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アウトゥイ・ウィアーズ1-2

 その後も、王都に来るたびにこの店に来て、酒を奢りながら男の話を聞いた。

 男の名はテンタ・モードン。

 モードンは、奢りで酒を飲ませると、何でもペラペラしゃべった。

 ただし、かなり虚栄心の強い人間で、話の内容を半分ほどに圧縮して聴くのが丁度良いだろうと思われた。

 彼は小さな頃から魔法の才能があったらしい。周りの者から褒められ、期待され、羨ましがられ続けて成長したらしい。

 貧しくはないが、決して裕福とは言えない家庭の子であった彼は、成人するとともに王国軍に入隊した。

 王国軍の魔法部隊の中でも抜きんでた才能を持ち、所属する小隊が魔獣等の討伐にあたっても、9割以上は彼が倒すこととなり、S(スキル)P(ポイント)をどんどん稼いで益々強くなっていったとのこと。

 自分の実力が周囲の者よりもずっと高いことは彼自身も解っており、次第に他の者を見下すようになっていったようだ。

 そのような中、彼は小隊長に昇進し部下を鍛える立場になるが、自分に出来ることを他人が出来ないのが理解できず、また、自分の隊長としての評価も上げたかったらしい。

 部下にかなり厳しい訓練を施したり、森の深いところで強い魔物達と休みなく戦わせ、強くしようとしたらしいが、天才に自分と同じことをやらされる部下はたまったものではなかっただろう。ついには軍の上層部から注意され、それでも同じことを続けていると、小隊長の地位はそのままで、部下のいない1人の遊撃隊に任じられた。つまり左遷されたらしい。

 そんなこともあって、彼にとっての部下達は、自分の足を引っ張るクズばかりだったとのことである。

 次第に毎日ヤケ酒を飲み、荒れていったこの男は、ある日、飲み屋で口論となった他の客に対し、魔法で攻撃し怪我を負わせたらしい。

「俺の人生を狂わせた屑め。いつかぶっ殺してやる」

 と、この男は言っていたが、どう考えてもこの男が悪い。

 軍の人間が一般人に対し、先に手を出して(魔法を打っ放したんだが)怪我をさせたのだ。当然、大問題となり、この男は軍をクビとなったらしい。後は他の客から聴いた通りの話であるそうだ。

 普通に聴けば呆れた話ではあるが、それで何かに、又は誰かについて文句を言う度に、必ず「後悔させてやる」とか、「ぶっ殺してやる」と言う、自分以外の全ての者を憎み、排除しようとする意志に、俺はこの男にも仕込みをしてみようと思ったのである。


 別の日、いつも通りにモードンに酒を飲ませ、愚痴を聴き、しっかり酔わせ、店を出たところで提案した。

「珍しい酒を出す店があるのですが、一緒に行ってみませんか。当然、誘った私が奢りますよ」

 2人で別の店に行き、強い酒を飲ませていると、モードンは途中でテーブルに突っ伏して寝てしまった。

 そろそろ頃合いだろうと思い、俺はモードンに「念話4」の「単体の他のものに対して、思念で言葉を伝達できる」スキルを使い、心の中で強く話しかけた。

「この世界が憎いだろう。全て殺せ!全て滅ぼしてしまえ!!」

 モードンはビクッと飛び起きて、周りをキョロキョロと見回した後、再び目がトロンとしてきたと思ったら、すぐに寝てしまった。


 その後、毎日続けて、モードンが寝入った頃に彼の家の側まで行き、酔って寝ている彼に、「念話4」で優しく語り続けた。

「この世界が憎いだろう。全て殺せ!全て滅ぼしてしまえ!!」

 1か月程続けながら、気付かれないように様子を見ていると、モードンは時々ハンターギルドで魔獣討伐の依頼をソロで受けるようになり、次第にその回数が増え、酒の量も減ったようだ。

 以前と異なり目がギラついてきた。魔獣等を倒し、SPを稼ぎ、強くなることに集中し始めたようだ。


 俺は別の仕込みをするため、しばらく王都を離れたが、しばらくしてモードンの様子を伺いに王都を訪れると、なんと体高が腰のあたりまであるような大きな犬の魔獣を連れていた。見るからに獰猛そうな犬だが、モードンに従っているようなので、「その他」の「使役」スキルで使役しているのだろう。

 相変わらず他の人族と親しくしている様子はない。と言うか、目つきが鋭くなり、常に周囲を睨んでいるようだ。

 良い方向に進んでいると思われたので、数か月おきに様子を見に来ることにした。


 何年かをかけて、モードンは使役する魔獣を増やしていき、街では面倒を見れなくなったのか、王都を出て、森の中を魔獣達と彷徨うようになっていた。

 様子を見に来て王都にいなかったときは焦ったが、王都の周囲を探っていると、5匹くらいの魔獣達と森の中にいた。他の魔獣を狩って、使役している魔獣や自分の食料としつつ、同じ場所で狩りすぎて餌となる魔獣がいなくならないように、少しずつ移動しているのだろう。

 モードンが使役している魔獣達にも気づかれないよう、細心の注意を払いながら、数か月おきの観察を続けた。


 初めてモードンと会って10年程が経った現在、俺は仕込みが成功していたことを、撒いた種が芽吹いたことを実感できた。

 使役する魔獣が50匹程度に増えたモードンが、それらと共に、とある森の中に拠点を構えていた盗賊団のアジトを襲い、十数人の盗賊達を皆殺しにしていた。

 魔獣達が殺した盗賊達を喰っている横で、モードンは高笑いしていた。盗賊とはいえ多数の人族を殺したことに、何ら罪悪感を感じていないようだ。

 今度こそ、俺の期待した方向に物事が進みそうだ。

 今後のモードンが楽しみだ。


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