アルト2-1
私はこれまで、異性に恋愛感情を持ったことが無い。と思う。それがどんな感情か解らないから。
しかし最近、一人の男の子が気になって仕方がない。
一緒にいると、何となくその子のことを目で追ってしまう。
一緒にいると楽しい。
一緒にいない時は、その子のことを考えていることが結構多い。
自分でも何となく解ってる。その子のことを好きになりかけてる、と。
問題なのは、その子が12歳の、3歳も年下の男の子であることだ。
でも仕方がないとも思う。
小さい頃から同年代の男の子で、私より強い子はいなかったが、私は、私が危機に陥った時に、私を救ってくれる男性が登場するという状況に憧れていた。
実際には、そんなことはあり得ないとは思っていた。物語の中だけの話だと。
それなのに、それが現実となった。
私が迷宮で狼達に襲われ、もう駄目だと思った時に、その狼達を倒して私を助けてくれたファル君。
その時の偶然の状況により、私にはファル君が、背中から羽の生えた天使に見えた。
あの時のドキドキは、狼達に「殺られた」と思ったからだけではない。
それ位、ファル君との出会いは衝撃的だった。
それだけじゃない。
ファル君は見た目も話し方も男の子だけど、話す内容が時々男の人になる。
頭の良い子どもと言うレベルじゃない。
聞き分けの良い子どもと言うよりは、他の者から言われたことを情報として処理し、そこから自分の取るべき行動の最適解を、自ら考え決定しているように見える。
自分が12歳の時にどのような子どもだったかは憶えていないが、今のファル君と比べると普通の子どもだったと思う。
これがファル君でなければ、「変に大人びた子ども」と思っても、興味を惹かれることはなかっただろう。
しかしファル君は、私が、いや私とマールが、領都カイデン近郊の迷宮まで神様に導かれることにより、出会うことを運命付けられていた少年だ。
これらのことが重なって、私はファル君が気になって仕方がない。
それと、ファル君の素性もはっきりしない。
一度マールが、領都のどの辺りに住んでいるのか訊いたことがあるが、ファル君は答えを濁してはっきりしなかった。
ファル君がその辺を知られたくないのだろうと思い、それ以降は触れないようにしているが、いつも狩りが終わった後、自分で作ったトイレの中で、結構良い服に着替えて帰っているので、良い所の子だとは思ってる。
そんな中、最近マールが持っている懐中時計の調子が悪かったのだが、一昨日、ついに動かなくなったので、昨日狩りに出かける前に、領都の時計屋に寄って修理を依頼してきた。
私は時計を持っていないので、今、時間が分かりづらいという話をファル君にすると、修理から戻って来るまでの短期間であればと言うことで、ファル君が自分の持っている懐中時計を貸してくれた。
狩りを終えて宿に帰り、マールと二人で改めてその時計を見てみると、ちょっとしたお金持ち程度の家ではとても買えないような立派な時計だということが分かった。
まあ、私達もファル君には、自分達のことを全て話しているわけではないので、深く追求しようとは思わない。
それでも、いざという時にファル君を守るのが私たちの使命だと思っているので、ファル君のことをもっと知りたいと、私は思っている。
守ると言っても、戦いの中でファル君を前面に出さずに、私達だけで魔物等を倒してしまうというのではないんだろう。
神様から「獲得SP100倍」という特別なスキルを授かっているファル君は、12歳にして、1級のハンターでも足元にも及ばないような遥かな高みにいる。
じゃあ、ファル君を何から守るんだと訊かれれば、はっきりした答えは出せないんだけど、それでもファル君に何かが起きた時に、又はファル君が判断を誤って危機に陥った時にファル君を守れるように、心身を鍛え続けようと私は思ってる。
なので、ファル君とパーティーを組んでの迷宮での狩りは、私とマールにとっては大変助かっている。
ファル君が魔物等を倒すと、「獲得SP100倍」のおかげで100倍に増幅されたSPが、パーティー3人に均等に配分される。私とマールも出来るだけ魔物等を倒すようにしているが、それでもSPが以前の20~25倍は入ってくる。1回の迷宮での狩りで、毎回1,500以上のSPが稼げるのだ。
おかげで、各スキルのレベルをどんどん上げて、新しいスキルも取れている。私もマールも、もう2級を飛び越して、1級ハンター位の強さにはなっているんじゃないかと思っている。まあ、現実には依頼達成数等のギルドへの貢献度が全然足りないので、2級に昇格するのも遥か先だと思うが。




