ファルーサ・カイデン6-1
俺は家に帰りながら、いや、家に帰ってからもずっと考えていた。
今日行ったあの穴は、実は迷宮なのではないだろうか。
そんな筈ないのは分かっている。領都の近くに迷宮があるなんて聞いたこともない。
誰も見つけることが出来なかった迷宮を俺がたまたま見つけるなんて、そんなうまい話があるわけがない。
たまたま迷宮の第一発見者になって、苦労しながらもその迷宮を攻略して、迷宮に眠っているお宝を見つけてウハウハ・・・・なんて伝説の英雄譚になるわ!
でも俺は夢見る子どもだ。大人のような思考力を持っていても、10歳の子どもなんだ。自分が英雄になって、周りからチヤホヤされている姿を妄想するのが楽しくてしょうがない。
今日は疲れたから早く帰ってきたが、もしあれが誰も知らない迷宮なら、もう一度、早くあの穴に行って攻略を進めたい。
しかし、今日の最後の岩モグラのように、すぐ近くに魔獣や魔物がいきなり現れるのは勘弁願いたい。
「物理防御」や「魔法防御」のおかげで、岩モグラの攻撃は俺には効かなかったが、今後出てくる魔獣等の攻撃を防ぎ続けることができる保証は何もない。
いつか攻撃が通って、痛い思いをするかも・・・
下手すりゃ、死ぬこともあるかも・・・
敵がどこに居るか、分かれば良いのに。
そんなスキルは無いよなぁ。あれば良かったのに。
そんな都合の良い話は無いよなぁ。
それでも、もしあの穴が迷宮だったら・・・・・
こんなことを繰り返し考えながら、この日はいつの間にか寝ていた。
次の日の午前中、いつものお勉強の時間中に先生の話を聞き流しながら、敵の居場所が分かるようなスキルは無いか、もう一度全てのスキルを確認し直していて驚いた。
「その他」に「探索」と言うスキルが発生していた。昨日まではこんなスキルは無かった筈。まさに発生していた。
スキルの詳細を見てみると、自分に殺意を持つものや罠があることが分かるというものだ。
これぞまさに、昨日俺が欲しいと望んだものじゃないか。
俺は勉強の時間が終わった後、すぐに「探索」をレベル5まで取った。昨日の獲得SPを、すぐに使わずに取っておいて良かったぁ。
レベル1は効果なし。
レベル2は「近くに、自分に殺意を持つものがいることがわかる」
レベル3は「近くに、害意を持つ罠があることがわかる」
レベル4は「近くであれば、どこに自分に殺意を持つものがいるかわかる」
レベル5は「近くであれば、どこに害意を持つ罠があるかわかる」
午後の剣の練習が終わるや否や、森に向かって急いだ。
いつものように城壁を乗り越え、森に入るとすぐに、30M程先の木の根元辺りに居る角の無いウサギを見つけた。
しかし、俺の中での変化とか、反応は何もなかった。
「探索」スキルを使うには、何か特殊なコツのようなものが必要なのか?
そんなことを考えた時、俺とは反対方向を向いていたウサギが、ふと振り返ってこちらを見た。
それと同時に、俺はその方向に敵がいることを感じた。
その「感じ」をどう表現すればいいのか解らないが、とにかく、そのまま放置してはいけないような、緊張感を高めてその方向を警戒しなければならないような、何となくそんな気持ちが湧き上がってきたのだ。
感じた方向もウサギの居る方向だったので、ウサギが対象と考えて間違いないだろう。
その敵が、急速に俺に近づいてきてる。
ウサギがすごいスピードで俺の方に駆けてきているのが、見た目でも、感覚でも解る。
直進してきているので、とりあえず「ウォーター・ガン」で倒しておく。
しかし、・・・そうか。
魔獣なり魔物が俺に気付いて、俺を敵として認定し攻撃しようとしたときに、「探索」スキルの対象となるんだろう。
正直に言えば、魔獣等が俺に気付いているかどうかに関係無く魔獣等がどこに居るかが分かれば助かるんだが、まあ、殺意を持って俺を攻撃してくる存在がどこに居るのかが分かるだけでも、俺にとっては不意を突かれる確率を減らせるので、大変助かる。
ありがたい、ありがたい。と思いつつ森の中をある程度進み、森の上に浮かび上がる。昨日の小山?丘?はすぐに見つけられたので、そこに向かって飛んでいく。そこの斜面にある穴は、すぐに見つけることができた。




