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アルト1-4

 石柱の近くは安全地帯になっているのか、魔物等が寄って来ない。

 マールも、疲れているとはいえ、最初は地面に胡坐をかいて座り周囲を警戒していたが、5分も接敵が無いと、横になって寝転がってしまった。

「あ゛~~っ! 疲れたわ~~!

 ちょっと休ませて~~~」

 良いんだけど、暑いからってローブの前をはだけた状態でスカートで胡坐かいてたから、パンツ見えてたぞ。

 私しか見てないからいいけど、いつも「エルフのイメージが」って自分で言ってるんだから、気を付けないと。

 ここにリヴィがいたら、鼻血流して喜んでたぞ。あの娘の目つき、時々ヤバいし。

 両手両足を広げて仰向けに寝転んでいるマールを見てたら、ドンッ~~~~~ と音がした。

 何か大きな音が遠くで響いたような感じだ。

 急いで周囲を確認する。

 マールも跳び起きて周囲を見ている。

 しかし、音がしたと思われる方向には何も見えない。

 いや、遠くの方で何か動いてる。物凄いスピードで遠ざかって行ってる。

 あれは人? 子ども? 少年?

 遠いのと、草深いところを移動しているらしいことから、よく見えない。

 と言うか、すぐに見えなくなった。

「今の見た?」

「ん? 何かおった?」

 マールの「弓術3」の視力に期待したんだけど・・・見てなかったか~。

「男の子みたいなのが走ってた」

「人がおったん?」

「『みたい』なの。 早かったし遠かったからよくわからない。もう見えなくなったし」

 マールは少しの間周りをキョロキョロして

「何かの見間違いちゃう?」

と言って、再びゴロンと横になった。

 これは大分疲れて、眠くなってるな。口数が少ない。と思っていたら、

「30分寝かせて」

と言って、すぐに寝息が聞こえてきた。

 周囲には動くものも見えないし、この石柱の周りには魔物等の気配もないので、まあ、良いか。

 私も、周囲の警戒はしているが、腰を下ろして体を休めることにした。


 (私の体感で)30分後、マールを起こして、別の石柱に向かって移動を開始する。

 魔物も襲って来ず、風に揺れて草が擦れる音しかしない、のどかな休憩時間だった。

 短時間の睡眠だったが、体力のないエルフ族であるマールには良い休憩だったようで、周囲を警戒する瞳に力が戻ってる。

 しばらく歩いたところで、膝と腰の間位の高さの草むらの一部が不自然に揺れた。

 まだ30M(メタ)は離れているが、何かいる。

 いや、それだけじゃない。複数の敵の気配に囲まれている。風下から、音を立てないように近付かれたか。

 周りを確認すると、右手側に短い草しか生えていない部分が広がっているのが見えた。

「マール! ついて来て!」

 そこに向かって走る。意図を察したのか、マールが続いて走り出す。

 マールは、思ったことの一割程度しか言葉にしない私の考えを、うまく察してくれるのでありがたい。

 向かっている先の正面近くの草が大きく揺れたかと思うと、何かが飛び出してきたので槍で突く。

 槍の先を見ると、私に噛み付こうとしたであろう開いた口から、尾の付け根辺りまでを真っ直ぐ串刺しにされた狼だった。

 右手一本で槍を横に振り、遠心力で串刺し狼を吹き飛ばす。私の「筋力」なら、それ位は軽い。

 草が短い辺りまで来ると、マールも駆け込んできたので、さらにその中心部分辺りまで二人で走る。

 狼達も深い草から駆け出して来た。

 すぐにゆっくりした歩みになり、10M(メタ)程の距離を取って、私達を取り囲んだ。

 数えてみると7匹いる。

 1匹1匹はそんなに脅威ではないが、一斉に噛み付きにかかって来られて、引き摺り倒されたりしたら危ない。

 狼達の攻撃を避けながら、1匹ずつ倒していかなければ。

 私とマールは背中合わせになって、全周囲からの攻撃に備える。

 まず、マールが仕掛けた。ウォーター・アローが1匹の狼を貫く。細く長く圧縮した水を、回転させながら高速で飛ばす魔法だ。

 首のあたりを貫かれた狼は、地面に倒れて、声もなくもがいている。

 それを見た他の狼達は、すぐに5M(メタ)程私達から後退し、相変わらず私達を取り囲んで唸り声を上げ、私達を観察している。

 マールが続いてウォーター・アローを放つが、これは避けられた。

 今度は、私の前方にいた狼が動いたと思ったら、その横にいた狼も動き出す。

 2匹が僅かな時間差で私に向かって駆け出し、ほぼ同時に攻撃を仕掛けるつもりらしい。

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