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アルト1-1

 私は強い。

 獣人族の中でも、犬人族のリカオン種だからというのもある。

 猫人族の獅子種や虎種、猿人族のゴリラ種のように、瞬発的な攻撃力で見れば、いくらでも強い獣人族はいる。

 しかし、彼等が最大の攻撃力を発揮できるのは、1~2分の短い時間だ。その短時間を、攻撃を回避するなどして凌げば、その後は驚く程動きが鈍くなる。

 それに対して、リカオン種は持久力が高い。全力でも5分、9割の力なら20分、8割の力なら1時間は動き続けることが出来る。

 攻撃力も弱くはない。と言うか、高い方で、集団での役割分担した攻撃も得意だ。

 そんなリカオン種の中でも、私は昔から強かった。

 10歳を超えた頃から、武術の稽古中や、武術大会の未成年の部で負けた記憶がない。

 それでも、世の中には私より強い者がいくらでもいるのは、自然と理解できていた。

 なので、私は自分を鍛えることに集中した。

 周囲の大人たちに頼んで狩りにも連れて行ってもらい、魔獣共を倒してS(スキル)P(ポイント)を稼いで、さらに強くなることを目指した。

 こんな私だが、割と見てくれは良い方で、しかも良家のお嬢様だ。(自分で言うのもどうかとは思うが)

 なので、これも10歳を超えた頃から、縁談もいろいろと来るようになった。

 でも、私の興味は強くなることにだけ向いていたので、全て断った。

 それでもしつこく言い寄ってくる相手は、直接会った時に全てぶちのめした。

 別に、私より強くなければ認めない、なんてことを言うつもりはない。同年代にそんな奴は望めない。

 それでも、同じ年頃(私±5歳位)で、私を守れるような男であることが最低条件だ。

 言ってる事が矛盾しているのは理解している。

 でも、私も女の子だ。私のピンチに素敵な男の子が現れ、私を助けてくれると言う、物語でよくあるような夢のようなお話には憧れている。

 半面、そんな夢のような現実は無い、と信じたまま大きくなった3年前。12歳の秋に神託が降りた。

「お前は、ダフト王国の王都に行き、そこでハンター養成学校に入るように」

 ハンター・・・・・

 そうだ。ハンターになって魔獣共を倒す。

 SPを稼いで、どんどん強くなる。

 結婚なんてしなくても、一人で生きていける。


 次の年の春が来る少し前。

 家族に言っても止められるだけだと考えた私は、誰にも何も伝えず家出した。

 王都ダフトのハンター養成学校の入学試験は簡単だった。

 そこでマールに会った。

 腰まで真っ直ぐ伸びた綺麗な銀髪。先が尖った長い耳。透き通るような白い肌。切れ長の目。瞳は碧眼。美人としか言いようのない顔立ち。痩身ながら、凹凸はしっかりした身体。絵にかいたようなエルフ。

 マールとは以前に顔を合わせたことはある。

 が、その時は、シルクトレーテ公国のすましたエルフと話が合うとも思えず、会話を交わすことはなかった。(と思う)

 しかし、同じ学校に通うことになったので話をしてみると、マールは魔法による強さを求めているのがわかった。

 物理攻撃による強さを求める私と、マールの相性は最高だった。

 すぐに打ち解け、それでも互いをライバル視して高め合い、なおパーティーを組んで一緒に強くなって行ける、信頼できるパートナーとなった。

 二人共、同じ神託によってここにいるんだというのが解った時は、神様にこの出会いを感謝した。

 私達二人のパーティは、王都周辺の森の中で、学校が狩りの訓練を許可した範囲では無敵だった。

 2年間共に学び、競い、高め合い、助け合った。

 卒業試験では僅かにマールに及ばなかったが、二人してワンツーフィニッシュを決め、二人とも特例で3級のハンターとなれた。

 そしてハンターとして活動を始めて1か月が経った今年の5の月、また私達二人に同時に信託が降りた。

「カイデン領の領都に行き、狩りをしつつ、町の北東にある迷宮を探すように」


 私達二人がカイデン領の領都に来て2か月になる。

 ここは王都よりは遥かに人口が少ないが、人口密度は似たようなものだ。

 人、物、技術、情報が集まり、それらを常に王都に送り出し続けている。

 活気があると言うか、忙しないと言うか。

 人手不足が常態化しているので、健康上の理由も無く仕事をしない者は放っておいてもらえない。四方八方から声が掛かり、仕事に駆り出される。

 なので、この町に貧困は(ほぼ)無い。

 また、空き家が2軒も並べば、新たな事業用の再開発がすぐに始まる。事業を行う者は皆、常に新たな事業用の土地を探している。

 なので、スラムが出来る土地がない。

 稼いだ金は、生活必需品を揃えるためや虚栄心を満たすための商店、舌を満足させるためや胃袋を満たすための飲食店、博打をするためや性欲を満たすための歓楽街等で消費され、ますますお金が町を回る。

 そんな賑やかな領都カイデンにはハンターも多く、最初にこの町のハンターギルドに挨拶に行った頃は、私達二人にちょっかいを掛けようとする男のハンターも多かったが、その都度ギルドの外に連れ出し、全員、二度と私達に声を掛けようとは思わない程度にぶちのめした。

 そんなこんなしつつ、私達は町の東門や北門から出て、すぐ近くの森で、魔物等(ら)を狩りながら、迷宮を探し続けた。

 一応、ギルドで迷宮について訊いてみたが、この町の近辺に迷宮は無いとのことだった。

 探す方向はある程度限定されているものの、それでも森は広い。

 魔物等を狩りながら、2か月間歩き続けた。

 そして昨日の夕方、洞窟の入り口らしきものを見つけ、今日、中に入ってみることにしている。


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