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アルト1-5

 近い方の狼が、まさに地を蹴り、口を開けて跳び付こうとしたところに、右から左へ槍を薙ぐ。開いた口の辺りから入った槍が、切断までは出来ていないが、恐らく頭部の半分位までは叩き斬っているだろう。

 その勢いのまま、同様に跳びかかって来た2匹目の狼に、右足で「体術3」の回し蹴りを叩き込む。

 頭蓋骨か、顎の骨か、頸の骨かは分からないが、骨が砕ける感触は伝わって来たので、こいつももう動けないだろう。

 すると、残った4匹が一斉に駆け出した。

 3匹がマールを、1匹が私を狙っているようだ。

 マールが徐にしゃがんで地面に手をついたと思ったら、「土魔法4」により数本の土の槍が地面から伸び、2匹の狼を捉える。

 私に向かって来ている狼より、マールに向かっているもう1匹の狼の方が近いので、そちらを槍で突き、貫く。

 最後の1匹が地を蹴って、反対方向から私に向かって跳んで来たので、槍を引き戻す勢いのまま、石突でその狼の眉間を突く。

「ギャン」と鳴いて、私から2M(メタ)位離れたところに落ちた狼に駆け寄り、その胴体を蹴り飛ばす。5M(メタ)程離れた場所に再度落ちた狼は、もう動くことはなかった。

 何とか全て倒した。

 少しだけ離れた場所にいるマールと目が合い、ふっと微笑む。

 二人して緊張が緩んだ時、マールに貫かれた狼の内の1匹が、土の槍から自重で外れ落ち、すぐにマールに跳びかかった。

 2匹とも胴の中央を貫いていると思っていたが、1匹は腹部の端を僅かに貫けていただけだったんだろう。

 普通なら、それでも大怪我なんだが、内臓にダメージが無かったので、力を振り絞ったんだろう。

 まだしゃがんで私の方を向いたままのマールは、私の表情の変化から何かを察したのか、慌てて狼の方を振り返ったが、その時にはもう狼はマールに跳びかかっていた。

 マールは両腕を顔の前で交差させて防御するしかなかった。

 狼は、前に出ていたマールの右腕に噛み付き、勢いのままマールを押し倒した。

 背中合わせの体制のままでいれば、マールに近付けさせず弾き飛ばせていたのに。僅か2M(メタ)の距離が仇となった。

 慌ててマールに駆け寄ろうとした私の後ろで、ガサガサと草がなった。

 振り向く。

 また狼だ!!

 しかも、3匹!

 丈の長い草の中に、隠れていたのか?

 3匹同時に来られるとマズい!

 急に時間の流れが緩やかになった。

 いや、多分、普通に時間は流れていたんだと思う。

 しかし、後からこの時のことを思い返すと、全てがゆっくりと動いていたようなイメージしか無い。

 3匹の狼達が私に向かって駆け出そうと、ほぼ同時にタメを作ったとき、斜め上から大きな何かが落ちてきて、狼達を吹き飛ばした。

 僅かに遅れて、人も斜め上から、私の目の前に落ちてきた。

 いや、降りて来た。着地のために踏ん張ることもなく、トンッと軽く着地した。

 人間の・・・少年だった。

 私の方に向いた少年は、濃いめのダーク・ブラウンの髪に、白い肌、青い瞳で、背中に白い羽が生えていた。

「大丈夫ですか?」

 少し微笑んだ、奇麗な顔で訊ねて来た少年に対し、私の口から出たのは、

「天使・・様・・・・・ですか?」

 ・・・そう思ったのだ。

 マールには悪いが、この時は、狼に襲われているマールのことは頭から完全に消えていた。このことはマールには一生言えないけど・・。

 でもこの時の、私の危機に表れた天使のような少年との、キラキラとした出会いの思い出は、一生忘れない。

「えっ?」

「アルト、大丈夫?」

 少年に訊き返されたのと、マールから大声で問われたのは同時だった。

 時間の流れが元に戻った。

 少年をもう一度見ると、背中の羽は白ではなく茶色で、だんだん小さくなって消えていく。

 と思ったら、少年の後ろには瀕死に見える巨大な鳥が横たわっており(恐らく少年の前に空から落ちてきて狼を吹き飛ばしたのが、この巨鳥なんだろう)、少年の背中越しに斜め上に広がっていたその巨鳥の両翼が、力なく地に付くところだった。

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