ファルーサ・カイデン3-4
短剣は、弾力のあるスライムの身体に少し刺さったところで止まり、スライムが崩れることはなかった。
俺は思わず剣を引き、次は斬りかかろうと構え直していたのだが、スライムは体当たりのつもりか、俺目掛けて跳んで来た。
俺は、しまった!と、思わず目をつぶって硬直してしまった。
が、凄い衝撃で吹き飛ばされる、という覚悟とは裏腹に、「トン」という軽く何かが身体に当たったような感覚の後には何も起きなかった。
恐る恐る目を開けてみると、スライムは少し離れた所にいた。俺を目掛けて跳んで来たと思ったんだが、気のせいだったんだろうか。
しばらく俺もスライムも動かず、睨み合っていた。と思う。スライムがどこを見ているかは分からないが。
ずっと睨み合ってても仕方ないので、再度、短剣を前に突き出してスライムに向かって駆けて行く。
避けられた!スライムって、こんなに動きが速いのか?
足を踏ん張って止まり、スライムが避けた方向を向く。スライムが、俺目掛けて再度跳んで来ているところだった。
俺が思わず左から右へ薙いだ短剣がスライムに当たったが、元々「斬る」用と言うよりは「突く」用の短剣なので、スライムが斬れることは無く後ろに少しだけ弾き飛ばされたような形になり、俺も反動で少し後退していた。
スライムは着地するや、すぐにまた俺に向かって跳んで来た。俺は後ろに飛ばされた時に後ろに倒れまいと踏ん張っていたおかげで、すぐには避けるための動きがとれず、短剣も横に振りぬいた後だったので戻すのが間に合わず、スライムの体当たりをまともに喰らってしまった。
今度は身構える間もなかったが、俺が感じたのは「トン」という、何かが軽く当たったような感覚だけで、逆にスライムが後ろに弾き飛ばされていた。
また睨み合い(?)になって、双方の動きが止まる。おかげで、少し考える余裕が出てきた。
これは、「物理防御3」の効果で、スライムの体当たりを喰らっても、ダメージを受けていないのではないか?
視界の左上を意識して生命力を見ると、50/50とダメージを全く受けていないことが確認できた。
これが安心感となり、相手のスライムをしっかり観察することができた。
一か月前に倒したスライムは白っぽい半透明だったが、このスライムは白が濃い。透明感がないため、核が見えない。また、このスライムは以前のより大きい。
取り敢えずダメージを受けないのを良いことに、攻勢に出た。
しかし、短剣で斬ろうとしても弾かれ、突いても少ししか突き入れられず、その傷口もすぐに塞がる。しかも、こちらの攻撃は素早く避けられる。スライムは大きくなると、強く、白く、素早くなるのだろうか。
次第に俺も疲れてきた。
刃の長さが300MM程度の短剣とはいえ、金属の塊である。まあまあ重い。それを、10歳の身体で突いたり振り回したりを繰り返しているのだ。右腕を上げて短剣を構えるのさえ辛くなってきた。
こちらの攻撃が鈍ったが分かったのか、今度は相手がしきりに体当たりを仕掛けてくる。
しかしながら、俺がダメージを受けることは無い。相手も疲れたのか動きを止めて、完全な膠着状態となった。
長い睨み合い(?やはり相手に目がないので分らんが)が続いたが、いきなりスライムの身体がブルブルと小刻みに震えだした。
何か仕掛けてくるかと、警戒心を強める。が、振動しているだけで、その場から動く様子もない。
少しの間様子を見ていると(先程から疲れて、長い間何もしてはいないが)振動が収まり、今度は左右に引っ張られるようにスライムが横に伸び始めた。
全方向に横に広がるのではなく、俺から見て前後にではなく、左右にのみ伸びている。それ以上伸びると千切れるんじゃないかと思っていたら、本当に2つに千切れた。
いや、違う。千切れたんじゃない。千切れたように見えた2つの塊は崩れることなく、それぞれ丸い形になっていき、驚くことに2体のスライムになった。
元のスライムよりは小さく、白っぽい半透明になったスライムが2体。
スライムって繁殖じゃなく、増殖するんだ!かなり弱いほうの魔物の割に、やたら数が多いと思っていたら、こうやって簡単に増えていくんだ。
なんてことを考えながら、驚いたり感心したりする一方で、2体に分かれたスライムを観察していると、どちらも動きがとてもゆっくりとしている。しかも、半透明になったおかげで、2体とも核が見えている。
ここぞとばかりに、残った体力と腕の力を総動員して、2体のスライムの核を突いていく。
今度は大した抵抗も無く短剣が突き刺さり、2体とも簡単に核に届いた。
崩れていくスライム達を見ながら、その場に座り込み、やっと終わったと安堵する。
しかし結構な時間をかけてしまったので、ゆっくりもしていられない。遅くとも17時までには家に帰って部屋にいなければ、お母様達よりも帰るのが遅れてしまう。そうなると、こんな遅い時間まで外で何をしていたのかと聴かれることになり、何かと面倒だ。
視界の右上に注意を向けると、SP量が200と表示されている。早くこれを振り分けなければ。




