ファルーサ・カイデン8-2
俺の膝位までの草が生い茂る草原。遠くには木が茂った森のようなものも見える。
青い空にいくつも雲が浮かんでいて、時々緩やかな風が吹いて、草原を揺らしている。
俺は洞窟部分を出て、外にいた。
・・・・・・・・・・
いや・・・・・
待て、待て・・・・・
絶対おかしいだろ・・・・・
森の中の小山の斜面に出来た洞穴に入って、進むときには何も感じないが、戻るときになって、奥の方から出入り口にかけて微かに上っているのを感じられていたので、下り階段の辺りは迷宮の入り口に比べて低い位置にある筈である。
そして、その階段を結構下りて、出てきたのが外ということはあり得ない。
しかも森の中にいるはずなのに、今いるのは草原だ。森っぽいものは遠くに見えているが、迷宮の周りの森程の広さは無いとわかる程度のものだ。
と言うことは、ここは迷宮の第2層?
草原のように見せているだけで、実は洞窟の中なのか?
俺は「照明魔法」を切り、ストーン・バレットを左右に撃ち出してみる。どちらも見えなくなるまで飛んだので、200M以上は飛んで行っただろう。何かに当たる音がしなかったので、500M以上飛んでるかもしれない。
次にストーン・バレットを上に向かって撃ってみた。今度も何かに当たる音はしない。
普通の建物の4階分くらいしか下りていないと思うんだが、それ以上の高さまで弾が飛んで行ってる。
そんなこと、あり得るのか?
見た目通りなら、かなり広大な空間だぞ。
こんな空間が地下にあるのなら、上の森は簡単に崩れそうな気がする。
後ろを見てみると、迷宮の入口と同じように、小高い丘の急な斜面に洞窟のような穴が開いている。俺はここから出て来たんだろう。
取り敢えず、出てきた穴とは反対方向に進んでみる。
ゆっくりと200M程進んだだろうか。「探索」に何かが引っ掛かった。敵が既に俺を見つけていて、殺す気満々なのだろう。数は5つ。
右斜め前方の同じ高さなので、敵も草原の上を移動しているのだと思う。
そちらを見てみると、300M程先に・・・・ゴブリン(小鬼)だ。図鑑で見たとおりだ。
背は俺より小さい。1M程度で、濃い緑色・・・と言うよりはかなり黒っぽい緑色の肌。
腰の周りだけ布を巻いたような服装(?)で、手にそれぞれ木でできていると思われるこん棒のような物や、木の枝を削ったと思われる鋭い槍のような物を持って、こちらに走ってきている。
近寄ってきたら、顔の特徴も見えた。額の左右に小さな角が1本ずつ。耳は長く、先は尖っている。口からは、長く茶色い牙のような歯が見えている。
ゴブリン達は、俺から50M位まで接近すると急に散開し、それぞれが10Mほどの距離で俺を囲んだ。
しばらく全員が俺を睨んでいた(ように思えた)が、1体が甲高い奇声を上げて俺に向かって走り出すと、他の4体も奇声を上げて俺に向かってきた。
怖くないかと言われればとても怖かったが、不意打ちを喰らった時のように身体が固まったりはしない。
近付いてきている時からずっと見ていたら、走る速さも他の動きも、そんなに早くは見えない。
取り敢えず牽制のつもりで、右手の人差し指を最初に動いたゴブリンに向けウォーター・カッターを発射し、そのままその場でくるりと一周回った。
そして、ウォーター・カッターが少しでも効いているようなら、近くの奴から「体術」で蹴り飛ばしていこうと周りを見たら、5体とも胸やお腹の辺りで上下に両断されて倒れるところだった。
この時咄嗟に考えたのは、「ヤバい!ゴブリンの血が飛んでくる!」だった。
そう思うや否や、俺は「重力魔法」で高く浮き上がり距離を取ると同時に、「風魔法」で俺から周囲全方向に向けて強い風を吹かせ、ゴブリンから噴き出す血がかからないようにしていた。
ゴブリンの死骸を見ていても気持ちの良いものではないので、少し離れたところに着地した。
そろそろ家に向かった方が良い時間だと思うのだが、ここが本当に迷宮かどうか確認する必要があるので、「土魔法」で高さ2M、直径500MM程の円柱を作り目印を作った。
次にここに来た時にゴブリン達の死骸が無ければ、ここは迷宮で、死骸は吸収されたのだとわかる。
そこで、ここがその現場だと分かるための目印だ。
さあ、遅くならないうちに家に帰ろう。




