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ベルーサ・カイデン1-1

 私はベルーサ・カイデン子爵。このカイデン子爵領の領主だ。

 子爵なので、それ程領地は広くない。領都カイデンの他に町が3つと、村が6つあるだけだ。

 しかし、ダフト王国の王都ダフトに至るためには、必ず我が領を通らなければならないという地の利があるため、王都への物流拠点として発展し、領地の広さの割には驚く程に物が溢れ、それらを商うため、運ぶために人が多く集まり、結果として金も集まり大きく動くことから、子爵領としてはあり得ない程の税収がある。

 もちろん、その物流拠点としての機能を維持・発展させ続けるためには、それに掛かる費用も莫大なものとなる。

 また、物流機能を支えるため、領都以外の町は王都へ物資を運ぶための鉄道の開発や整備を行ったり、物資の集積・仕分け・搬出を行い、必要な物資を必要な時に必要な量だけ王都に届けられるよう、フル回転している。

 そして、領都や町で働く多くの者達の胃袋を満たすため、各村では農業が盛んで、生産のみならず、品種改良や、他国の珍しい野菜・果実の栽培実験も行われている。

 領内には深い森や山、川もあり、多くのハンターが魔獣を仕留め、ハンターギルドに卸しているから、各種の肉・魚類も豊富に販売されている。

 何故カイデン領は、このような恵まれた立地となっているのか?

 勿論、私が頑張ったから、である筈がない。

 何代か前のご先祖様が武功を立て、当時の王に陞爵を打診された時、格好つけてお断りしたらしい。

 何故かそれに感動したその王様が、爵位はそのままに、領地を王都の隣に転封させたことによって現在に至るとのことだ。

 そのため、我が領は自然と王都を守護する役割も担うこととなり、小領ながら多くの兵士を雇い領軍を組織することとなっている。

 まあ、5千年前より人族同士の戦争は起きていないため、魔獣や魔物に備えるためのものではあるが。

 事実、魔獣等による暴走(スタンピード)は時々起きている。

 2年前にも王都の近くの森から暴走が発生して、我が領からも領軍を急いで派遣した。

 幸いにも、暴走の発生した森が小規模であったため、そこから溢れ出た魔獣等もそこまでの大規模なものではなく、国軍と共同で短期間で鎮圧できたが、森の奥に行くほど強い魔獣等が多く、恐ろしさを改めて思い知らされた一件だった。

 そう言えば、最近、領都の見張り担当の兵から、近くの森の上を人型の魔物が飛んでいるのを見たとか、人型の魔物が他の鳥の魔物を倒していたとかいう報告が入っている。

 遠すぎて、本当に人型の魔物かどうかは判断できないらしいが、警戒しておかねばならない。


 それはさておき、そんな我が領の領主である私は、ほぼ毎日、領主館で忙しく働いている。

 商談、相談、陳情、報告と、毎日多くの者達と会い、話を聞き、対処するかどうか判断し、対処する場合は方針を立て、部下に指示を伝え、事態を回していく。

 他人から「よくそれだけ仕事が回せますね」と言われるが、こんなのは簡単だ。

 妻が優秀なのだ。

 同席する妻が即座に考えた対応案に対し、私が頷けば、それが決定となる。

 とても楽だ。

 いや、私が何も考えていない訳ではない。

 妻が考えるのが早すぎるだけだ。

 私がどうしようか考え始めたころには、妻が対応案を話し始めているので、私は取り敢えずそれを聴く。

 その後、妻の案よりも良い考えが浮かぶことが無いので、妻の案に許可を出す。

 これが、第一夫人であるマリアールと結婚してから何十年も続いているだけなのである。

 もちろん、カイデン家としての対応となるので、マリアール以外に執事は必ず同席するが、たまにマリアールが用事で席を外すことがある。

 そのような時は私が対応案を考えるのだが、心なしか執事が不安そうにしている気がする。

 不安がるな、執事よ。そのような場合、実は私が一番不安を感じているのだから。


 さて、私には子どもが5人いる。

 マリアールが産んだ長男(24)。カイデン家嫡男、次期カイデン子爵として、現在政務等の経験を積むため勉強中。

 第二夫人ボニータが産んだ次男(22)。将来、長男の補佐役となるべく、長男と共に勉強中。

 第三夫人セリスの産んだ長女(20)。4年前に嫁いで行ったが、既に嫁ぎ先の実権は掌握済みとの話が噂として聞こえてくるのが怖い。

 ボニータの産んだ次女(18)。縁談は多いのだが、どの話に対しても未だに首を縦に振らない。

 もう子どもも打ち止めかな、とも考えなくなった頃、マリアールとの間にできたのが、三男だ。

 妻達が魅力的すぎるのだ。もしかしたら、あと2~3人出来るかもしれないと思ったのは内緒だ。

 しかし、この三男ファルがとてもかわいい。

 次女から結構な年数が空いてできた子どもだからかもしれないが、とにかくかわいい。

 私の小さいかった頃に似ているから(お父さんに似なくて良かった、という声もあるらしいが)、余計にかわいいのかもしれない。

 濃いめのダーク・ブラウンの髪に、白い肌、青い瞳。

 もう10歳なので、大分背も伸びて大きくなったが、それでもかわいく感じる。

 ファルにはマリアールもボニータもセリスも大甘で、特にボニータとセリスは、時間ができるとファルと一緒に出掛けて甘やかしている。

 家の用事で、あまりファルと出かけられないマリアールからは、度々不満や愚痴を聴かされることとなる。

 すまない。

 でも、私だってファルと遊びに行きたいのを我慢してるんだ。一緒に我慢してくれ。

 マリアールにそう言ったら、ボディブローを喰らった。5分位悶絶した。

 家族のガス抜きのため、甘んじて受け入れよう。怖くて反撃できない訳ではないぞ!

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