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第17怪 男性陣によるエッチな本交換会

 広いスペースの中央にはテーブルが置かれている。


 周りには男子高校生が集まっている。

 細マッチョなスポーツマンもいれば、絵が得意な人もいる。

 普段つるんでいるとは限らない、バラバラなメンバーが集まっている。共通しているのは、みんな、真剣な表情でテーブルを眺めていることだけだ。


 集まったメンバーの中から中心となる三人を紹介しよう。


 黒狼(こくろう)自由(そら)、水泳部自由形で県大会七位の水泳部男子である。

 瀬尾(せお)(よう)、水泳部背泳ぎで県大会八位の水泳部男子である。

 高遠(たかとお)平久(ひらひさ)、水泳部平泳ぎ県大会八位の水泳部男子である。


 彼らは水泳部だけあって、細マッチョであり、女子受けも悪くはないが、彼女はいない。

 思春期をこじらせているせいか、もともとの性格か、彼らがオープンスケベだからである。

 男子って基本みんなスケベだと思うけどな。


 そんな彼らが密かに開催する、宵ヶ浜高校の男子だけに伝わる都市伝説的イベントがある。

 その名も、エッチな本交換会である。

 え? 聞こえなかったって?

 エッチな本交換会だよ。


 そんなもんを開催しているから水泳部はモテないという説はある。

 大いにある。


 今どき、インターネットで動画が見放題にもかかわらず、紙の本で見るという体験は別物らしく、不定期に開催されているイベントに参加したがる男子は少なくない人気行事であった。


 今日は黒狼の家に八人集まっての、エッチな本交換会が開催されている。

 黒狼の家、めっちゃ広いな。


 彼女持ちはバレると叱られるので大抵参加しないが、今回は例外がいる。

 そう、僕こと才谷(さいたに)勇児(ゆうじ)である。


 開会の前に、黒狼が僕に声をかけてくる。


「才谷は彼女がいるだろうが。彼女持ちは暗黙の了解でこれまでは参加していないはずだが」

「いや、あの彼女に手を出すと、死にかねないから」


 なお、死ぬのは僕である。


 僕は悲しい目をしながら、水泳部の面々に伝える。

 ここまで来て追い出されるのも悲しいからな。


「あぁ、そう言われると確かに、(病弱そうに見える)水川だと、(思春期男子の欲求に)耐えられそうにないな」

「なるほどなぁ。彼女持ちでも大変なのか。それはそれとしてリア充は爆発しろ」


 瀬尾、高遠は納得したようで、参加を許可してくれた。

 言いながら1発ずつ肩パンをしてきたが、このくらいは安いものだ。


 瑠璃子の本性を知らない水泳部の面々とは、何かがすれ違っている気がしたが、気のせいだろう。

 彼らが瑠璃子の恐ろしい面をあえて教える必要はない。

 ニードナットトゥノウってやつだ。


「ちなみに僕は家にあるエッチな本を、すべて彼女に把握されている。把握されずに本を読めるのは、ここだけだ」


 彼女の恐ろしさの片鱗を、水泳部に伝えることにした。

 このくらいなら大丈夫だろう。普通の女子高生も、彼氏の部屋のエロ本くらい把握しているはずだ。

 把握していてほしい。

 彼氏の部屋のエロ本をすべて把握するのは一般的な行動ではない、と教えられたら泣いてしまう。


「さすがに草が生える。かわいそう」

「隠し場所を考えるとか、パソコンの中で我慢するとかしないとだめだな」


 瀬尾と高遠がゲラゲラと笑う。


 甘いな。

 その程度僕も思いついている。

 どうやっているのかは定かではないが、パソコンやスマートフォンの中に保存してあるエッチな画像もすべて把握されている。


 そこまで話すと瑠璃子が変な目で見られる可能性があるため、僕は口には出さなかった。

 瑠璃子の異常な情報収集能力は何なのだろうか。

 もっと別のことに生かしてほしい。


 僕は今回、自分の部屋からエッチな本を持ってきて、提供した。

 といっても高校生がためらいなく買える程度の、普通のアイドルグラビア本であるが。


「処分の意味もあるから、僕の持ってきた本は返却不要だ。誰かに譲ってくれ」


「お、鬼嫁に管理されているリア充は格が違うな」

 黒狼が軽口をたたく。


「言ってろ。じゃあ処分はよろしく」


 こうして、エッチな本交換会はスタートした。

 交換会と言っても、僕は持ち帰れないから提供するだけだけど。


 セーラー服愛好本、メイド服の愛好本、普通のアイドルグラビア本、爬虫類の交尾の本、かわいいドールの愛好本、スタイルのいい金髪女性を集めた本、など、それぞれの趣味が反映された本が集まっている。


 今、何かあったな?


「触れていいのか悩むけど、爬虫類の本を持ってきたやつは誰だよ。多分そいつの趣味に合った本を持ってくるやつは他にいないだろ」

 僕はたまらずツッコミを入れた。


 高遠が返事をする。

「誰が持ってきたかは深く詮索しないルールになっている。正直俺も引いたが、どこに興奮を覚えるかは、人それぞれだ。多様性を尊重しようじゃないか。それに、もしかしたら同志が見つかるかもしれないからな」


 お前も引いてんじゃねえか。

 だが、そうだな。

 他人の趣味には寛容であるべきだ。


 鑑賞タイム開始から、十分が経過した。

 爬虫類の本は意外と人気があり、鑑賞している男子が三人いた。


 みんな爬虫類好きすぎない?


「爬虫類、結構人気あるなぁ……」

「モロだからなぁ」

「そこなのか……」


 モロなら何でもいいらしい。

 思春期男子の業は深かった。


 単に今日の参加者に、爬虫類マニアが多かったのかもしれないが。

 モロより、モロ平野な方が好きですぞ、とか言っているやつもいるが、それは無視しよう。

 通報されてくれ。


 その後、爬虫類マニアの三名は、ドラゴンカーセックスについて盛り上がっていたが、僕は話についていけなかったので、そっちの方向を見るのをやめた。

 トラックと軽自動車どちらが興奮するかで盛り上がっている彼らの未来に、幸運が訪れることを祈っておく。


 僕はメイド服の魅力をアピールするというコンセプトの写真集を眺めていた。


「才谷は彼女にメイド服を着せられるから良いよな。やはり肩パンするしかない」

「クソ。俺も彼女が欲しい! 口移しでチョコを食べさせられたい! やはり肩パンするしかない」

「そのあたりは僕が悪かったから、何かと理由をつけて肩パンしようとするのはやめろ。ゴリマッチョになってしまう」


 肩パンに対抗するために力を入れるせいで、結構な筋トレになるからな。

 それにしても水泳部は僕に対する風当たりが強い。


 それぞれの性癖暴露大会の様相を呈しているエッチな本交換会は、このような感じでつつがなく進み、解散となった。


 ******


 帰宅後、瑠璃子から謎の把握力を発揮して、緑のSNS(スタンプのやつ)に、気に入った本はあったか、とメッセージが来ており、羞恥(しゅうち)で死んだことは言うまでもない。


「何をどうしたら、このレベルで監視ができるんだ……」


 ピロン

『勇児なら、本に書いてあることを、私に試してもいいんだよ?』


 そうメッセージで言われて、据え膳の毒饅頭が差し出されている情景が思い浮かんだので、断りのメッセージを入れる。

 武士は食わねど高楊枝だっけ、いや違うな。


『これでも僕は妄想と現実の区別はつけるタイプなんだ。瑠璃子は大切にしたいから、まだしばらくは健全な交際をしようね』


 だんだん言い訳が上手くなってきた気がする。


 理性的な対応を心掛ける彼氏と、既成事実を作ろうとする彼女のやりとりは今日も続いている。




 続く


お読みいただきありがとうございます。

昔の男子校だと授業中にエッチな本を回し読みしたものだと聞いたことがありますが、本当なのでしょうか。

ちなみに今回の話では、エッチな本と銘打っていますが、割と健全な内容で、フェチズムあふれたグラビア本あたりを想定しています。ニーソックス集とか、ドアノブ舐める本とかみたいな感じですね。健全ですね。健全とは。


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