ファルーサ・カイデン13-4
そのまた翌日-
「ファル君、ちょっと訊いて良い?」
会うなり、アルトさんにすごく困った顔で訊かれたので、
「なんでも訊いてください」
と答えたら、マールさんが俺を、物凄くジトっとした目で見ながら質問してきた。
「昨日ギルドでアイテムとかを換金した後宿に帰ってな、お風呂入ってご飯食べて、今日の準備もして、さあ寝よかっていうところで、ふと視界の右上を見たらな、獲得SP残量がとんでもない数字になっとったんや。
こっちの思とる数字の何倍、いや、何十倍にもなっとったんやけど・・。
ファル・・・。何か知っとるか?」
「いや、それは僕に訊かれて・・も・・・」
解らないと答えようとしたところで、思い当たった。ひょっとして、程度のことだったが、確認のため自分の視界の右上を見てみる。
あ、いつもより大分少ないような気が、いや、確実に少ない。
「何か、思い当たったようやな」
真剣な眼差しのマールさんと目が合って、俺は思わず目を伏せる。
俺の目の動きで、俺が今、視界右上の獲得SP残量を確認して言葉に詰まったのはバレバレだ。
マールさんの言うとおり、思い当たってしまった。
パーティーを組むことになった時、魔獣等を誰が倒しても獲得SPは等分されると聞いた時、俺は、等分されたSPが「獲得SP100倍」によって増えると思っていた。
だが現実には、アルトさんやマールさんに入るSPが何十倍にもなって、俺に入るSPが大幅に減っているということは、俺が止めを刺した魔獣等から得られるSPは、通常得られるSPの100倍を3等分した、約33倍のSP量になっている筈。
勿論、マールさん達が倒して、通常の獲得SP量だった魔獣等もいるが、昨日は俺が暴走したこともあって俺が倒した割合がかなり高いので、30倍近いSPが得られている筈。
その分俺は、いつもの3割弱のSPしか得られていないことになるが、これまでが異常で、今後は皆で強くなっていけると思えば惜しくない。
しかし、これを説明するには、まず俺の「獲得SP100倍」のスキルのことを説明しなければならないだろう。
既に30倍近いSPを得てしまっているマールさん達には誤魔化しがきかないので、正直に話す。
生まれる前に神様に会ったこと。
「獲得SP100倍」のスキルをもらったこと。
10歳の時にそれを思い出したこと。
その後、ハンターになるために一人で狩りを続け、この迷宮を見つけて通っていたこと。
狩りを通して得られたスキルと、そのレベルに関すること。
「そうか・・・。そうやったんか・・・」
マールさんもアルトさんも、時々質問しながら俺の話を真剣な顔で聴いていたが、俺が話し終わるとマールさんが、目を潤ませて俺の顔を自分の胸に抱き寄せた。
「えっ? わっ! なっ・・・・」
「ファルに会うために、ウチは・・・、ウチ等はここに来たんやな」
訳が分からず硬直する俺を、マールさんはしばらく抱きしめた後で、ゆっくりと離してくれた。
しかし直ぐに、アルトさんに同じ様に抱きしめられる。
「えっ? ちょっ! ・・・・・」
「私達はね、二人とも神託に導かれてダフトのハンター養成学校にやって来たの。
で、卒業と同時に、また二人に神託が降ったの。このカイデンの近くの森で迷宮を探せって。
神様は、ファル君を私達に会わせたかったんだね。
ファル君、ありがとう」
「神託を受けて行動する、って言うんは、誰でもは経験できん、えらい名誉で重要な事なんや。
なんやけど、何を期待されとるんか、何が目的なんかがさっぱりわからんで、実はもの凄く不安やったんや。
しかし、これで解ったわ。
神様は、ウチ等をファルに会わせるんが目的やったんやな」
「ファル君が、生まれた後には神託を受けてないのなら、きっとファル君のスキルの恩恵で一緒に強くなって、その力でファル君を守れと言うことなんだと思う」
「ファルの、その、人をはるかに凌駕した力をもってしても、立ち向かうんが困難なことが起こるんかもしれんからなぁ。
その時に、ウチ等にファルの手助けをせぇ、言うことなんやろ」
えっ? そうなんですか?
全く話が理解できないんですけど、そういう事になるんですか?
そんな事、神様は言ってなかったと思うんだけど、何か大変なことが起きるんですか?
とか、考えようとしたけど、アルトさんの大きな胸に抱かれたまま離してくれない。
嬉しいんだけど恥ずかしくて、考え事に集中できない。多分、俺の顔は真っ赤になってるだろう。
「ところでファル、その『獲得SP100倍』のこと、知っとる奴は誰かおるんか?」
マールさんが質問すると、アルトさんが離してくれた。ちょっと惜しい。




