ファルーサ・カイデン3-5
昨日の午前中までは「基本」の「生命力量」スキルで生命力総量を増やそうと考えていたのだが、昨日の短剣を持っているのを見られて出かけられなかったことにより、方針を少し変え、最初に取るスキルは決まっていた。
「攻撃」の「空間魔法」スキルだ。「空間魔法1」では何も得るものは無いが、「空間魔法2」の効果が「アイテムボックス小が使える」なのだ。俺の予想通りであれば、短剣をアイテムボックスに入れて、持っているところを誰にも見られることなく持ち運べるようになる。
早速、SPを50使って、「空間魔法2」を獲得した。
しかしこれだけでは足りない。魔法が使えても、今の俺の魔力総量は3しかないのだ。
そこでSPをまた50使って、「基本」の「魔力量2」のスキルを取る。効果は「魔力総量が50加算される」で、確認のため視界の左上に表示されている魔力量を見ると、53になっていた。
試しにアイテムボックスを使ってみる。「ここにアイテムボックスの出し入れのための口がある」と俺が考えた目の前の空間に短剣を入れるようイメージすると、その空間が揺らぎ、短剣が何の抵抗も無くスルスルと入って行く。短剣を握っていた右手の肘から先まで見えなくなり、短剣が完全にアイテムボックスに入ったと思えたので、短剣から手を離し、今度は右手だけを引いてアイテムボックスにから抜き出す。そうすると空間の揺らぎも消えて、今度はその辺りを手で探っても何もない状態となっている。
魔力量を確認すると48/53となっていた。物を入れるのに魔力が5必要なようだ。
今度は短剣を取り出してみよう。先程は身体の正面の肩の高さ辺りでアイテムボックスの口をイメージしたが、今度は右手側斜め上をイメージして右手を斜め上に伸ばすと、そこに空間の揺らぎが発生して右手が入って行った。
短剣の柄を握ろうと考えながら手のひらを閉じると、柄っぽい細長いものが握れたので、それごと右手を引き出す。思った通りに柄を握り、刃先を上にした状態で短剣を取り出すことができた。
再度魔力量を確認すると43/53となっていた。物を出すのにも魔力が5必要なようだ。
魔力の消費さえ許容すれば、自由に物の出し入れが可能なことが判明したため、再度短剣をアイテムボックスに片付ける。
さあ、ここからはしっかり考えなければならない。
先程までは、残りのSPで生命力総量を上げようと考えていたのだが、現在は恐らく16時前だ。少しでも早く家に帰らなければならない。
家から森の入り口まで約30分かかった。その後、スライムを探して、周囲を警戒しながらなのでゆっくりではあるが、さらに30分程歩いた。
これから毎日、今日のようなことを繰り返すのであれば、走る速度を上げると同時に、少しでも長く走り続けられるようにして、行き帰りの時間を短縮することが必要になってくる。
また、昨日剣の練習のおかわりの時間に解っいたことだが、短剣で戦うにはもっと力が必要だ。今日みたいに長時間の戦闘になるのなら尚更である。
アイテムボックスに物を頻繁に出し入れするのなら、「魔力回復速度向上」スキルも欲しい。
悩ましいところではあるが、早く家に帰らなければならないことから悩んでいる時間も無いので、「基本」の「敏捷」スキルと「持久力」スキルを、それぞれ50ずつSPを使って、どちらもレベル2まで取った。
敏捷も持久力も「5加算される」との効果だったのだが、視界の中に色々注意を向けても敏捷や持久力の値の表示は見当たらず、元の能力値がいくつだったのか不明なので、どの位強化されたのか分からない。
「その他」の「鑑定」スキルを取れば判るのかもしれないが、そのためにSPを消費するのもなぁ・・。
取り敢えず家に帰ろうと走り始める。
おお、早い。
自分では小走りで走っている程度の感覚なのだが、普通に走っているより少し遅い位の速度は出ている。しかも、しばらくそのまま走っても疲れない。
それならばと、自分の感覚として普通に走っている感覚になるまで速度を上げてみる。いつもの走る速度よりは明らかに早い。それでいて、地面の凸凹など転ばないように注意しなければならないものもしっかり見えているし、ちゃんと避けられる。
少し疲れてきたので小走り程度に戻すが、しばらく走るともう城壁の穴が見えてきた。
街に入るために穴をくぐって、また小走りで家を目指す。他の歩いている人達を余裕で避けながら走ると、すぐに家(正確には我が家の敷地の端っこ)が見えてきた。
そこからは普通に歩き、門番に「ただいまー」と挨拶をして、正門から家まで少し歩き、家の中に入ると同時に時計を見ると、16時半だった。
まだお母様達は帰ってきていない。よっしゃー!いつもより服が汚れていると思うので、今のうちにお風呂に入ってしまおう。
目についたメイドの1人に、入浴する旨を伝える。これで、お風呂に入っている間に従者が着替えを用意してくれるだろう。
我が家のお風呂は24時間いつでも入れるように準備してくれている。脱衣所に入り、誰も入浴していないのを確認して、着ていた物を全部脱ぎ、それらを全て洗濯行き用の籠に放り込む。
浴室に入り、急いで体を洗った後、浴槽の湯につかり寛ぐ。
ハンターになるための第一歩を踏み出したことに達成感を感じつつ、明日こそは「生命力量」スキルを取ろうとか、「生命力量回復速度向上」スキルをもっと上げたいとか、アイテムボックスに何回も出し入れしても大丈夫なように「魔力量回復速度向上」を取ろうとか、楽しい未来(明日だが)を色々想像しながら、一方で、自分で上げたいスキルを選ぶことのできる、過去の悲惨なこの世界の成り立ちを思い出していた。




