マール2-2
ああ、そういえば、アルトもこの少年に、危ないところを助けてもろたって言うてたな。
まあ、良えわ。ウチ等が名前、歳、何者かを言うたんや。この少年も同じように自己紹介するやろ。
「僕はファル。12歳です。近くの町に住んでます」
やっぱり未成年やったか。
「12歳言うたらまだハンターちゃうやろ。こんな危ない所で何しとん?子どもが遊びに来る所ちゃうで」
3歳しか変わらんけど。
「僕は成人したらハンターになりたいんですけど、家族に言ったら反対されそうで。
で、15歳になるまでに反対させないだけの力を付けておこうと思って、いつも昼からこの辺りの森で魔獣等を倒していたんです。
そしたら、洞窟みたいなのがあったんで、入って中を見てみようかな、と。
それ以降、ちょくちょくここに来てます」
うっ・・・。何も言えんようになってしもた。
ウチもマールも強うなりたい一心で、大人の目を盗んだり、大人に付いて行ったりして、魔獣共倒してSP稼いどったけんなぁ。
「僕も訊いていいですか?
えっと、マールさん・・・と・・アルトさん・・・でしたっけ?
お二人とも15歳と言ってましたが、15歳っていえば成人したばかり、つまりハンターになったばっかりと言うことですよね。
それで3級のハンターになれるもんなんですか?」
ウチが答えようとすると、いつもはあまり喋らんし、喋っても長くは喋らんアルトが会話に入ってきた。
「私達はね、13歳と14歳の2年間、王都のハンター養成学校に入っていたの。
普通はハンターの登録をすると6級から始まるんだけど、ハンター養成学校を卒業できれば4級で登録できるんだよ。
その中でも、卒業試験で特に優秀と認められたら3級で登録させてくれる特例があるの。
それで、卒業試験1位だったマールと、2位だった私の二人が、学校でも久しぶりの特例の対象に選ばれて、卒業と同時に3級でハンター登録をしたんだよ。
ところでファル君は強いの?
大きな鳥と狼達を一度に倒しちゃったし、マールの怪我も魔法で直してくれたよね」
「鳥と狼を倒せたのはたまたまです。
僕はそんなに強い方じゃないと思います。
他人と比べることが出来ないんで分からないですけど、3男だから家には残れないと思うんでハンターになろうと思ってますが、痛い思いをするのが嫌なので、防御や回復ばかり上げていますから」
「それでも、助けてもらったのは事実。
本当にありがとう」
アルトがにっこり笑ってお礼を言うたら、ファル君の顔が真っ赤になった。
落ちたな。
アルト、恐るべし。
「で、ここ、迷宮やと思うんやけど、ファル君はよう来るん?」
「まあ、時々」
こんなとこ、時々でも来れるんやったら結構な強さやと思うんやけど、ひょろっとしてて、そうは見えへんな。
防御と回復を上げてる言うてたから、倒せる奴だけ倒して、後は怪我しにくい、してもすぐ治せるんを良えことに、逃げに徹しとんやろか?
「ファル君は、ここで他の人見たことある?」
「無いです。アルトさんとマールさんが初めてです」
あ、アルトが先になった。しかも、訊いとんウチやのに、アルトの方見て答えとるし。
「カイデンの町のギルドでも迷宮は無い言うとったけん、やっぱりここは未発見の迷宮なんやな。
未発見の迷宮見つけたらギルドに報告せないかんのやけど、どうしょうかなぁ」
チラッとファル君を見ると、顔を伏せていた。
「しばらくギルドには黙っといて、ウチ等の狩場にしようかなぁ」
ファル君が期待のこもった目で顔を上げる。わっかりやすっ!
「まあ、ちょっと考えてみよか。
ところでファル君は、今からどうするん?」
ファル君が、何か懐をごそごそしたと思たら、服の下から懐中時計を取り出した。
それ、結構良え時計ちゃうか?
もしかしてファル君、良えトコの坊っちゃんか?
「まだ15時前ですけど・・・・・、今日はそろそろ帰ります」
「アルト、ウチ等もファル君と一緒に帰る?
さっきの狼達で魔力量も結構消耗してしもたし。
ようけ戦うたから、ちょっと疲れたし」
「うん。帰ろう」
ウチとの会話は、短文に戻るんやな。
「そういうわけで、ファル君、一緒に帰るで。
魔物等が出てもウチ等が守ったるから、前に出んようにな。後ろにおるんやで」
防御重視で攻撃力無いんやったら、後ろで自分の身を守ってくれとんが、邪魔んならんで一番良えわ。




