ファルーサ・カイデン10-3
その間に(比較的)足の速い魔獣(の骸骨)が走って近寄って来た。
しかし、俺は慌てない。
実はこの第3層に来始めた頃に、自分のお小遣いをはたいて、街で、作業用の頑丈な手袋と靴を買ったのである。
普段はアイテムボックスに入れておいて、迷宮に来た時に着用し、骸骨や、たまにミイラを、汚れを気にせず殴ったり蹴ったりしている。(それでもやはり、ゾンビだけは直接触りたくないので、まず「浄化魔法」をかけている)
そして、迷宮から出て来た時に「浄化魔法」で綺麗にし、再びアイテムボックスに収納していつもの靴に履き替えるのだ。
そんな必殺兵器である作業用手袋と作業用靴で、魔獣(の骸骨)を殴ったり蹴ったりで砕いて数を減らす。
また、別の幽霊が近付き過ぎないうちに「フレイム」を放ち(「フレイム」の効果内に俺まで入らないうちに。俺は熱くないけど、俺の服が焦げたり燃えたりするのは困る)、その合間にまた魔獣(の骸骨)を殴る蹴る。
あっと言う間に、幽霊と動いている魔獣(の骸骨)はいなくなった。
残りは4体。今まで現れなかった、特殊な骸骨。
どこに居るのか探そうとした時、すぐ後ろに敵がいることを「探索」が捉えた。
振り向かずに、横に跳ぶ。
今まで俺が居たところを見ると、骸骨剣士が剣をそこに振り下ろしていた。
俺が跳んで行っている方向にも敵がいる。
そちらに目を向けると、俺を目掛けて槍が迫って来ていた。
俺は身体を捻って、槍の穂と柄の接合部を上に蹴り上げ、その勢いのまま更に身体を捻り、槍を持っている骸骨槍士も蹴り飛ばす。
俺は跳んで来た方向を向いて着地し、骸骨槍士がバラバラになって吹っ飛んで行ってるのが見えた。
「よし、1体倒した」
とか考えていたら、骸骨魔法士が放ったのか、俺を狙ってウォーター・ボールが飛んで来たのでそれを横に避ける。
その避けた方向のすぐ先に、骸骨弓士が放ったであろう矢が飛んで来る。
俺は慌てて踏みとどまり、矢を避けることが出来たが、完全に動きが止まってしまっていた。
その俺の向いた方向の正面に、早くも骸骨剣士が待ち構えていて、俺を左肩から袈裟切りにしようと、剣を振り下ろし始めていた。
「うわっ! やられる!!」
俺は身体が硬直し、咄嗟に背中を少し丸めるとともに、目をつぶり、両手で顔を庇ったいた。
トン
「うぎゃあぁ! やられたぁ!」
俺は絶叫しながら、絶望感とともに反射的に目を開いた。
目の前には、右から迫り来るウォーター・ボールと、左から迫り来る矢が見え、再び反射的に目をつぶった。
パシャ
トン
ぐわぁ、もう駄目だ。
俺はもうここで死ぬんだ。
足から力が抜け、俺はその場に倒れ込んだ。
お父様、お母様達、お兄様達、お姉様達、先立つ不孝をお許しください。
そういえば、「獲得SP100倍」なんて言う、ズルとしか思えない能力をくれた神様、せっかくもらった能力を活用できなくてごめんなさい。
痛い~っ!
もう駄目だ。
痛い?
どこが?
あれ? 俺はどこを攻撃されたんだ?
え?・・・・・
痛く・・・ない?
トン
トン
うん?
誰だ・・・背中をたたくのは?
俺はうつ伏せの状態から、仰向けに寝返りを打って、目を開けた。
骸骨剣士が剣を逆手に持って、俺の腹に剣を刺すところが見えた途端、奴の動きがやけにゆっくりとしたものになった。
いや、俺も、身体を動かそうとしても殆ど動かせないので、まるで時間の進み方が遅くなったみたいに感じた。
俺は、剣がゆっくりと迫って来るのを見ているしかなかった。
剣が俺の腹に当たった。が、刺さることはなく、痛みは全く感じなかった。
・・・・・・・・・
ああ、こいつの攻撃は俺に効かないんだ。
そう思い至ると同時に、すっかりやられた気になって倒れていた自分が恥ずかしくなって、慌てて立ち上がった。
そこに矢が飛んで来て、
トン
俺に当たった途端に勢いをなくした矢は、その場にカランと落ちた。
水の塊が飛んで来て、
パシャ
俺の服を濡らした。
・・・・・
うん。身体は何ともない。
・・・・・・・
顔が熱くなる。
勝手にやられたと思って、ギャアギャア喚いて、ゴロゴロ転がってた俺の恥ずかしい姿を、お前ら骸骨共は、
「みぃたぁなあああああぁ」
近くにいた骸骨剣士を、とにかく殴りまくる。頭と胴体部分はほぼ粉々になった。
少し離れた場所にいる骸骨弓士に、フレアを放つ。
骸骨弓士が跡形もなく吹き飛び、結構離れた場所にいた骸骨魔導士も余波で飛ばされ、地面に叩き付けられていた。
しかし、そんなもんじゃあ許さん!
しばらくゴロゴロ転がって止まった骸骨魔導士に、拳撃や蹴撃を次々と飛ばして叩き込む。
骸骨魔導士も粉々になった。




