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第19怪 怪しい路上販売

 この一年、都市伝説に関わりすぎて、僕は瑠璃子と普通のデートをしたいと思ってしまった。

 すでに彼女が若干普通ではないという疑惑もあるので、普通とは何かを考え始めると、哲学の勉強が必要かもしれない。


 なんだかんだで、二人でオカルト関係ないところに出かけたのは、初詣くらいだし。

 初詣こそオカルトか? でも不審者には遭遇していないからな。

 というわけで、春休みも残すところあと二日となった本日、二人でショッピングに来ている。


「なんか普通のデートは久しぶりな気がするよ」


「うんうん、じゃあホテ……」

 来ると思ったので、瑠璃子の発言にかぶせ気味に返答する。

「行かないよ」


 いつものやり取りをしながら、駅前の通りを歩き、ウィンドウショッピングとしゃれこんだ。

 ビーズを使ったアクセサリーの店に入ってお揃いのネックレスを買ったり、チェーンのハンバーガーショップで幸せセットを食べたりした。


 この調子で今日はオカルトに遭遇せず、既成事実も作らずにデートを終えるぞ。(フラグ)


 ******


 普通のデートで終われそうという期待もむなしく(フラグともいうが)、路上販売で、媚薬(びやく)を売っているきれいなお姉さんがいた。


 スルーしたいなぁ。

 どうみても媚薬って書いてあるなぁ。

 もう一度見直したら、座薬とかになってないかな。


 何度見ても、『媚薬 お試し価格で1本500円』と書かれている。

 いっそスルーしようと思ったが、お姉さんに声をかけられてしまった。


「お、高校生カップルかな? おセッセのおともに媚薬はどう?」


 おセッセ!

 ゲスい! 言い方がゲスい!


 きれいなお姉さんだが、中身はおっさんだった。

 おセッセという言い方、若い女性は普通しないだろう。

 おっさんならするというのも、令和の時代には偏見かもしれないが。


 瑠璃子が反応する前に媚薬を断らないとな。

 僕は瞬時に頭を働かせて、絶妙な文句を思いついた。


「あいにく、僕たちは媚薬が不要なほどラブラブなので」


「うんうん。勇児からそう言ってくれるのはうれしいな」


 瑠璃子が腕に抱き着いてくる。

 やはり僕には詐欺師の才能があるように思える。


 路上販売のお姉さんは、中空を見つめて考えをまとめ直したあと、別の商品を薦めてくる。


「これはどうだい? 未来が見える水晶玉だよ」

「いりませんね。彼女は僕のすべてを把握しているので」


 多分物理的に。

 彼女兼ストーカーなので、とまでは口に出さなかった。


「なるほどね。ごちそうさま。ならこのあたりはどうだい? 別の世界にいても連絡を取れるモールス信号送信機。それから、人外に有効な催涙弾」


 どんなチョイスなのかよくわからない。

 ただ、有用そうではある。


「まぁ、それならいずれ使うかもしれませんね。いくらですか?」


 人間の不審者が多いとはいえ、怪異や都市伝説に何度も遭遇した僕は、オカルトアイテムに対して警戒する素振りを見せないほどに成長していた。

 成長と言えるのかはわからないが。

 慣れって怖いなぁ。


 僕の反応に、売りつけようとしていたお姉さんの方が驚いてしまったようだ。


「えっ? いいのかい? 普通の人間はアイテムの有効性云々以前に、オカルトの存在から否定するというのに」

「僕らは正直、普通ではありませんからね……」


 日本の高校にある一般的なオカルト研究会でも、自分から都市伝説に首を突っ込んでは、巻き込まれていくなどと愚かな行動に出ているのは、僕らくらいだろう。

 オカルト研究会がどのくらい一般的なのか、とかはおいておくとして。


 結局、モールス信号送信機を一セット千円と、催涙弾三個で五百円、オカルト的存在を探知するダウジング付き虫眼鏡五百円を購入した。

 オカルト好きな瑠璃子は今日一番うれしそうだった。

 お揃いのネックレスよりも喜んでいる。


 ネックレスは泣いているに違いない。涙ふけよ。


 僕はこれらオカルトグッズが使われないことを祈った。


 ******


 後日、瑠璃子と二人、メリコンドル兄貴に会いに行った。

 露天商から買った、ダウジング付き虫眼鏡の性能を確かめるためである。


 トンネルの入り口から使ってみたところ、虫眼鏡からはピコンピコンとレーダーのような音がして、確かにメリコンドル兄貴の位置に合わせて反応しているようだった。

 虫眼鏡でもダウジングでもない気がしなくもない。


 また、メリコンドル兄貴に催涙弾を見せたところ、泣きながら、それを使うのはやめてほしいと懇願された。

 幽霊が見ただけで恐怖を感じるほどの何か得体のしれない成分が入っているらしい。


 販売員のお姉さんは人体には無害だと言っていた。

 清めた塩か何かだろうか。


 メリコンドル兄貴が泣き止まず、仕方がないので、ストロングなアルコールを渡してなだめすかして、調査は終了した。


 この分だとモールス信号送信機も本物のオカルトグッズの可能性が高い。

 異界に送り込まれることがなければ試しようもないし、使う機会はないのだが。

 ないよね?


 ******


 私、才谷(さいたに)有栖(ありす)は、弟の勇児のデートを酒のつまみに散歩をしていた。


 昼間からストロングなアルコールを飲みながら散歩するのは最高だね。

 日本に生まれたことに感謝しかない。

 ぷはぁ。


 お、なんか怪しい露天商で買い物をしてるな。

 面白そうだ。

 そろそろ尾行も飽きてきたし、弟が去ってから、私も露天商を冷やかしに行くことにした。


「お、お姉さん。アンタも世界を救えそうなオーラがあるね。ちょいと見て行かないか?」


 世界を救えそうなオーラって何だよ。

 そのうさんくささ好きだよ。


「ストロングなアルコールに合うおつまみなら買うけど。私は才谷有栖。お姉さん名前は?」

「アタシは江波(えば)野桜(のざくら)。しがない破魔グッズ売りさ。未来が見える水晶とかいらない?」

「お、そういううさんくさいの、良いね。買った!」


 酔った勢いで買ったわけじゃない。ホントだよ?


 私は、このとき買った水晶が元で、後日騒動に巻き込まれるのだが、それは別の話である。


 ******


 姉の有栖が、怪しげな水晶玉を抱えて、帰ってきたのを、僕はソファーから眺めていた。


「ただいまー」

「姉ちゃん、おかえり……って、また変なグッズ買ったのかよ……」

「何よ、アンタも買ってたでしょ」


 何で知ってるんだよ。

 僕の周りはこんな女性ばっかりかよ。



 こんな感じで、僕たちの一年の春休みも過ぎ去っていく。

 学年が上がったら、もう少し平穏な学生生活を送りたいものだ。(フラグ)


 舞台は二年生でのオカルト研究会に移る。



 続く


お読みいただきありがとうございます。

次回は進級して新キャラも登場します。


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