↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/78

ファルーサ・カイデン3-3

 翌日の午後、槍の練習の時間を終えた俺は、家の敷地の外に出るまで、誰にも見られないことに集中していた。昨日の二の舞は御免である。

 しかし、これが中々に困難なのである。我が家は子爵家の割に使用人が多い(らしい。本から得た知識)。その誰にも短剣を持っているところを見られずに、敷地外に出ていくというのは困難極まる。

 このカイデン領はダフト王国に属し、ダフト国王より領地を拝している。そのダフト王国の隣国である、獣人族が治めるキーフィア国、エルフ族が治めるシルクトレーテ国、そしてドワーフ族が治めるキスナ国へ通じる街道の交わる地こそ、このカイデン領なのである。

 また我が領は、ダフト王国の王都ダフトへと街道の通じる唯一の地であることから、国王からの信頼度もうかがえるというものである。

 なお、〇〇族が治めると言っても、その種族しか住んでいない国という訳ではなく、その種族の割合が一番高いため、その種族から統治者が出ているとのことである。

 因みに、俺のような人間族と、獣人族、エルフ族、ドワーフ族をまとめて「人族」と呼んでいる。

 そして、多くの人族や、物、金、情報が集まることから、この領都カイデンは子爵領の領都としては住んでいる人の数のみならず、行き交う人の数が異常に多く、街としてはかなり大きな部類となるらしい。我が国の中では、王都に次いで2番目に大きな街だそうだ。

 また、領内の他の街や村も人が多く、領としても発展しているとのことで、収入も多いが、それらを管理する費用もかなりのものとなり大変であると、本に書いてあった。

 お父様はそのようなカイデン領の領主なので、お父様に仕える事務方も、領軍の軍人も、そして我が家の使用人も多いのである。

 なので、その使用人たちに見られることなく広い家の中を移動するのは大変なのだが、やらなければ、いつまだ経っても強くなれない。

 短剣を装備して(これさえ無ければ、いくら見られても「お外に遊びに行ってきま~す!」で済むのだが、無ければスライムといえど倒せそうな気がしない)、部屋の外の廊下に誰もいないことを確認してから、そっと部屋を出る。

 周りの気配を確認しながら廊下を進み、階段を降り、また廊下を進み、家の裏口に達する。

 裏口の扉をそっと開けて、周囲を見て誰もいないことを確認するとともに、話し声や物音がしないか耳を澄ませる。よし!何も聞こえてこない。

 そのまま周囲に気を配りつつ、我が家の敷地を囲む柵で、城壁の穴側で表門からも裏門からも見えない場所を目指す。

 我が家の敷地の柵は、細く頑丈な金属で様々な模様を形作り、それらを組み合わせて柵にしているので、人は通れないくらいの細い隙間はいくらでもある。

 その細い隙間から、短剣を外の小道に、音がしないようにそっと降ろす。

 そして俺自身は表門に行き、門番に「遊びに行ってきまーす」と告げて外に出た。「子どもはお外でしっかり遊ぶように」というお母様達の教育方針のおかげで、以前からしょっちゅう外に遊びに行っていたから、領軍の兵士でもある門番達も「気を付けて行ってらっしゃいませ」と笑顔で見送ってくれる。

 そして先程の場所まで行って短剣を回収する。よし、完璧。今日は無事に外に出ることができた。

 次は城壁、つまりこの領都の端っこまで行かなければならない。幸いなことに、我が家は領都の真ん中ではなく、割と目指している城壁の穴に寄った側にある。それでも俺の足で歩けば20分はかかるだろう。なので、小走りで城壁を目指す。

 しばらく走ったり、疲れたら歩いたりを繰り返しながら、やっと城壁についた。

 13時から14時まで槍術の練習をして、先生が帰ったのを確認し、一度俺の部屋に戻り短剣を取って屋敷を出たのが14時30分頃。その後ここまで15分はかかっていると思うので、今はおそらく14時45分位だと思う。

 すぐに500M(ミリ)M(メタ)程度の厚さがある城壁に空いた穴を、四つん這いになって通り抜ける。それにしても、この「コンクリート」という材料で作られた固い城壁に、どうしたらこんなに大きな穴が開くのだろうか。この領都の城壁は、10M(メタ)おきに建てられた「テッキンコンクリート」と言うもの凄く頑丈な柱の間を、コンクリートで作られた壁が塞いでいるとのことである。普通に考えたら、こんな穴なんか開きそうにないんだが・・・。

 まあ、今はそれは考えないでおこう。どうせ分かんないし。

 また、10分程度走ったり歩いたりして、やっと森の外周にたどり着いた。

 ここからはスライムを探しながら、森の奥に入らないように、そして他の魔獣等と遭遇しないように周囲を警戒しながら、ゆっくりと進む。

 進む。

 進む。

 何も見つからない。

 進む。

 進む。

 やはり、何も見つからない。

 少しだけ森の奥に入ってみようか。いや、そんなことをして、もし強い魔獣等と出会って怪我でもしたらどうするんだ。そんなのは絶対に嫌だ。なので、今まで通り、森の外周付近を進む。

 そうやって30分は歩いただろうか。小さな池が見えてきた。小川を流れる水が、ちょっとした窪地に溜まって、また川に流れ出ているようだ。

 池の周りは長い草が茂っていて、見るからに何か居そうな怪しげな雰囲気だ。

 とか思っていると、草が「ガサッ」と鳴った。

 思わずビクリとして、反射的に音のした方を見る。

 いた!丸っこいスライムだ!白いやつ。探していたやつだ。

 スライムも俺に気付いているのは何となくわかった。

 落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせながら、短剣を鞘から抜いて構える。心臓が耳のすぐ横にあるのではないかと思うくらいに、ドクドクという音がうるさい。

 落ち着け!あれは前に一度倒している。攻撃も殆どしてこないし、核を突けば一発で倒せる。そう考え、俺はスライムに向かって走り出した。

 後から思い出してみれば、走って行って短剣で突くのではなく、最初から短剣をスライムに向けて突き出した形で、闇雲に走っていたと思う。

 そして、走っている途中で気が付いた。このスライムには核が無い。いや、見えない。

 もうスライムは目と鼻の先だったので、取り敢えず短剣で突いた。(短剣を前に構えたまま突っ込んだ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。