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ファルーサ・カイデン2

 次に目を覚ました時、部屋の魔力灯が点いていたので、もう夜になっていることが解った。

 医者がやっとつかまって往診に来てくれたとのことで、起こされた。

 痛みはまだ続いていたが大分マシになっており、寒気も気分の悪さもなくなっていた。

 俺を診た医者は大層驚いていた。

 俺の傷を押さえていた布を通して、その上に巻かれていた包帯まで染み出た血の量と、お父様から聴いたであろう怪我をした時間から、俺の命もそう長くないと思ったのだろう。

 実際に傷を見てみると、まだまだ傷は塞がってはいないが、出血は思ったよりも遥かに少なく、顔色もそんなに悪くなかったことから、もうほかの医者が診た後か、とか、治癒魔法使いに治療してもらったのか、とか聴いていた。

 どちらも探したが所在がつかめず、今やっと先生に診てもらってるんだとお父様が説明すると、医者は首を捻りながら俺の傷にポーションをかけた後、傷は表面上塞がっただけで、完全に治癒したわけではないのでしばらくは絶対安静、と言い残して帰って行った。

 そりゃあ、10歳の子どもが、自分でスキルを使って治したなんて思わないよな。困惑させて申し訳ない。

 その後安心した家族が、静かに寝ているようにと言って、部屋の灯りを消してみんな出ていった。

 静かな暗い部屋で、言われたとおり寝ようと思い目を閉じていたが、一向に眠くならない。何時間か寝ていたからだろう。

 仕方がないので色々考えているうちに、今の俺は本当にファルなのだろうかと不安になり、これまでの(10年しかない)人生を振り返ってみた。

 苦労することもなく、物心ついてからの記憶や知識は思い出せた。

 俺の名前はファルーサ・カイデン。カイデン子爵家の三男で10歳だ。

 お父様はベルーサ・カイデン子爵。ここ、カイデン領の領主である。

 カイデン家は爵位が高くない子爵ではあるが、かつてご先祖様が武功をたて、論功行賞の場において当時の国王より陞爵を打診されたが、陛下のために国を守ることは臣として当然のことであるとかなんとか男前なことを言って固辞したことから、それに感動した王が、爵位はそのままに、領地を王都の隣に転封させたとの話を何度か聞かされていた。

 そして、俺のお母様達、つまりお父様の妻は3人いる。

 俺の実の母であり第一夫人のマリアール、第二夫人のボニータ、第三夫人のセリスである。所謂正室一人と側室二人ということなのだが、この三人がとても仲が良い。夕食後は、いつも3人でお酒を飲みながら、楽しそうにワイワイやっている。一方で家のため、領地のための情報交換も欠かさない。

 そんなお母様達だが、自分で言うのもどうかとは思うが、俺の事を大層愛してくれている。

 俺には上から兄、義兄、義姉、義姉と4人の兄姉がいるが、下の義姉とでも7歳離れている。そのため、俺が生まれた時、久しぶりの赤ちゃんをみんなで構い倒したそうで、それが今も続いているのだろう。

 外から帰ってくると、母3人とも一番最初に俺の顔を見に来て、今日何をしていたのかなどをたずね会話をしていく。珍しい物があれば、お土産に買ってきてくれる。食事も、料理長が何を作るか迷ったときは、俺に食べたいものを聴きにくるように言ってあるようだ。

 それで兄姉の機嫌が悪くならないのかと言うと、兄姉も年の離れた(義)弟がかわいかったのか、時間のある時は遊んでくれたり、本を読んでくれたり、勉強を教えてくれたりと、誰かが俺の側にいる時間が多かった。

 家族の事を考え温かい気持ちになるとともに、昔の事を思い出せることに、やはり俺は、精神年齢が上がって大人のような考え方をするだけで、ファルーサ・カイデンなんだと安心する。

 精神年齢なんて言葉をどこで憶えたんだとか、他にも色々難しい言葉を使って思考しているとか、そういうことは、今は一旦置いておこう。

 それより考えるべきことは、これからどう生きていこう、だ。

 神様の話によると、魔獣や魔物を多く倒すと、S(スキル)P(ポイント)が多く稼げて人生有利になる。強くもなれるし、豊かにもなれる。しかも俺には、魔獣等を倒した時に得られるSP量が100倍になる能力がある。

 子爵家で領主の子どもと言っても、三男では何も継ぐものは無いだろう。

 というか、成人したら家を出て、平民として、自分の糧は自分の力で得ていかなければならなくなる。

 世の中には「ハンター」と言う、魔獣や魔物を倒して、それらから取れる肉や素材を売って生計を立てる職業がある。

 より強い魔獣等(ら)からは、より旨い肉やより上等な素材が得られるし、SPも多く獲得できてさらに強くなれるらしいじゃないか。

 「獲得SP100倍」なんて、ハンターになるには最適な能力じゃないか!

 なら、ハンターになるしかないじゃないか!!

 ・・・・・・・・・・・・・。

 でも、ハンターになって魔獣とかと戦うと、またこんな痛い思いをすることもあるんだろうなぁ・・・。

 ああ、また痛くなってきた。今はまだ耐えられるけど、刺された時のあの痛みはもう二度と御免だ!!

 そう考えると、ハンターなんて絶対なりたくないなぁ・・・。

 しかし、俺は三男だしなぁ・・・。

 痛い思いをすることなく、楽をしてお金を稼ぐ方法はないものか。

 そんなものがあれば、みんなやってるよなぁ・・・。

 痛い思いをせずに魔獣や魔物を倒せたら良いのに・・・。

 ・・・・・。

 痛い思いをせずに倒す?

 出来るんじゃないか?

 「獲得SP100倍」という、反則みたいな能力があるじゃないか。これで強くなれば問題無いんじゃないか?

 どんなスキルがあったっけ?スキル一覧を見てみよう。

 この「基本」にある「敏捷」のスキルを上げて敵の攻撃を軽やかに躱し、「攻撃」にある武器での攻撃スキルや魔法での攻撃スキルを上げて、速攻で敵を倒す。

 想像しただけでカッコいい!女の子にもモテるんじゃないだろうか。

 よし、これだ!!

・・・・・・・・。

 ダメだ。自分が軽やかに攻撃を躱すところなんか想像できない。これまでの10年間で思い出せるだけでも、自分が素早いと思えたことは無かった。極めて人並み。平々凡々。また大怪我してヒィヒィ言ってる未来しか見えない。もう、絶対に痛い思いはしたくない!

 却下だ。


 じゃあ、「攻撃」にあるスキルを上げて素早く敵を倒すと同時に、「防御」にある「物理防御」や「魔法防御」、各種「耐性」のスキルを上げて、敵の攻撃は寄せ付けない。

 ・・・・・・・・・。

 ダメだ。

 あれもこれも上げようとしても、どれも中途半端になる。俺が強くなる前に俺より強い敵と戦って、中途半端に防御が固い分、より多く、より長く、痛い思いをする未来しか見えない。そんな未来は絶対に嫌だ!

 ・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ならば、とにかく「防御」関連を集中して上げればどうだ?

 敵を倒すのに少々時間がかかっても、俺がダメージを受けていなければ、いつかは倒せるだろう。

 あまりカッコ良く無さそうだから、女の子にはモテないだろうなぁ・・・。

 微妙・・・・・。


 いや、それでも痛い思いをしないのが一番だろう!痛み無しに、強く、豊かに!

 よし、これだ!!

 15歳になって成人した後でなければ、ハンターになることは出来なかった筈だから、それまでにとにかく「防御」のスキルを上げられるだけ上げておこう。

 未来に対して明るい展望が見えてきたら、安心したのか眠くなってきた。

 よし、続きは明日考えよう。

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