ファルーサ・カイデン10-4
八つ当たりなのは解っている。
やり過ぎなのも解っている。
骸骨弓士1体のためにフレアなんて、魔力の壮大な無駄遣いなのも十分理解している。
骨だけの骸骨は声が出せないので、馬鹿にされたり、笑われたりすることもないだろう。それだって知っている。
しかし、許さん!
さっきの恥ずかしい姿を無かったことにするには、見たもの全てを消し去ることしか思い浮かばなかった。
他に敵はいないか、今のを見ていた奴はいないか、周囲を確認する。
もう敵はいないようだ。
次に自分の身体を確認する。
怪我は無いが、フレアの余波か、服が所々焦げたり、穴が開いたりして、ボロボロになっている。
アイテムボックスに着替え一式を入れておいて良かった。
脱いだ服を持って帰って誰かに見つかり、どこで何をしてこうなったのか訊かれても困るので、ここに捨てて帰ろう。迷宮がキレイに吸収して処分してくれるだろう。
そんなことを考えていると、急に明るくなるのを感じた。
何だろうと思ってそちらを見ると、この部屋の、入って来た扉とは反対側の壁際の床の一部が光っていた。
近くまで歩いて行って確認すると、床に丸や三角、他にも文字のようなものが複雑に描かれた図形があり、その図形自体が眩し過ぎない程度に光っていた。
これは何か見たことがあるなと思ったので、スキルの「記憶」を使ってみると、すぐに思い出せた。
図鑑に載っていた「魔法陣」だ。
「記憶」は、その「魔法陣」の乗っているページを、鮮明な画像として思い出せるので、書かれていた説明書きも読める。
「記憶」って便利だな。
説明書きによると、「魔法陣」は最後のボスを倒す等、迷宮の攻略条件を満たした時に、攻略者が元来た道を戻ることなく、一気に迷宮の入口まで送ることが出来るように現れる、魔法的な装置らしい。
ってことは、俺はこの迷宮の攻略を完了したのか。
魔法陣の横には、宝箱が置かれている。と言うか、魔法陣と一緒に現れたのだろう。いくら部屋の中が薄暗いとはいえ、壁際には一定間隔毎に蝋燭が灯されているので、最初に入って来た時に見落としていたというのは考え難い。
一応「探索」で罠が無いことを確かめて、宝箱を開けてみる。
中にはシンプルな片手剣が入っていた。
早速手に取って、鞘から抜いてみる。
大人用の片手剣みたいで俺には長いが、「筋力」を5まで上げている俺にとっては、殆ど重さを感じさせない剣だった。
試しに振ってみる。特に問題はなさそうだ。
刃にそっと触れてみる。しっかりと研がれているようで、よく切れそうだ。
しばらく色々と振ったり触ったりしているうちに、違和感を感じた。
僅かではあるが、この剣に何か吸われているような、この剣が俺に反応しているような、うまく言葉に出来ない感覚だ。
よく見ると、剣が薄っすらと光っているような気がした。
俺は一旦剣を鞘にしまい、明るい壁際から離れて、部屋の中でも薄暗い中央に走って行った。
そこで、確認のために再度剣を抜いてみる。
やはり剣身が、薄ぼんやりとではあるが、光っている。
何となく、発動している魔法に更に魔力を込める要領で、剣に僅かな魔力を送ってみると、すんなりと俺の魔力が剣に流れて行った。
今度は剣の光が、恐らく昼間の外でも確実に光っているのが解る程度には、明るく輝きだした。
それでも眩しいということはなく、見ていると何となく心の落ち着くような、神々しい光とでも言うのだろうか。
しばらくその光を眺めていたいところではあったが、この部屋での戦いは、当初多くの敵を相手にし、最後は恥ずかしさで我を忘れていたので、時間感覚が鈍っている。
つまり、今何時頃かが分からなくなっているので、早く家に帰った方が良いような気がする。
魔力を流すのをやめると、剣は元のぼんやりとした発行に戻ったので、鞘に納め、アイテムボックスに入れる。
そして、魔法陣の使い方が分からないので、床にしゃがんで、恐る恐る床の魔法陣に手で触れてみる。
一瞬で周りの景色が変わった。
ここは迷宮の入口の外側、約10Mといったところか。
まだ陽が傾いているという時間でもないらしく、薄暗いところから出て来たので、周囲の眩しさが目に染みる。
まだ時間的には余裕がありそうだけど、今日はもう帰って、迷宮攻略の達成感に浸ろう。
そう思って一度、重力魔法で飛び上がったが、すぐに下りて迷宮の中に引き返す。
着替えなきゃ。
10M程中に入ったところで着替えをし、脱いだ服は丸めて、更に内部に投げ入れた。
さあ、今度こそ帰ろう。




