ファルーサ・カイデン6-2
「照明魔法」スキルで照らしながら穴の中を進む。「探索」スキルには何の反応もない。
昨日岩モグラ達を倒したであろう場所には、何も無かった。死体どころか、「エア・バッシュ」で派手に飛び散った血の跡等の戦いの痕跡が一切見当たらなかった。
念のため、もう少し奥まで進んでみたが、やはり何も見つけることが出来なかった。
迷宮は、その中で死んだ生き物を養分として取り込んで、自らを拡張し成長したり、中に魔獣等を生み出したり、罠を作ったりしているのではないかと本に書いてあった。
実は、ここは迷宮なんじゃないか?
期待交じりにそんなことを考えていると、右斜め前上方から敵が迫ってきているのが分かった。
警戒しつつその方向を見ていると、10M程前方の右斜め上の側壁の一部がボロリと崩れ、中から体長100MM程の土ネズミが出てきた。しかも群れで。全部で20匹程度か。
土ネズミは、先頭の奴に続いて、側壁が崩れた同じ穴から次々と現れ、先頭の奴とほぼ同じコースを走って俺に迫ってきている。重力とか関係なく、側壁を普通に走れるんだ!
それならばと、俺は「ウォーター・カッター」を先頭の土ネズミにあてた後、そのまま多少上下左右に振りながら、土ネズミの列に沿って射出し続ける。
数えると19匹もいた土ネズミだが、全てがあっという間に切断されて動かなくなった。
獲得SPは19。1匹1SPか。俺のように「獲得SP100倍」を持っていないと、100匹倒してやっと1SPか。
昨日の岩モグラが1匹300SPだったから、この穴には強弱様々な魔獣等がいるんだな。
他に俺を攻撃してくる魔獣等がいれば、「探索」が教えてくれるだろうから、一旦落ち着いて、その場に座り込んで様子を見る。
いくら俺を攻撃しようとした魔獣とはいえ、その死体を見ているのはあまり気持ちの良いものではないが、検証したいことがある。
本によると、迷宮と言うものは、その中で死んだものを吸収し、養分とすることによって自らを拡張したり、外から生き物を自らの中に誘い込むためのアイテム(誘い込む対象が人だけではないので、人族が喜ぶ物とは限らないらしい)を作成したり、自らの中に強い魔獣等を生み出して入ってきたものを殺して新たな養分とするらしい。
要するに、今倒した土ネズミの吸収が始まったら、この穴は迷宮だということになる。
なので、気持ち悪くても死体の観察を続ける。
今日の成果が角の無いウサギと土ネズミだけになるかもしれないが、続けるったら続けるのだ。
待つこと1時間足らず。
途中、下から何か敵が来るのが分かったので警戒していると、直前まで俺がいた場所の真下から、直径500MM、長さ3M程のワームが地中から現れた。
警戒できていれば、対処も簡単。「ウォーター・カッター」で細切れにしてやれば、暫くはウネウネしていたが次第に動かなくなった。
そっちの方も併せて様子を見ていたのだが、その内土ネズミの死体から「シュー」と小さな音がし出したと思ったら、死体の周りに染みていた血が地面に吸い込まれるように消えていき、土ネズミの身体も徐々に溶かされているのだろう、段々小さくなっていった。
「だろう」と言うのは、気持ち悪くなって、最後まで見ていられなかったからだ。
でも、これで確信した。
ここは、まだ誰も知らない迷宮だ。
今日は、待ち時間が長かったのでもうそろそろ帰らないといけないが、明日から本格的に迷宮探索だ!
焦ることは無い。少しずつ進んで行こう。
これから迷宮の魔獣や魔物をいっぱい倒して、SPをたくさん手に入れて、もっともっと「防御」や「回復」を強くしていこう。
今は俺の攻撃が魔獣等によく効いているが、もっと強い敵が出てきたら、俺の攻撃も効き辛くなるだろう。
それでも、いやそんな時にこそ、俺自身が相手の攻撃によるダメージを受けていなければ、時間をかけて相手にダメージを蓄積させて、いつかは倒すことができるだろう。
そう。やはり「防御」が大事。痛い思いはしたくないのだ。
待ってろ、迷宮。明日から本格的に、ゆーっくりと攻略してやるぜ。
そう思って入ってきた方向に振り返ると、迷宮の入り口から100Mも進んでいないところにいた。
本当にこの迷宮の攻略は、ゆっくりと時間がかかりそうだ。




