17、ルグランへ戻る
「おねーさん、こちらにエール2つね!!」と威勢のいいアリスの声が響いた。
「はいよ!!エール2つね!!」
賑やかな店内に威勢の良い声が幾つも響いて行く。ここにいる人々は仕事の疲れを癒すこの一杯を楽しみに生きていると言っても過言では無い。
「へえ〜君、久乃ちゃんって言うの?可愛いね。こんなに可愛いのにA級って凄く無い??」
「アンタ何言ってんの。久乃はもうすぐS級よ。今のうちだけよ。こうやって飲めるのは。」とアリスも酔っているのか話を盛りにかかる。実際にはまだそんな話は一切でていないのだからアリスもかなり酔っていると言えよう。「お願い、もうやめてアリス。これ以上話を盛らないでえ〜」と久乃の可愛らしい悲鳴が話題に華を添える。
今日は隣町のギルドと合コンだ。メンバーの中にアリスの幼馴染が居るらしく今日の運びとなった。
自己紹介の後、自己紹介からの自然な流れでそれぞれの得意な武器や今までの依頼の話になって行った。
アリスの幼馴染はジョーさんと言った。私より3つ上らしい。中々のハンサムさんだ。ちなみにジョーさんは私と同じA級との事。
「久乃ちゃん、また一緒に組まない?俺、頑張るからさぁ。」
「んもぅ、ジョーさん酔ってますね。私なんてちゃんちゃら弱いですよ?他の人をあたった方が良いです」とここは謙遜しておいた。
「何言ってんの久乃。貴女、剣聖仕込みの剣捌きじゃない。」とこの話を終わりたいのにアリスが中々終わらせてくれない。もう、ホントやめてアリス。
「そうそう、みんな聞いた?」と遠くの席から声がした。確か。。。ミハエルさんだったかな?
「ルグランって凄く若い人が増えてるんだって。この国から出てルグランに行った人が既に何人か居るんだってさ。何でも福祉制度が充実していて暮らしやすいらしいよ。」と大声で話していた。
・・・・ふうん、リヒト様頑張ってるんだ。
そう呟きながらパクりとおつまみを口に入れた。それをクイっとエールで流し込む。うまい!!
「久乃ちゃん良い飲みっぷり。」とジョーさんが感動している。
「久乃ちゃん、僕と結婚してルグランに行かない?」と誘って来た。・・・・この人初対面だって言うのに何言ってるんだ。でもここでそんな気持ちはエイっと蓋をして、
「ーーーー私なんかジョーさんに勿体無いです。お断りします。」と言っておいた。でもその言葉を言い終わると同時に
「ダメだ、久乃は僕と所帯を持つからね~。」とここにいるはずの無い場違いな声がした。えっ、誰?
ーーーー声のした方を向くとトールさんが立っていた。
「酷いよ久乃。僕と言うものがありながらこんな所に来るなんて。」と冗談めかして勝手に話し出した。この人も酔っているのかしら?
「えっ、久乃、トールさんと出来てたの?言ってくれたら誘わなかったのに。」とアリスに言われた。
「いやいや、出来てません。トールさんそんな事言うの辞めて下さい。変に誤解されたく無いんです。」と本人の前でハッキリと言った。
「まあまぁ、それはさておき、今日は久乃は飲みすぎてるよ。アリス、悪いけど連れて帰るわ。」と久乃の手を引っ張って店の外へ連れだそうとしたので、カバンから何とか紙幣を取り出しアリスに何枚か渡した。
店から出て、ある程度の所まで歩くと久乃はサッとトールの手を振り解き「・・・・困ります。トールさん。私は今は誰とも付き合うとか考えられません。」とトール本人にはっきりと言った。
「それは分かってるよ。でも真剣に僕の事を考えて欲しい。じゃあ。」とそう話すと名残惜しそうに手を振りながら帰って行った。
その後ろ姿を見送った久乃は「まぁ、飲み過ぎてるのは事実だけどね。ちょっと散歩がてら帰ろうっと。」とゆっくりと自分のアパートの方向へ向かって歩き出した。この季節はちょうど気候も良く、道には夜でもそぞろ歩きを楽しんでいる人々がいたので久乃も気安く歩く事ができた。
次の日、久乃の元へ懐かしい人から手紙が届いた。どうしてこの住所がわかったのか?
それはハリーだった。マンチェスター国で別れて以来だった。
内容によるとハリーと彼氏とは上手く行ってて今度ルグラン王国へ家族の顔を見がてら帰ろうと思っている。
自分もルグランから出た人間だが家族は別だ。短い期間だが一緒に帰らないか?特にハルには家族に良い思い出が無いのも分かっている。でも一度、遠くからでも良いから家族の顔を見に帰ってみないか?
そんな内容だった。
久しぶりにエメラルドとしての気持ちが出てくる。このハリーの申し出は嫌じゃ無いみたい。
ちなみにこの住所はギルドに尋ねた。
ハリーのお店に以前一緒に活動した人がお客様で来店したらしくて、話を聞いてもしかしたらと思ったらしい。
正直どうしようかと思った。でも人生で一度ぐらいこの世界の親の顔を見るのも良いかなぁ。と思ったのも事実だ。ルグランを追われた時は本当にバタバタしてたからなぁ。
・・・・うん、一度帰ってみるか。そうと決まればギルドに一言いっておこう。




