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ファルーサ・カイデン11-1

「ファル、お誕生日おめでとう!」

「ありがとう」

 12歳の誕生日。

 例年通り、家族が皆(みんな)で祝ってくれてる。

 キラー・バッファローと言う、滅多に手に入らない高級肉のステーキや、作るのに手間が掛かり過ぎて超高級品であるアイスクリームをデザートに用意してくれるなど、家族の愛情をこれでもかと感じる。

 しかし、それらよりも嬉しかったのは、俺からリクエストしたものではあるが、誕生日プレゼントとして皆がお金を出し合って買ってくれた金色の懐中時計だ。

 何が嬉しいって、森や迷宮にいても時間が分かることだ。

 今までは感覚で時間を予測して、遅くならないように家に帰っていたので、あまり長くは迷宮等にいられなかったが、時計があれば正確な現在時刻が分かるので、ギリギリまで魔獣等(ら)を狩ることが出来る。

 ただ、そんなことは家族に言ってない。

 誕生日プレゼントに欲しい物はあるかと訊かれたので、

「僕は、お父様やお母さま達が、仕事中に時計を取り出して時間を確認しているのが格好良いと思うから、僕も懐中時計が欲しいです」

と言うと、皆で買ってくれた。

 キスナ連邦国がその技術力、科学力、それらを駆使した開発力で様々な工業製品を生産し輸出しているといっても、まだまだ高価な物が多い。

 金(色?)のチェーンの先に、直径50M(ミリ)M(メタ)の金(色?)の薄い円形のトップがついたペンダントのように見えるが、その片方の円に付いてるふたを開けると文字盤が表れて、時間が分かるようになっている。

 緻密さと美しさが共存する、最先端技術のすばらしい懐中時計だ。

 俺が手に持った時計を眺めてニマニマしていると、お父様が訊いてきた。

「ところでファルは12歳になったけど、成人したらどんな仕事がしたいとか、そろそろ考えているかい?」

 今、ハンターになりたいなんて言うと、家族全員から反対されるのかな?

「僕は強くなって、魔獣や魔物をいっぱい倒したいな」

と、ぼやかして言ってみたところ、

マリアールお母さま

「領軍に入りたいの?

 それより工業ギルドのギルド長が、ファルちゃんのことを首を長くして待ってるわよ」

ボニータお母さま

「商業ギルドにいらっしゃいな。

 一緒に各国を回って、珍しい物や面白い物を見つけに行きましょう」

セリスお母さま

「それなら農業ギルドよ。

 より美味しく、より安く。この国の食卓を豊かにして、皆を笑顔にするのよ。

 そのためには、各国をいっぱい食べ歩きしなきゃ」

ティヨーム兄様(上のお兄様)

「前から言っているように、ファルがお父様の跡を継いで領主になるべきだと思うんだ。

 ファルは皆から愛されるから、領民皆が喜ぶ筈だよ」

モーイット兄様(下のお兄様)

「そうそう。困ったことがあっても、必ずティヨーム兄様が助けてくれるから。

 私かい?

 前にも言ったけど、私は商売の勉強がしたいんだよ」

ジュンゼット姉様(下のお姉様)

「ファルは私が養ってあげるから、どこにも行かなくていいわよ。

 今、株への投資をやっていて、ファルを食べさせていく位の貯えはあるわよ」

 ・・・・・

 誰にもハンターになりたいとか、言わない方が良さそうだ。


 1か月ほど前の迷宮を攻略した次の日、俺は森の少し奥の方に行ってみようと森に向かっていたが、まだ第3層のマッピングが完了していなかったのを思い出し、いつものように迷宮に向かっていた。

 マッピングはすぐに終わった。

 あのボス部屋への扉は、迷宮の一番奥だったからだ。

 それでも成果はあった。

 宝箱から出てきた、あの片手剣だ。

 第1層や第2層の魔獣等を倒すのにも役立ったが、驚いたのは第3層でアンデッド相手に使った時だった。

 骸骨もゾンビもミイラも、物理攻撃はあまり効果が無かった幽霊でさえも、驚くほどスパスパ斬れたのである。殆ど抵抗なんか感じないくらいの切れ味だった。

 しかも剣は全く欠けもしないどころか、ゾンビを斬っても汚れさえ付かないのだ。ただし、ゾンビは倒れた時の衝撃で腐った肉とかが飛び散るので、結局「浄化魔法」で骸骨にしてから倒すことにした。

 その上、試しに剣に魔力を込めて、明るく光らせてからアンデッドを斬ると、1回斬り付けただけで、剣が当たりさえすれば倒せてしまうのだった

 もっと早くこの剣が欲しかった。と心から思った。

 まあ、それもあって、マッピングがすぐに終わってしまった俺は、再びボス部屋への扉の前にいた。

 別にここに向かって来たわけじゃない、

 それ位に、第3層の未到達の通路が残り少なかったということだった。

 扉を前にして考える。

 何度でも入れるんなら、もう一度行ってみようか。この片手剣があれば、前日より楽に攻略出来そうだし。

 そんなことを考え、軽い気持ちで扉を押し開けた。

 前日に少し醜態をさらしたのを、新しい剣を使って、やり過ぎることもなく、楽に攻略できるかと簡単に考えていた。

 いや、前日に、特に不測の事態が起きて、危機に陥ったわけじゃない。

 むしろ、考えていたよりも簡単すぎて驚く結果になっただけだ。

 扉が閉まって、壁沿いに並んだ蝋燭が灯されると、骸骨剣士、骸骨弓士、骸骨槍士、骸骨魔導士の4体しかいなかったのだ。

 前の日にうじゃうじゃいた幽霊と魔獣の骸骨は1体も見当たらなかった。

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