

「好きそうなやつ。外したら──ひみつ。」

───────────────

1週間程前の会話が頭を巡る。

真剣な顔でボタンを二回押した。ココアとミルクティー。

両方持って晶の前に立つ。

「どっち?」

「どっちでしょー?」


晴が真顏で「ヒント」と乞う。

そう言われて、晶はキスをした。


不意打ちに固まる。缶が手から滑り落ちそうになった。



───答えは両方だった。君が選んでくれたから。



「ご褒美と、お仕置、どっちだった?」

晴は、耳まで赤くして答える

「.....ご、ご褒美。.....両方、当たり?」

「正解♥」


安堵の息を吐いて「よかった」と言うと、

「お仕置、してみたかったな〜」と晶は残念がった。


「お仕置って......何」

「ふふっひみつ♩」(外れなんてないけど。)

「いじわる」

(かわいい...)


「どっちがいい?」

と晶が聞くと、晴は目を逸らし

「どっちでも」

と拗ねた口調で言った。


「んー....じゃあ半分こ」と晶が提案した。

こくりと頷いて、ココアの缶を晶に渡す。


「甘い....」と呑気に晶が言う。


ミルクティーを開けて一口、晶の口に流し込む。

「....んむっ...!」


耳を赤くして、いたずらっぽく笑った

「さっきの仕返し」


晶が口移しし返す。

目を見開いて──そのまま受けた。甘い。


朝の海風が二人に吹きつける、濡れた制服を乾かすように。

「....きもちぃ〜」と晶が目を瞑る。

「そうだね」と真似をした。


二缶が空になっても、まだ座っていた。

ふと現実が頭をよぎる。

「学校.....どうしよう」

「行かなくていいよ」

晴は、驚かなかった。


「あ、勉強好きだった?将来の目標とか、全部...戻りたかったら言って欲しい.....俺、察し悪いから…..」


静かに首を振った。

「全部....親が決めたことだから」


「そっか..。よく、頑張ったね。俺にはむりだ〜」

そう言って晴の頭を撫でる。


撫でられて目を伏せた。

「頑張ってなんか.....逆らえなかっただけ」


「頑張ったってことにする、俺が」

ぶっと吹き出した「何それ」

「えらい本当に。もう、好きなことしよう」

そう言って晴を抱きしめる。


好きなことなんて、考えたことがなかった。

「好きなものが.....わからない」

「俺も。...でも、雨が好き。海が好きって今日分かった」

「僕も。雨と海、好き」



─────同じ。

このまま全部同じになって、溶け逢えたらいいのに。

「このまま全部同じになって、溶け逢えたらいいのに。」



晶の言葉を聞いて、目を見開く。

また、同じことを考えていたから。


ぎゅっと抱き返す力を強めた

「溶けたら.....もう離れなくていいね」

「うん....しあわせ」と晶が微笑む。


朝日は完全に昇り、海をきらきらと輝かせていた。ボストンバッグひとつ。18歳と17歳が二人、行く当てもなく海辺にいる。世界は回り続ける。


───「「お腹すいた」」二人同時にそう呟いた。



読んで頂きありがとうございます。

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