マール3-1
お前ら程度の力では、ウチ等には傷一つ付けられへんわ!
そんなことを考えながら、普通では有り得へんような魔獣共の集団を片っ端から屠っとったけど、ふと、一人の男が魔獣共の集団の中に居るんに気付いた。
中肉中背の人間族。
お世辞にも清潔とは言えんような白髪交じりの髪を肩まで伸ばし、同様の髭も長く伸びとる。手入れをしているようには見えん。
灰色の長いロープを着とるけど、裾の方は黒ずんどる。もしかして、元々は灰色でなかったんちゃうか?
まあ、それでも何となく解った!
このおっさんが魔獣共を「使役」して、村を6つも全滅させたんやろう。
何や。こんなんやったら、ギルドの調査依頼、受けとくんやったわ。
「数で押せ!」
おっさんの指示で、攻撃の密度が上がった。
やけど、「物理防御」も「魔法防御」もレベル5のウチ等には効かん。
80を超えて生命力量を削るような攻撃やないと、ウチ等にダメージは入らん。
しかも、もしそれを超えてきたとしても、「生命力量6」で生命力総量が5,000を超えとるウチ等には、大したダメージにはならん。
そもそも、アルトはそんな攻撃も全部槍で捌きながら攻撃もしとるし、ウチかて「風魔法6」の風の盾で魔獣共の攻撃を通さんようにしつつ、「土魔法6」で固く硬く小さく圧縮して、「土魔法5」で片っ端から魔獣共に打ち出しとる。
まあ、こいつらでは耐えられんやろなと思いつつ、結構な数の魔獣共を倒したんちゃうやろかと思っとったら、
「行け!」
と言うおっさんの指示を受けて、これまで数匹の大ネズミと狼達が絶え間なくウチに体当たりや噛付き、引掻き等の攻撃をしてきとったところに、大猪や岩トカゲも加わった。
こいつらの攻撃が僅かに80を超えるダメージが有るんか、これまで傷一つ付いてなかったのに、掠り傷程度やけど攻撃が通るようになった。
大したダメージやないけど地味に痛いんと、腹が立つんはウチのローブやその下に着とる服に傷が付いとる。
怪我は治癒魔法で治るけど、服とかの破れは治らんのやで。どないしてくれるんや、コラァ!
と腹を立てとったら、急に背中に激しい痛みを感じた。
振り返ると、いつの間にか爪長灰色熊がウチの後ろに回り込んどった。コイツにやられたんか。
爪長灰色熊の前肢には、鋭利なナイフのような、その名の通り長い爪が5本ずつ生えとる。この爪に殴られた、と言うか斬り付けられたんやろう。
今は「物理防御」のレベルが5やから痛いですんどるけど、ファルに会う前のレベル2で今の攻撃を食ろとったら、身体が真っ二つになっとるか、そこまでいかんでも一発で殺られとったやろな。
それにしても今のは結構痛かったけん、一旦「土魔法」での攻撃は中止、「治癒魔法5」の治癒魔法・中で一気に身体中の傷を治す。
アルトはどないなっとんやろうと見てみると、周囲を魔獣共に取り囲まれて攻撃魔法を撃たれまくっとる。
まあ、あの程度の攻撃魔法では殆どアルトにダメージを与えることは出来んやろうけど、念のためにアルトにも治癒魔法・中をかけとく。
その時、アルトと目が合うた。
このまま、あのおっさんと魔獣共を倒してしまうんが理想なんやけど、数が多すぎるんと、少し強い魔獣とかが混じっとる。確実に全部潰すんは面倒いかもしれん。
それよりも、ハンターとしてのウチ等の使命は、6つもの村を滅ぼしたと思われるこのおっさん等の情報をギルドに持ち帰ることや。
ウチ等はおっさんに背を向けて走り出す。
正面の大猪が邪魔やけど、こいつは結構防御力も高そうやから、周囲の土の中から金属を取り出して、小さく、硬く圧縮して、大猪に向けて勢いよく飛ばす。ここで回転させながら飛ばすんが、真っ直ぐ飛ばすコツや。
見事に大猪の頭から尻まで貫通し、身体に風穴を開けて一発で倒せた。
走り出した勢いのまま、倒れた大猪を跳び越え、一目散におっさん等から全速力で逃げる。
アルトも同じ様にウチの横を走っとんで、魔獣共の包囲を抜け出したんやろう。まあ、アルトならその程度は簡単やろうとは思とったけど。
しばらく走ってちょっと後ろを見てみたら、魔獣共が追いかけて来よる。「敏捷5」のおかげで差を詰められるようなことはないけど、それにしてもしつこい。
ウチはそんなに長いこと全力で走り続けることは出来ん。段々走るスピードが落ちてきよんが自分でもわかる。
すると、隣を走っとるアルトがスピードを少し落としたんで、どしたんやろかと思たら、ウチの後ろに回り込んでウチを抱き上げた。
お姫様抱っこや。
アルトは笑とったらメッチャ可愛いんやけど、ファルの前以外では滅多に笑わん。で、真面目な顔しとるときは、凛々しい系の美人さんや。
ウチもハンター養成学校ではモテとったけど、アルトは男だけやのうて、下級生の女の子からもキャーキャー言われとった。
あの子等がアルトにお姫様抱っこされたりした日にゃあ、嬉しすぎて昇天してまうかもしれんな。ウチは惚れんけど。




