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ファルーサ・カイデン3-2

 そして今日、怪我から一か月が過ぎ、ついに屋敷からの外出も許可された。

 外に遊びに行くふりをして、魔獣等を倒して倒して倒しまくり、SPを一杯稼いで、強くなるぞ!

 そう思って、朝食後、いつもより集中力を欠いた勉強の時間を終え昼食。そして昼一で武術の時間。これが終われば夕食までは自由時間だ。

 因みに、外出が解禁になってもしばらく、武術の時間はこれまで通り、我が家の敷地にて行うこととなっていた。何故だろう。まあ、行き帰りに時間を取られなくて良かったと思おう。

 昼の2時過ぎ。武術の時間も終わり、いよいよ行動開始である。

 準備はしっかり出来ていると思う。

 まず、残っていたSP100の割り振りである。

 魔獣等の図鑑やカイデン領に関する解説書等から、領内での、特に今住んでいる領都カイデン近郊の魔獣等の分布を調べた。

 その結果、まず、領都内や家の敷地、下手をすれば家の中にいるネズミやリス、小鳥や小さな虫と言った魔獣等について。

 これらは、動きが素早すぎて大人でも滅多に倒せないらしい。倒せたとしても可食部分が無かったり、あっても少ないせいで売れないらしい。何より、人族を見ても襲い掛かってこないほど弱いことから、苦労して倒しても得られるSPが極めて少なく、ものによっては、何十匹、何百匹と倒してやっとSPを1獲得できる、といった状況で、倒す対象から外した。

 次に領都外にどのような魔獣等がいるのか。

 人族を襲ってこないような弱い魔獣等を除くと、街道沿いではスライムやウサギ(角の無いやつ。それでも子どもとかには襲い掛かってくるらしい)、鶏など。街や村から離れた場所では猫や犬、蜂や大カマキリ、烏や鳶など少し大きめの鳥類、蛇や大トカゲなど爬虫類、森の近くではゴブリンが出ることもあるという。

 街道沿いの草原では、草の種類や長さ、茂り具合にもよるが、これらの他に山羊や羊、豚や猪、馬等が出ることもある。

 街道から外れ森に入った場合はどうか。森の外周部から少し中に入った辺りまでは、領軍が訓練のためによく討伐を行っていることから、入り口付近ではスライムとウサギ、角ウサギと言ったところらしいが、少し中に入ると街道に出るのと同じ魔獣に加えて、狼や猿、鹿といった攻撃力の高い魔獣に加え、森の上空からは大型の鳥類が餌になるものを伺っているらしい。

 もっと奥に入るとオークやオーガといった、訓練された兵士が組織的に対処しなければならない魔物や、そうした強い魔獣等に殺されたハンターなどがゴーストやスケルトンとなって彷徨うこともあるという。

 このような情報を考慮し、俺は領都から出てすぐにある森の、ほんの入り口付近でスライムを狩ろうと思っている。

 実は、領都はその防衛のために、周囲を高い城壁で囲われており、出入りできる場所は門を設置した限られた場所のみとなっている。

 ただし、街が大きくなるにつれて、それを囲む城壁も高く長く頑丈になるが、それに対する管理は緩くなることもある。

 これまでの俺は、午後からやることが全く無くて暇だったため、よく街中を一人でぶらぶらしていたが、時には歳が近いと思われる子ども達から声をかけてもらって一緒に遊ぶこともあった。

 そんな時に教えてもらったのだ。人知れず、目立たず、頑丈なはずの城壁にできた穴を。誰が(何が)どうやって開けたのか?それとも事前に出来たのか?子どもであれば余裕をもって通れるような大きさの穴があり、壁の厚さ分の結構な長さの穴の向こうには別の景色が見えていた。恐る恐る通ってみると、城壁の外に出ていた。その時は、それだけですごい冒険をしたような気になり、ひどく興奮し、その穴のことは誰にも言わず、秘密としていた。

 今回は、その穴を通ってこっそりと街の外に出て、スライムを倒してSPを稼ぐ。

 図鑑によると、スライムは繁殖力が高いため数は多いが、物理攻撃力は弱く、魔法攻撃はなく、動きも早くはないため初心者でも容易に倒せるが、倒すと崩れてしまい、取れる素材もないためハンターからは不人気だとのことである。

 これなら、常に周囲に気を配り、スライムが単体の時のみを狙う、複数いた場合や他の魔獣等がいる場合はとにかく逃げる、を徹底しておけば、物理防御を上げてさえおけば怪我をせずに済むはずである。

 他にも「魔法防御」や「毒耐性」、「麻痺耐性」その他色々、「即死耐性」なんてものまである。

 森の入り口付近では魔法を使ってくる魔物等はいないし、毒を使ってくる奴らもいない。ましてや、ざっと図鑑を一通り見たところ、「即死」なんていう物騒なスキルを持った魔物等なんかいなかったので、恐らく「即死耐性」を必要とすることはこの先も考えられないので、これは考えなくても良いだろう。

 そう考え、SP残量100を全て使い、「物理防御3」を獲得した。効果は「衝撃及び斬撃によるダメージを20軽減する」である。

 根拠はある。

 前回の怪我の際には、生命力総量50のうち、30が角ウサギ2匹により削られていた。そこから、受けたダメージの内訳を次のように推測した。

1 10ダメ×1回攻撃×2匹+10ダメ(出血によるダメージ)=30ダメ

2 15ダメ×1回攻撃×2匹=30ダメ

 どうだ!10歳だというのにこれほどの計算ができる俺は!引算と割算は苦手だが、足算と掛算は割と得意なのだ!そこに、この大人のような思考力が加わるのだ。もう勉強の時間を恐れることはない。だから、勉強の時間を少し減らしても・・・・・

 違う。そうじゃない。考えるべきはそこじゃない。

 先程の1の場合でも、2の場合でも、受けるダメージを20軽減してくれるのであれば、例え再び角ウサギに襲われたとしても怪我をしない。しかもスライムやウサギは魔法攻撃をしてこない。つまり痛い思いをしなくて済むのである。

 あとは、誕生日にもらった短剣を装備すれば準備は完璧。いざ、行かん!

 と、気合を入れて出かけようと玄関を出たところで、後ろから声をかけられた。

「ファルお坊ちゃま。短剣など持って何をなさっているのですか?それは玩具ではなく本物の武器ですので、遊ぶには少し危のうございますよ」

 この声は我が家の執事だ。

 不味い!10歳の子どもである俺が、本物の武器を持って外に出かけようとしているのが知れたら、どこに何をしに行くのか根掘り葉掘り聴かれるだろう。

 この執事に嘘は通じない。これまでも、優しい言葉での質問に答えているうちに、俺の秘密は全て暴かれてきた。

 そして俺が話した事柄は、全てお母様達に伝わり、大抵の場合は俺が怒られることになるのである。

 背中を冷や汗が流れる。どう言い訳をしよう。

 そうだ。

「あのね、今日の武術の時間は剣の練習だったんだけど、僕は上手くできなかったんだ。

 先生が言っていた刃筋を立てるってことがよくわかんなかったんで、本物の剣ならわかるかなぁって思って、短剣で練習しようと思ったんだ」

 咄嗟に考えた言い訳にしては、今日の午前中に実際あったことを織り交ぜた、良い言い訳だったと思う。

「ほう。ファル様は研究熱心ですな。感心、感心。

 ならば、私も今日は時間があるので、練習を少し延長しましょうか」

 そこに今日の剣の先生がいなければ。

 領軍で剣術の指導をしている今日の先生は執事と顔見知りで、練習の後執事と色々と話をしていたらしい。

 しかし、先程の俺の苦し紛れの言い訳を本気にした先生は、追加の講習をしてくれた。

 1時間以上も刃筋を立てることを意識した素振りをさせられたのである。

 この日は、剣の練習で疲れ果て、屋敷から1歩も出ることなく終わったのであった。

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