アルト1-3
この層は、とにかく広い。
広く見せているだけで、本当は壁とかが存在するのかもしれないが、空(に見えるもの。太陽は無い)を見る限り、どこまでも続いているようだ。
どこに向いて進めばいいのかも分からず、上の層から降りてきた階段を出たところで、マールと二人でしばらく呆然としていた。
ただ、この階段の出口のすぐ近くに、太さ1M、高さ5M程の石柱が立っていて、遠くの方にも似たようなものが数本見えるので、その内の一番近い物を目指すことにする。
ただ、この層は、上の層とは打って変わって、とにかく魔物等が多い。
進み始めてすぐにゴブリンが3体。
それを倒してしばらく進むと、またゴブリン。今度は5体。
強くはない。決して強くはないのだが、ゴブリン共は太めの木の棒を振り回して攻撃してくるので、油断はできない。
マールが「水魔法4」のウォーター・アローや「風魔法4」のエア・バッシュで後方から先制攻撃をし、その間に私が距離を詰め、槍で頭を斬り落とし、胸を貫いて倒していく。
それでもこのペースで魔物等が出現するとなると、いくら「魔力量3」で潤沢な魔力総量を持つマールでも、魔力量の節約も考えなければならないだろう。
マールは魔力ポーションも持ってはいるが、結構な値がするので、あまり使いたくない。
なにせ、狩りに必要な経費は、二人共同で積み立てている口座から出金しているので、他人ごとではない。
因みに、ハンターは、ハンターギルドで口座を作るのが殆どだ。ハンター証のカードに預入額等の口座情報も記録され、この世界のどのハンターギルドでも入出金出来る。
ハンター向けの低利貸付もギルドが行っていて、貸付利子や、預金出金時の手数料などで事務経費を賄っているらしい。
なお、口座は一人に付き一口座が原則だが、パーティー結成をギルドに報告し、それをハンター証に記録しておけば、パーティーの代表一人がパーティー用の口座を開設できる。
私は前衛なので、怪我は多い。そのため、怪我を治すための普通のポーションは多めに必須で、マールの高額な魔力ポーションと合わせて、ポーション代の出費は結構な額になる。
そんな事情から、魔力ポーション代を抑えるため、いや、違う。間違えた。マールの魔力量の消費を抑えるため、二人で相談して、ピンチでなければマールは弓で戦うことにした。もちろん、矢は後で極力回収する。
急にみみっちい話になったが、3級ハンターとは言え、まだまだ駆け出し。貯えが無いことはないが、締めるところは締める。
少し進むと、またゴブリンが3体。
マールが弓矢で攻撃するが、魔法と違い、「弓術」はレベル3なので攻撃力も精度も低く、一撃必殺とはいかない。
それでも足止めにはなるので、まずは矢の当たっていないゴブリンから、「筋力4」の力で振るわれる「槍術4」(1「槍の扱いの基礎が理解できる」、2「槍での戦い方の基礎が理解できる」、3「槍での戦い方に長ける」、4「他人に教えられるほど槍での戦い方に長ける」)の槍で首を落とす。
「敏捷3」の動きで素早く槍を振り回し、近くにいたもう1体の、矢の当たっていないゴブリンの首も落とした。
私の槍は、刺突だけではなく、斬ることも重視しているので、両刃の穂は普通の槍よりも幅が広くなっている。そして、斬るときに刃筋を立てやすいように、柄は円状ではなく、刃の向きに合わせた扁平になっている。
切っ先は、幅広の穂でも深く突き刺しやすいように鋭く尖っている。
その切っ先で、マールの矢に片足を貫かれ、地面に倒れているゴブリンの胸を突き、止めを刺す。
槍を抜いて、勢いよく振り回すことにより血糊を飛ばして、他に敵がいないか警戒しようとした時、急に体が重くなった。
「持久力」がレベル3の私が、この程度で疲れることはない筈。
何かの状態異常・・・・・・?
これは、麻痺状態になっている。
身体が動かし難い。
何が起きている?
周囲を見回すときに、マールも周りを見回しているのが見えた。同じ状態なのか?
いた! ビッグモスだ。
風に乗せて振り撒かれた麻痺の鱗粉を、気付かずに吸い込んでしまったようだ。
まずは、これ以上鱗粉を吸わないために奴の風上に移動を開始する。
マールもビッグモスの風上に向かって一緒に走りながら、これ以上鱗粉が飛んでこないように、「風魔法」で風向きを変えているはず。
ビッグモスは、鱗粉をとばすために羽ばたいている間は、移動ができないようだ。
風上に回ったマールがウォーター・アローで奴の大きな羽を貫き、地面に落としたところで、私が槍で突いて止めを刺した。
その後、動きの鈍い身体を無理やり引き摺って、とにかく近くの石柱を目指しながら、二人共に状態異常回復ポーション(これも高価)を飲む。
途中で、またゴブリンが2体襲ってきたが、なんとか倒して、石柱の傍まで来たときには、痺れも大分収まっていた。
「ちょっと休憩しよう」
私でも少し疲れていたので、マールは疲労困憊なのだろう。




