表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/44

第18怪 死霊のラジオ体操

 『死霊のラジオ体操』を知っているだろうか。


 宵ヶ浜の都市伝説でも何でもない。

 映画史に燦然(さんぜん)と輝くクソ映画である。


 クソ映画好きの間でも最低の作品として、高い、いや低い評価をされており、クソ映画界の西の横綱と言える。

 ちなみに日本クソ映画界において、東の横綱は、マンガ原作で、製作費をかなりかけた大作『堕天ババア』であるとされている。


 クソ映画『死霊のラジオ体操』は、シーンのつながりも考えずに編集しているのか、朝のシーンだと思っていたら急に夜になっていたり、背景を動かしているアシスタントがもろに映り込んでいたりと、クオリティが低かった。


 だが、オカルト研究会と、なぜか巻き込まれた金剛(こんごう)が、『死霊のラジオ体操』を鑑賞し、その映像の雑さに(おのの)いていたのは、ほんの序の口である。

 途中から六十分以上かけて、半裸の死霊がラジオ体操第八まで踊り続けるという意味不明な展開に、オカルト研究会、および、巻き込まれた金剛は、死んだ太刀魚のような目をしていた。



 なぜオカルト研究会がクソ映画を鑑賞しているのか。

 事の起こりは、多恵が映画研究会をテーマにした薔薇マンガのために、一応オカルト研究会っぽいという言い訳もかねて、ホラー映画を見ることを提案したことにある。


 ******


 オカルト研究会の定例にて、珍しく多恵から調査以外の提案があった。


「オカルト研究会らしく、ホラー映画鑑賞をしようと思うのでござる。オカルト研究会を名乗るからには、映画にも造詣が深くなっておく必要があるのでござる」


 珍しく多恵が自分から提案してくるので、希望は叶えてやりたいが、一応確認する。

「……建前はわかった。本音は?」

「住職を主人公にした除霊ものが今薔薇界隈で激熱ゆえ、二次創作の取材にしたいのでござるが、一人で見るのはこわい!」


 多恵は、思わず語尾にござるをつけ忘れるほど、ホラーが苦手らしい。


 僕はため息をつきつつ、瑠璃子を見る。

 瑠璃子は頷くと、多恵の提案を肯定する。


「私は構わないよ。世界を滅ぼすヒントがあるかもしれないし。ね、勇児もいいよね」

「そういうことなら、ホラー映画鑑賞するのは構わないけど。どこでやるんだ?」


 文芸部部室に映像機器はない。

 一応、執筆用にノートパソコンがあるから、見ようと思えば見られるが。


 協議の結果、次の土曜日に、朝から瑠璃子の家で映画鑑賞会となった。

 それまでに、多恵は青いSNS(つぶやくやつ)で知り合いから勧められたという作品を何本かレンタルショップで借りておいてくれるそうだ。


 ホラーと言えば、ということで、お寺の子である金剛も巻き込んである。

 なお、定額配信サービスに含まれていない作品が多く含まれていたためにレンタルショップに行ったのだが、その時点で、メジャーではない作品ばかりの選び方には若干の悪意があると、気が付くべきであった。


 ****


 瑠璃子の家のテレビにスタッフの名前が流れ始める。

 やがて、八十分の作品がエンドロールまで終了した。


 死んだ太刀魚の目になったオカルト研究会の面々と金剛であるが、いち早く立ち直りに成功した僕は、『死霊のラジオ体操』にツッコミを入れる。


「ラジオ体操第八ってなんだよ。ゴリラがドラミングする体操、じゃあないんだよ」

「でも死霊役の俳優の筋肉は参考になったでござるな。とくに下半身がデッサン向きでござる」


 僕のツッコミに息を吹き返した多恵の、案外ポジティブな見方に、ちょっとほっとした。薔薇の力はすごいと思った。

 なお瑠璃子はまだ冷凍イカのような目をしている。


 気を取り直して二本目、『堕天ババア』を再生する。

 もちろんこれもクソ映画である。

 しかも『死霊のラジオ体操』よりはるかに長い。


 オカルト研究会の面々のメンタルは完全に死んだ。

 金剛は比較的平気そうな顔をしているが、よく聞くと、ぶつぶつとお経を唱えてメンタルを維持している。

 僕もそれやりたい。後で伝授してもらおう


 チョイスに悪意があるらしいことに気が付いた僕は、借りてきた残りの作品をネットで調べ始める。


「『呪われた家の霊 vs 映像の霊 vs 土竜サメ忍者』を検索っと。『呪われた家の霊 vs 映像の霊』をパロディにしたクソ映画。星一つ。ただし、サメ忍者の肉体美はすごい」


 おいおい、こんなんばっかりかよ。

 借りてきた作品の半分ほどクソ映画らしかった。


「お、『十三日のゴリラ』はまともそうだな。十三日のゴリラシリーズの一作目でよくできたホラー。ちょっとエッチ。女の子と鑑賞していいのか? 『身毒蟲(みどくむし)』は、と。身読蟲シリーズ一作目。Jホラー最強クラスに物理的暴力を披露する霊。めっちゃエッチ。え?」


 なお、残りの半分のまともなホラー映画も、ちょっとエッチなものか、とてもエッチなものしかなかった。

 海外のホラーといえば、大抵ちょっとエッチなシーンがあるものだが。


 話し合った結果、休憩を兼ねて昼食を食べた後に、『土竜サメ忍者』と『十三日のゴリラ』を見て、続きは明日にしようということになった。


 昼食は家主である瑠璃子が作った。僕も少し手伝った。


「ね、これが初めての共同作業ってやつだね!」

 瑠璃子がクソ映画の洗礼から復活して嬉しそうにしていたので、手伝ってよかったな。

 なお、昼食後に土竜サメ忍者を見た瑠璃子の目がまた死んだことは言うまでもない。


 十三日のゴリラは普通に怖く、オカルト耐性の強いはずの瑠璃子が抱き着いてきた。

 僕は瑠璃子の感触的に恐怖を感じる時間はなかったが、抱き着きすぎて首が閉まったので、堪能する余裕もなかった。

 また、ちょっとエッチなシーンを見た瑠璃子の目が爛々(らんらん)としていて、そちらの方がこわいと思った。


 十三日のゴリラ鑑賞中の多恵は、金剛に抱き着いており、そちらもいい雰囲気であった。お、そういう感じなの?


 さらにもう一本、土竜サメ忍者を見終わったあと、多恵は、土竜サメ忍者はデッサンの練習にもなるし、除霊ものの二次創作が捗りそうだと言っていた。


 企画者の多恵が満足したのであれば、今回の上映会は成功だったな。

 被害は甚大(じんだい)だったが。


 夕方になり、多恵が金剛に送られて先に家に帰ったあと、僕も帰ろうとしたが、ちょっとエッチなシーンを見てから目がこわい瑠璃子に袖をつかまれて、帰れなかった。

 ただ、瑠璃子の性格上、手を出すとやばそうなので、何とかごまかして帰りたい。


 ここまで既成事実を作られるのは避けてきたんだ。

 今日も逃げたい。


「ね、今日は両親遅いの」

 うんうん、お決まりのやつだね。


「瑠璃子とは真剣な交際だから、気軽にそういうことをしたくないんだ。責任が取れる年齢になるまで待ってくれないか」


 よし、完璧な言い訳が決まった。

 僕は詐欺師の才能があるかもしれない。


「真剣な交際なら仕方ないなぁ」

 瑠璃子も納得してくれたようだ。

 僕は詐欺師の才能があるかもしれない。


 仕方ないので玄関で強く抱きしめて愛をささやいた後、軽く触れる程度のキスをして、明日も来るから、といって逃げるように帰った。

 翌日の鑑賞会では、月曜日には学校があるから、といって早めに多恵と一緒に帰ったので、事なきを得た。


 やはりホラー映画よりヤンデレの彼女の方がこわい。そう思った。


 続く


一応、検索してすぐは引っかからないようなタイトルを選びましたが、同名の映画がすでにあったら申し訳ありません。有名な作品をちょっと変えただけで、そのままですが。

身毒蟲は元ネタがわかりにくいと思いますが、携帯電話のホラーです。Jホラー最強クラスに物理的な攻撃をしてくるところが好きなんですよね


今回の怪異

とりあえずサメを出しておけばいいと思っている作者


作者はクソ映画ハンターなので、おすすめのクソ映画がありましたら感想欄に下さい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ