テンタ・モードン1-3
30歳のある日、仕事帰りに飲み屋で飲んでた俺様を、一般の客が馬鹿にしやがった。
結構酔っていたので何を言われたかはまるで憶えていないが、無性に腹が立ったのだけは憶えている。
気が付くと、俺様は牢屋の中にいた。
まるで憶えていないのだが、俺様は一般人に風魔法を撃って怪我をさせたらしい。
「俺様の風魔法を喰らって怪我で済んでいるのなら、ちゃんと手加減してやったのだろう。感謝しろとそいつに伝えてくれ」
馬鹿にされたであろうことは何となく憶えていたので、取り調べに対しそんなことを言ったのが不味かったのだろう。
俺様はすぐに軍をクビになった。
事件として新聞で報じられ、王都中の住民から軍が批判を浴びたらしい。
だからと言って、俺様のような天才をクビにするか?
俺様程に魔法を使える奴はそんなにいないぞ。
まったく、軍の上層部も馬鹿ばっかりだ!
しばらくは家や飲み屋で飲んだくれていたが、仕事をしなければ酒代もないので、ハンターギルドでハンター登録をした。
いくら俺様でも、一人では倒せる魔物共の数も、採取できる肉や素材の数も限られると思い、他のハンターと共同で狩りに出ようと思っていた。
この頃には「火魔法4」、「土魔法4」、「空間魔法2」そして「治癒魔法3」を取得していたので、引く手数多だろうと思っていた。
「俺様がお前等に協力してやろう。感謝するんだな」
俺様と一緒に狩りに行こうという者は誰もいなかった。
俺のハンターの等級が6級なのが原因だろう。
いくらハンターギルドの規則で、登録したては6級からのスタートだと言っても、俺様の魔法のスキルを見れば、3級位の実力があるのは解るだろう。
6級では、単独で狩りの依頼を受けられない。ギルドの奴らも馬鹿ばっかりだ。
仕方がないので、暫くは我慢して街中の雑用をこなし、5級に上がった時点で町の外に狩りに行った。
5級が受けられる狩りの依頼は大した金になる物が無かったので、依頼無しで強い魔物共を狩って、その肉や素材を売れば金になると思ったからだ。
結果としては、対して金にならなかった。
魔物共を倒して肉や素材を獲っても、「空間魔法2」のアイテムボックス小では少しの量しか運べなかったからだ。
だからと言って、「筋力」や「持久力」は全く上げていないので、自分で持って運ぶという選択肢は無かった。
俺様は次第にイライラが収まらなくなり、狩りに行かなくなった。
大して力もない奴らが、パーティを組んだり、他のハンターと協力して結構稼いでいるのに、俺様の稼ぎはその日の酒代位にしかならなかったからだ。
何故誰も俺様と組みたがらない?
俺様のハンターレベルが5級だからだ。
わざわざ天才の俺様から声をかけて「組んでやる」と言っているのに、5級と言うレベルの所為で誰も話を聞かない。
行き詰った俺様は、狩りに行かなくなって毎日酒ばかり飲んでいた。
収入が無くなったので妻が仕事に行きだしたが、給金をもらっても俺様に隠して渡そうとしない。
誰が今までお前等を養ってやったんだ。こんな時こそ、お前や息子が俺様のために稼いでくる番だろう。
そう言って妻から金を取り上げて飲みに行ってたら、しばらく後、ある日家に帰ると妻もガキもいなくなっていた。
本当に皆馬鹿ばっかりだ。
この時、初めて、こんな世界は滅びてしまえ、と思った。
この頃から記憶が曖昧になるが、その後しばらくは、酒代を稼ぐため、昼間少しだけ狩りに行って、稼いだ金で安酒を飲むようになった。
何か、飲み屋で時々俺に話しかけいくる奴がいたような気がするが、よく思い出せない。
そんな、飲んでばかりだったある晩、酔って寝ている俺に天啓が降りた。
「この世界が憎いだろう。全て殺せ!全て滅ぼしてしまえ!!」
夢にしてはやけに生々しく、はっきりと俺様の頭の中に響いた。
寝ていた俺は跳ね起きたが、気のせいだと思って忘れようとした。
しかし、その後それは何回も寝ている時に聞こえてきた。
次第にこれは天啓だと理解した俺様は、この世界の奴らを皆殺しにするため、もっと強くなれるように狩りに勤しむようになり、次第に酒の量は減っていった。




